2013.10.07 mon

2013年10月7日 <リグミの目> オンとオフ

2013年10月7日 <リグミの目> オンとオフ


伊勢神宮 心の御柱  (ASHNARI)
 
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━━◆【2013年9月30日(月)~10月6日(日)】 ◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
【先週の核心】

 
<リグミの目>の引っ越し
 
みなさま、こんにちは。今年3月から9月までの7ヵ月間、まぐまぐの有料メルマガで配信してきました<リグミの目>をリグミ・ポータルで引き続き発信してまいります。合わせて、リグミ・ポータルのコンテンツ構成をリニューアルしました。引き続きのご愛読よろしくお願い致します。
 
さて、「引越し」に際して、「週の始まりと終わり」について再考することにしました。今まで「日曜日から始まり、土曜日で終わる」パターンできました。日本で一般的な週の定義です。調べてみると、「週の始まり」を日曜日とする説と、月曜日とする説があり、米国は日曜日派で、欧州は月曜日派が多いようです。
 
日付と時刻の表記に関する国際規格であるISO 8601では、「週は日曜日から始まり土曜日で終わる」と定義されているそうです(参照:Wikipedia)。グーグルカレンダーのデフォルトもこのパターンですね。手書きのスケジュール帳も使っていますが、月曜日から日曜日まで1週間が見開きになっているデザインが使いやすいです。仕事をする平日の「月―金」と仕事を休む週末の「土日」がひとくくりとなり、わかりやすく便利だからです。
 
でもこれは少し旧い感覚かもしれません。シフト型の仕事が増え、ノマド型の仕事スタイルも増えている今、人それぞれの「週の単位」があるのが日常の風景になってきています。私自身も、IT端末を持ち歩いてノマド的仕事をしているので、オンとオフの感覚が曖昧になりがちです。土日も、実際にはリグミの原稿書きなどがあり、休みだという感覚は希薄です。

 
1週間のリズム

では、週単位で世界を見つめる<リグミの目>は、どうするか。いろいろ考えをめぐらした結果、「月曜日―日曜日」を選択することにしました。自分にとって一番しっくりくるという感覚的な理由がひとつ。もうひとつは「リズムに乗る」という理由です。
 
月や年は、カレンダーを繰るように変化します。もう10月か、来年の目標は、などという感覚になります。頭の整理をし、やるべきことを思い起こす感じです。これに対して、日の単位と週の単位は、もっと生理的、身体的な感覚です。活動(オン)と休息(オフ)が交互にやってくるのが、日と週のサイクルです。これが基本のリズムとなります。
 
1週間は、オフ(日曜日)から始まり、オフ(土曜日)で終わるより、平日のスイッチをオン(月曜日)にし、週末のオフ(土日)を迎える方が「リズムに乗る」ことができます。1日7時間睡眠する人は、1日の3割弱を寝ている計算になります。これを1週=7日間に置き換えると、ちょうど2日間になります。5日間オン(仕事)で2日間オフ(休息)は、私たちにとって自然なリズムといえます。<リグミの目>は、この感覚で世界を見つめていきます。

 
「神様のお引っ越し」

先週の出来事で、「オンとオフ」を象徴したのが、伊勢神宮の式年遷宮でした。10月2日(水曜)夜、新しい社殿にご神体を移す「遷御の儀」が内宮で営まれました。5日(土曜)には外宮でも行われました。式年遷宮は、「20年に一度の神様のお引っ越し」と言われます。
 
こうした儀式が20年ごとに繰り返される理由は諸説あるようですが、神道の精神として、常に新たに清浄であること(「常若(とこわか)」)が尊ばれるから、というのが基本にあるようです。聖なる施設を20年ごとに作り変える活動が、基本的に途切れることなく約1300年続いていることに驚きます。
 
20年ごとに「オンとオフ」を繰り返し、そのことで若さを永遠化する。そうとらえると、伊勢神宮の伝統が日本人の精神性に与えている影響がほのかに見えてきます。それは、神道の禊(みそぎ)の感覚といえます。不浄な過去を清算し、清浄な状態に戻り、再出発するのが禊です。

 
進化と常若

1週間単位で「オンとオフ」を繰り返し、リセットする。これは洋の東西を問わず、今日の世界で共有化されている時間感覚です。しかし、そんな1週間の生活習慣の中にも、実は日本文化の伝統に深く根差した独特の感覚が忍び込んでいる可能性があります。
 
1週間を振り返り、その良きことも悪きことも次の週、次の月、次の年へと重ね、熟成(「進化」)を目指したいのか。それとも1週間の間に溜まった疲れや汚れを清浄し、憂き世のつらさから解放され、心身の若さ(「常若」)を保ちたいのか。現代の日本人は、どちらのタイプが多いのでしょうか。1週間という短い期間を振り返ることの中にも、永遠にも通じる深いテーマが潜んでいる。式年遷宮の報道に接し、浮かんできた問い掛けです。
 
