【対談形式ストーリーボード】
― 目次 ―
No.1―「物語って何?」
No.2―「探究」
No.3―「旅立ち」
No.4―「手助け」
No.5―「通過儀礼」
No.6―「ライフ・シナリオ」
No.7―「聖と俗」
No.8―「3つの夢」
「物語」でビジネスも人生もうまくいく?
No.9―「エンディングイメージ」
(梅本龍夫)
「3つの夢」は、なんのためにあるのでしょうか。「3つの夢」は、結局はどうなっていくのでしょうか。
ストーリーボードNo.8のテーマは、眠っている時に見る夢と、起きている時に思い描く夢、そしてこの2つの夢をつなぐもうひとつの夢の状態=ドリーミングのお話しでした。ちょっとわかりにくく不評だったため、早めに店じまいしました (^^;)
代わってストーリーボードNo.8は、「エンディングイメージ」です。物語の結末がどうなるかの予想といった意味です。
最初に大きなヒントを出してしまうと、「3つの夢」が「ひとつの夢」にまとまったものが、エンディングイメージなんです。
物語は、「ひとつのもの」が分裂することで始まります。神話的に言えば、原初の世界を割って、英雄が誕生するイメージです。その英雄がしぶしぶ旅立つことで、物語が展開していくことは、ストーリーボードNo.3「旅立ち」で見た通りです。
分裂したものは、「元のひとつのもの」に戻りたい。これは、もう本能ですね、生命の。でもいったん分裂したものは、決して元には戻れない。それが英雄の旅の推進力になるわけです。もう前に、前に、と進むしかない。こうして物語ができあがっていきます。
さて、では前方には、未来には、何が待っているのか?物語の結末(エンディング)は、どうなるのか?
そこでpyankoさんsecoさんに質問です。今まで読んだ小説や観た映画などで、記憶に残るエンディングはどんなものですか?できるだけたくさん教えてください。
物語は、どこに向かうのか (ASHINARI)
>①
(pyanko)
そう言われてみると、好きな映画や小説があっても、『記憶に残るエンディング』って意外と少ないなぁと思いました。特に最近の映画は、途中までは、うまく盛り上げていくのに、ラストまで持ちこたえられないものが多くなったように思います。エンディングで魅せるって、難しいのかもしれませんね。
『記憶に残るエンディング』で思い出した映画は、
- 「リング」―あれは、本当に怖かった・・・
- 「ルパン三世 カリオストロの城」―最後の銭形警部の名言がすばらしい
- 「SAW」―え~という感じでビックリしました
- 「猿の惑星」―こちらもビックリ系ですね
- 「オーメン2」―最後のお葬式のシーンでのダミアンの顔が全てを語っています
などです。偏っていて申し訳ないです・・・小説は、あまり読まないもので、思い浮かびませんでした。
>②
(seco)
やっぱり名作とかヒット作というものは、エンディングも素晴らしいと思います。ざっと浮かぶのは、、、
- 「スターウォーズ」シリーズ、
- 「ゴッドファーザー」
- 「サウンドオブミュージック」
- 「ショーシャンクの空に」・・・・
- 山本周五郎の「ながい坂」
- 芹沢光治良の「結婚」
- 宮部みゆきの「ソロモンの偽証」
- 江國香織の「冷静と情熱のあいだ」
- 松本清張の「熱い絹」
- 山崎豊子の「不毛地帯」
- アガサクリスティの「アクロイド殺し」
考え出したら書ききれない・・・
最近は、絵本がすごいなと思います。短くグッと良いエッセンスが詰まって素敵なエンディングです。
- 「モチモチの木」
- 「いもうとのにゅういん」
- 「うんこ」など
やっぱり、日本の昔話も良いエンディングが多いのでは?
