2013.10.02 wed

新聞1面トップ 2013年10月2日【解説】経済と社会を同時に良くする方法

新聞1面トップ 2013年10月2日【解説】経済と社会を同時に良くする方法


【リグミの解説】

消費税8%決定
本日の新聞1面は、5紙とも「消費増税4月8%決定」をトップで大きく伝えています。読売、朝日、毎日は「財政健全化と両立」という内容で共通です。その上で、各紙の報道スタンスを関連記事と合わせてみます。
 
読売:「増税と脱デフレ、険しい道」―景気対策(アクセル)と増税(ブレーキ)を同時に踏みながら経済再生を図る難しさを指摘。
朝日:「消費税の理念、変質」―事実上、消費増税で浮いたお金を法人減税に回した、とみることもできると批判。
毎日:「負担増、年6万7000円」―モデル世帯の負担増を試算し、増税後も家計が経済成長を実感できるためには、年率3%の賃上げが必要と試算。
 
経営者と庶民、それぞれの本音
一方、日経は企業スタンスの記事です。「法人税率下げ、真剣に検討」を前面に打ち出しています。同時に、関連記事では「小手先の法人減税で恩を売り、賃上げを企業に押しつけようとしているのではないか」という経営者の不信感も伝えています。
 
対する東京新聞は、庶民スタンスの記事です。「企業優遇、家計苦しく」「社会保障、復興後回し」と増税判断を批判。安倍政権の経済対策は、企業への優遇措置が目立ちます。企業へのインセンティブが、めぐりめぐって家計に恩恵が及ぶという循環ロジックですが、「家計に恩恵が届く保証はない。将来の不安は解消されぬまま、負担だけが強いられる」と、庶民の声を代弁しています。
 
どんな社会を作りたいか
東京新聞の「庶民の声」と日経新聞にある「経営者の本音」を対比すると、有権者にある種共通する政府への目線(不信感)が感じられます。朝日の天声人語は、「企業か、人か。コンクリートか、人か」と記しています。「税と社会保障の一体改革」という民主党政権時の消費増税法成立の理念は、すっかり希薄になる中、私たちは何を選択すべきなのでしょうか。
 
世界的に見て、「経済再生と財政再建」の両立が求められているのは事実です。しかし、経済政策と財政政策は、国の経済をどうしたいか、という観点だけでは語れません。日本の社会はどうあるべきか、とワンセットで語られなければ、経済政策・財政政策は国家戦略の名に値しません。グローバル経済のうねりの中で、日本を相対的に優位なポジションに上げる競争戦略の視点は必要です。でも、その大前提は、「日本人の心理」を洞察することです。国民の無意識的な心理を理解せず、国家の運営をすることは、目を閉じてアクセルやブレーキを踏むようなものです。危うい運転であることに違いはありません。
 
「分厚い中間層」の再生
日本は、他国に比べても、「分厚い中間層」が本質的な役割を演じる国です。少数の強者・勝者に経済を引っ張ってもらい、その恩恵を庶民が受ける「アメリカンドリーム型」の理念は、わが国になじみません。アングロサクソン主導のグローバリズムに対して、日本型の調和的な経済再生を今こそ志向すべきだと私は考えています。
 
その要諦は、中間層が安定することです。日本人が求める「安心安全」は、雇用の安定が大前提です。そこに戦略の目玉を持ってくる必要があります。
 
経営者ではなく働く者が会社を再生させる
大雇用政策を大胆に打ち、若者から40代ぐらいまでが大いにやる気を出せる環境を作ります。そうすれば、経済も社会も日本らしいアプローチで再生できる大事な基盤ができます。同じ循環ロジックでも、経営者ではなく、働く者が会社を再生させるという発想であり、安倍自民党と正反対の発想かもしれません。
 
「安心安全」の基盤を作れば、人のために一所懸命働きたい人々は、いろいろな夢の実現に具体的に取り組み始めるでしょう。閉塞感を打破するとは、そういうことです。格差を放置するのでなく、格差を是正することが、個人のインセンティブとなり、経済再生の切り札となる。それが日本という国の特徴です。消費増税を何に使うか。何を達成するのか。国民心理をよく知る政治家の登場を願います。

(文責:梅本龍夫)



  1. 「消費増税4月8%決定 経済対策12月策定 首相『財政健全化と両立』 引き上げ17年ぶり」
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20131001-OYT1T00870.htm
  2. 「増税と脱デフレ、険しい道 ~8%の課題(上)」
  3. 「米政府機能、一部停止 職員80万人自宅待機」
    http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131001-OYT1T00929.htm

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 「消費税4月8%、決定 『成長と財政再建両立』 首相、経済対策に5兆円 10%、首相『必要あるか』」
    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201310010556.html?ref=twitter
  2. 「ANA 11便、JAL 5便 国交省方針 羽田国際線の増便枠」
    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201310010513.html
  3. 「消費税の理念、変質」
    http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201310010542.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 「『経済再生と財政両立』 消費税8%、首相表明 5兆円対策など決定」
    http://mainichi.jp/graph/2013/10/02/20131002ddm001010061000c/001.html
  2. 「職員80万人一時帰休へ 米政府機関 国立公園など閉鎖」
    http://mainichi.jp/select/news/20131002ddm001030068000c.html
  3. 「負担増、年6万7000円 年収500万円、片働き、4人家族の場合」
    http://mainichi.jp/select/news/20131002k0000m020091000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 「消費税、来年4月8% 首相『法人税率下げ、真剣に検討』 政府決定 経済対策5兆円 税率10% 経済状況で判断」
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS0104L_R01C13A0MM8000/
  2. 「再生へ一歩、さらに前へ ~決断 消費増税①」
    http://www.nikkei.com/article/DGKDZO60494810S3A001C1MM8000/
  3. 「全額を価格転嫁、5割 『予定通り10%に』過半 経営者緊急アンケート」
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD010M3_R01C13A0MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 「企業優遇、家計苦しく 消費増税、4月8%決定 首相会見 経済対策5兆円」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013100202000116.html
  2. 「小泉元首相、原発ゼロ訴え 講演会 安倍政権に決断促す」
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013100202000115.html
  3. 「社会保障、復興後回し」

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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