 
【リグミの解説】タイトルとリンク
 
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 2013年9月30日(月)【解説】アジアに開かれた自治
 http://lgmi.jp/detail.php?id=1709
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 2013年10月 1日(火)【解説】作家・山崎豊子の使命
 http://lgmi.jp/detail.php?id=1712
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 2013年10月 2日(水)【解説】経済と社会を同時に良くする方法
 http://lgmi.jp/detail.php?id=1715
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 2013年10月 3日(木)【解説】 消費税と原発をつなぐもの
 http://lgmi.jp/detail.php?id=1720
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 2013年10月 4日(金)【解説】戦没者墓苑に献花できる日
 http://lgmi.jp/detail.php?id=1723
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 2013年10月 5日(土)【メモ】震災前を超えるのが復興
 http://lgmi.jp/detail.php?id=1727
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 2013年10月 6日(日)【メモ】「金メダル」をめざす
 http://lgmi.jp/detail.php?id=1728
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━━◆【2013年10月7日(月)~10月13日(日)】 ◆━━━━━━━━━━━━━━━

【今週の着眼】

10月 7日(月) ソチ五輪聖火リレー始まる

 
聖火リレー
 
来年2月に開幕するソチ冬季五輪の聖火が、9月29日に古代五輪発祥の地であるギリシアのオリンピア遺跡で採火されました。ロシアでの聖火リレーは、今週月曜の10月7日にモスクワを出発します。約1万4千人の走者が広大な国土や北極圏を4ヵ月かけて巡るそうです(引用:msn)。そして今回の聖火は、初めて宇宙空間まで運ばれる予定です(引用:YOMIURI ONLINE)。
 
古代ギリシアに源を持つ西欧文明は、ユダヤ教、キリスト教という一神教と融合し、絶対的な正しさや強さを求めてきました。ここでは、「永遠」とは不変を意味します。古代ギリシアの神々と、一神教の絶対神では、大いなる違いがありますが、「永遠」の感覚は案外近いものがあると思います。オリンポス山で太陽を利用して採火される聖火は、永遠不滅の生命である「太陽」の象徴ではないでしょうか。西欧人は、聖火リレーに、古代から継承される「永遠で不変の生命」を見ているのではないかと想像します。

 
太陽と月

そんな西欧人が【先週の核心】で取り上げた伊勢神宮の式年遷宮を見たらどう感じるのでしょうか。これについては、ドイツの建築家のブルーノ・タウトの有名な逸話があります。晩年に来日したタウトは、式年遷宮のことを教えられました。ギリシア神殿が大理石を積み上げて「永遠」を保とうとするのに対して、木の神宮を作り替え続けることで「永遠」を表現する日本の作法を知ったタウトは、驚嘆したと言います。大理石はいつか朽ちていきますが、20年ごとに作り変える木造建築であれば、昔の姿をまっさらな状態で表現できます。
 
「永遠」に対する彼我の感覚の違いは、どこから来るのでしょうか。その根幹には、「神話的感覚」の違いがあるように感じます。西欧の源流であるギリシアやエジプトの神話における「太陽」は、男神の強い存在です。それは、絶対的で不変不滅の生命の火です。一方、日本の太陽神である天照大神は女神であり、世界が真っ暗になった岩戸隠れの伝説が一番有名です。日食の体験が元にある「光の消失」は、世界中の太陽神話に共通するテーマです。ただ日本神話では、太陽が強く世界を照らす支配的な存在ではなく、男神の須佐之男尊の暴挙を見かねて、姿を隠してしまう繊細な存在であるところに大きな特徴があります。
 
天照大神は、太陽神というより「月」のような存在です。満ち欠けを繰り返す「月」は、死と再生の象徴です。「太陽」が表わす生命が永遠不変のものであるのに対して、「月」が示す生命の永遠性は、変化の中にあります。永遠の時間を「不変の生命」ととらえるのか、「変化しつづける命」ととらえるのか。この世界観の違いは、小さくありません。

 
永遠の1週間
 
オンの平日とオフの週末。この当たり前のリズムを刻む1週間の中にも、「永遠の時間」の断片が潜んでいます。私たちは、政治・経済・社会を動かす時事問題に関心を寄せ、ああでもないこうでもないと論じます。そして関心はすぐに次の時事問題へと移っていきます。そんな慌ただしい日々の中でも、オフの週末に1週間を振り返り、次の1週間に思いを馳せれば、自然に見えてくるものがあります。<リグミの目>は、「変化し続けるもの」と「不変のもの」を見つめ、過ぎゆく時の奥にある「永遠」を探求していきます。
 
 
━━◆ 今週のロゴス ◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
 
「愛に燃えるその瞬間が『永遠』なんだよ」
 
― 岡本太郎 ― (1911年~1996年、日本の芸術家)
 
 
          *ロゴス: 古代ギリシアで「真理を語る言葉」の意味
 
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■文責:梅本龍夫
© League Million Inc.
 

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