2014.06.10 tue

2014年6月10日【新聞解説】もし「集団的自衛権」の裁判員になったら

2014年6月10日【新聞解説】もし「集団的自衛権」の裁判員になったら


【リグミの解説】

集団的自衛権の論議がつづいています。安倍政権の進め方について、読売と毎日が正反対の評価内容の社説を掲げています。要点を比較します。
 
<読売新聞> 集団的自衛権 「容認」閣議決定へ調整を急げ
・ 日本の安全保障を左右する問題だけに、徹底した議論は必要だ。一方で政府・与党は、時期が来れば、きちんと結論を出す責任がある。 安倍政権は、有識者会議の提言、与党協議、国会での集中審議などの手続きを丁寧に踏んでいる。
・ 米艦防護や機雷除去などは個別的自衛権や警察権で説明できるとする公明党の主張には、一部の例外を除き、無理がある。限定容認論で説明する方が合理的だ。与党は、協議を着実に進め、合意をまとめてもらいたい。
・ これまでの政府見解は厳格すぎた。憲法上の4要件と政治的な3条件は両立するはずだ。
 
<毎日新聞> 集団的自衛権 理解できぬ首相の焦り
・ 首相の正式な検討表明を受けて始まった自民、公明の与党協議の議論は深まっておらず、国会の議論も極めて不十分だ。あと2週間以内に閣議決定するのは、あまりに拙速過ぎる。
・ 首相はなぜこんなに急ぐのか。戦後の安全保障政策の大転換を閣議決定という一内閣の判断で決めようと突き進む首相のやり方からは、焦りを感じる。
・ 集団的自衛権にいたっては、まだほとんど議論されていない。これらは本来、与党だけでなく与野党が国会で徹底的に議論すべき問題だ。首相は国民の理解を得る努力を強調してきたが、これでどうやって胸をはって閣議決定できるというのだろうか。
 
「集団的自衛権」に向き合うには
集団的自衛権については、いくつかの世論調査の比較を見ればわかるように、国民の理解や考え方がひとつの方向に集約されつつあるとはいえません。
(参照:リグミの解説5/26 リグミの解説5/19
この問題について、素人であり、知識も理解もおぼろげな典型的な一国民を自認する私は、あいかわらずなぜ集団的自衛権の閣議決定を急がなければならないのかわかりません。
 
議論に賛成か反対かの前に、私たちは安全保障の問題についてもっと賢明に議論する土台づくりをする必要があると感じます。福島第1原発での深刻な事故が起きるまで、原子力エネルギー政策について、ほとんどの国民は無自覚で無関心でした。安倍政権になって憲法改正の手続き論と改正案が議論されるようになるまで、私たちにとって憲法は空気のようなもので、無意識に呼吸をしていました。不幸な事故が起きたり、政府が議論の種を撒いたことで、私たちは原発や憲法と向き合うようになりました。
 
討論型世論調査を提案
同様に、集団的自衛権容認の方向性を安倍政権が打ち出したことで、私たちは憲法解釈と安全保障の問題に向き合うようになりました。ただ、議論が専門的でしかも両論(賛成と反対)をバランスよく理解できる報道が少ないため、主体的な意見を持てないでいる人が多いと思います。私もその一人です。本日掲載した読売と毎日の社説は、方向性が正反対という意味ではわかりやすいですが、いずれも自社の主張に誘導しようとするエネルギーが強く、事を客観的に判断する材料になりません。
 
こういうときは、両論の専門家と国民の代表の3者が一同に会し、時間をかけて論点を整理し、考え方を建設的な対話を通して積み上げ、最後は一人ひとりが自分の意見・考えを明示できるようになるのが良いと思います。世論調査における裁判員裁判制度にも比することができる、討論型世論調査(DP)が、ここでは有効な手法になると思います。大学などがコーディネーターになり、DPを実施してはどうでしょうか。
 
もし自分が「集団的自衛権」の裁判員裁判の裁判員になったとしたら、どう判断するか。自分が国の安全保障や憲法の在り方を左右するとしたら、何を優先し何をあきらめるのか。DPは、そうした真剣な取捨選択の代わりとなるひとつの手法だと思います。海洋の波は高くなっていますが、だからこそ、拙速に走ると判断を見誤ります。余裕ある議論の形成を希望します。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 混合診療 大幅拡大へ 患者重視 手続き緩和 来年度にも
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140609-OYT1T50125.html?from=ytop_top
  2. 地域農協の自立促す 自民案 全中の指導 廃止・縮小
    http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140609-OYT1T50132.html
  3. 人口減 初の本格対策 骨太方針政府骨子 予算 育児に重点配分
    http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140609-OYT1T50089.html

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 「自国防衛」を強調 閣議決定案 72年見解と結論矛盾 集団的自衛権
    http://www.asahi.com/articles/ASG697S9SG69UTFK00S.html
  2. 医療費 数値目標へ法改正「骨太」原案 薬価、毎年改定も
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11181158.html
  3. 漱石の手紙 和歌山で発見 旧制松山中の元同僚宛て
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11181162.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 集団的自衛権「限定容認」で閣議決定 政府原案 9条解釈根本転換
    http://mainichi.jp/select/news/20140610k0000m010126000c.html
  2. 農協改革「全中 新組織に移行」自民案 全農会社化に条件
    http://mainichi.jp/select/news/m20140610k0000m020072000c.html
  3. プロ野球「球団再編」から10年「健全経営目的だった」オリックス宮内オーナー
    http://sp.mainichi.jp/sports/news/20140610k0000m050140000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 混合診療 1000拠点に拡大 難病患者に選択肢
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS0903F_Z00C14A6MM8000/
  2. ユニクロ、初の値上げ 8月から5%、原料高転嫁
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ090GA_Z00C14A6MM8000/
  3. インフレ再燃、その先に 新興国の食卓 物価考 世界の底流
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS19032_R00C14A6MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 人口減克服 1億人目標 少子化対策 首相「切れ目なく」
    http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140609/fnc14060921210014-n1.htm
  2. 桂宮殿下 薨去 66歳、天皇陛下のいとこ
    http://sankei.jp.msn.com/life/news/140610/imp14061003250002-n1.htm
  3. 五輪商機 高級ホテル激戦 スイート100万円 ハイアット系あす開業
    http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140609/biz14060921250014-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 就学援助 71自治体縮小 中野区200人対象外れる
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014061002000116.html
  2. 楢葉 来春にも帰還宣言だが・・・農家「生活成り立たず」田んぼ、水源 汚染深刻
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/feature/nucerror/list/CK2014061002100004.html
  3. 「駒沢」生まれ変わる 新球技場 五輪練習場へ
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014061002000114.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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