- 「かさじぞう」
- 「うらしまたろう」
- 「かぐや姫」など。
あとは、「キャンディ・キャンディ」
昨晩は久しぶりに「致死量未満の殺人」を一晩で読破しました。ミステリーですが、ミステリーだけでは勿体ない。作者の優しい人柄が感じられる良い小説です。
記憶に残るエンディングは、私の場合は、「どんでん返し(予想外)」「感動するフレーズがある(セリフなど)」「あたりまえの幸せや現実に気づかせてくれる」の3点だと振り返りました。
>③ 「ネバーエンディング」
(梅本龍夫)
pyankoさんsecoさん、いろいろと出していただき、ありがとうございました。secoさんが書いてくれた「あたりまえの幸せや現実に気づかせてくれる」、いいですね。
ふたりが挙げてくれた作品は知らないものが多く、観たり読んだりしたくなりました。感想を聞いて、物語はpyankoさんもsecoさんも血肉になっているんだなと感じた次第。
私の中では、secoさんが挙げた『スターウォーズ』と、『2001年宇宙の旅』が白眉です。ちなみにどちらもSFですが、壮大な神話が好きな私にとって、スケールの大きなSFは「現代の神話」です。
『スターウォーズ』は、ルーク・スカイウォーカーが育った砂漠の惑星タトウィーンの映像がすべての原点です。6部作が円環を成していて、「エピソード3」(2005年)のエンディングが、初作の「エピソード4」(1977年)とつながった瞬間の感動は忘れません。
1977年に初作が上映された大学生の時、まったく新しいSFの世界観に熱狂しました。『スターウォーズ』の象徴は、惑星タトウィーンの地平線に沈む2つの太陽(連星)。それが「エピソード3」のエンディングで再登場しました。28年の時を経て、『スターウォーズ』の円環がつながったことが、私にとっての白眉のエンディング・イメージです。
『2001年宇宙の旅』も、無限の宇宙をめぐる「永遠の円環」がテーマです。木星まで一人だけたどりついた宇宙船ディスカバリー号のボーナム船長。その孤独な後半生が、西洋の肖像画のように描写されました。老衰死したボーマンは、次の瞬間には―。ラストシーンの目を見開いた胎児の映像は、映画史に残るものです。
ただ、『2001年宇宙の旅』の白眉の映像は、ディスカバリー号が木星に到達したシーンです。木星の近くに浮かぶ小さな宇宙船を斜め上から見下ろす映像は、まさに「神の視座」を感じさせるもので、私の中では、『スターウォーズ』の2つの太陽と並ぶ名場面です。ラストシーンの胎児が見ていたのは、この場面であった。それが私にとっての『2001年宇宙の旅』のエンディング・イメージです。
そうです。もうおわかりですね(^^)
私にとって、エンディング・イメージは、物語が直線的に進んで終わる最後の映像、最後の文章という意味ではなく、物語全体がひとつの円環を成していることを実感できる瞬間を指しています。だから、エンディング・イメージは、スターティング・イメージであり、究極的には、「ネバーエンディング・イメージ」となります。
物語は、終わりを目指して始まります。波乱万丈の展開は、すべて終わりを良くするためのプロセスです。しかし、終わることは新しい始まりを意味します。それが物語の本質です。人生も同じです。夢を抱き、夢の実現をめざして旅立ち、苦労を重ねて宝を手に入れる。その大団円(終わり)は、新たな旅立ちの序章です。
人生は、終わりと始まりの繰り返しです。私たちがたくさんの「通過儀礼」に遭遇するのは、それらを「死と再生」な貴重な体験とするためです。私たちの人生は、「死と再生」を繰り返すことで、「永遠の生命」に至るというものです。物語の根底にある円環は、そのことの象徴です。
人生は死で終わるわけではありません。私たちの命の証は死後も受け継がれていきます。「物語法」は、「私」という小さな存在を超えて、命が無限に連鎖する「大きな物語」へと飛翔することを助ける方法論です。
円環がつながる瞬間 (ASHINARI)