2014.07.14 mon

2014年7月14日【新聞解説】知能と知性

2014年7月14日【新聞解説】知能と知性


【リグミの解説】

滋賀県知事選
滋賀県知事選で、無所属で前民主党衆院議員の三日月大造氏が、初当選しました。自民、公明両党が推薦する無所属の小鑓隆史氏らを破ったことで、各紙は一面で大きく報道しています。また読売、毎日、産経、東京の4紙が社説を掲げています。朝日は地方議会の現状についての社説です。特徴的な主張を比較します。
 
<読売新聞> 滋賀県知事選 与党の緊張感欠如も響いた
・ 政府・自民党の慢心を戒める結果だった、と言えるのではないか。東日本大震災の被災者や女性への配慮を欠いた言動は、与党の傲おごりや緊張感の欠如の表れ、と受け止められたのだろう。
 
<朝日新聞> 号泣県議―ひとごとではないです
・ 地方選の投票率は下がる一方だ。国の調査では、多くの人が「活動の内容が伝わらない」と不満を訴えた。わからないから無関心になる。関心を持たれないからサボったり不正を働いたりする議員が現れる。ますます住民の不信が募る。この悪循環を絶たねばならない。
 
<毎日新聞> 滋賀県知事選 政権のおごりへの批判
・ 強引な自民党1強政治に有権者が異議を唱えた選挙結果ではないか。一方の野党も、この勝利がただちに国政での攻勢につながるとは言えない。三日月氏は幅広い嘉田票を取り込むため、あえて民主党を離党して政党色を出さずに戦ったからだ。
 
<産経新聞> 知事選自民敗北 慢心への警告受け止めよ
・ 集団的自衛権の行使容認を決めたことの是非が、直接、知事選で問われたとは考えにくい。だが、国民の十分な理解をまだ得られていないことは否定できない。国民の生命を守るために必要な政策判断であることを、今後とも丁寧に説明する努力が求められる。
 
<東京新聞> 滋賀県知事選 強引政権は猛省せよ
・ もし、集団的自衛権問題が知事選に影響を与え、小鑓氏に逆風が吹いたとすれば、安倍政権にとって事態は深刻だといわざるを得ないだろう。世論を軽視し、数の力を背景にして憲法解釈変更を強行する。そうした強引さに対し、ようやく意思表示の機会を得た有権者が、怒りの一票を投じたともいえる。
 
原発を論じない政治家とメディア
滋賀県知事選の結果分析は、読売、産経が安倍政権支持、毎日、東京が不支持という違いを別にすれば、ほぼ同様な内容になっています。「石原環境相の『金目』発言」「東京都議会の女性蔑視ヤジ」「集団的自衛権の閣議決定」の3点が影響したというものです。それはその通りなのだと思いますが、「卒原発」を掲げた嘉田前知事の政策の継承という一番基本的なポイントの評価を正面から論じていないのはなぜでしょうか。
 
安倍政権と自民党は未だに原子力エネルギー政策の長期ビジョンを明らかにしていません。しかし、各種世論調査を見ても、原発の再稼働については賛否が割れています。国論を二分するテーマという基本構造は、まったく変わっていません。国民は、原発をどうするのか、為政者の真剣な対応を期待しているのではないでしょうか。
 
東京都知事選で元首相の細川護煕元氏が同じく元首相の小泉純一郎氏の応援を得て脱原発を争点に立候補しましたが、結果は3位と惨敗しました。結果、「原発は争点にならない(脱原発では勝てない)」という認識が広がった面もあると思います。もしこれが為政者の認識だとしたら、大きなポイントを見誤っているように思います。それは、東京都民は原発に対する当事者意識が乏しいということです。
 
もし島根原発と松江市の距離が東京に再現されたら
6/18のリグミの解説に記しましたが、島根県松江市は県庁所在地ですが島根原発から10キロ圏の内側です。http://lgmi.jp/detail.php?id=2184
松江を訪問し日に山陰中央新報の新聞記事に掲載された地図情報を見て、大いに驚きました。東京都心の永田町や霞が関の10キロ圏といえば、世田谷区、杉並区、板橋区、江戸川区あたりです。近接した場所に原発があったとしたら都民の意識も変わるでしょう。
 
しかし考えてみれば、東京都が福島第1原発から250キロの距離があるといっても、一端深刻な事故が起きれば十分な距離とはいえないことを私たちは経験しました。東京都が深刻な影響を受けなかったのは、風向きなど運が良かった面もあります。これは日本の現実を象徴しています。50基以上の原発が日本中の海岸線に配置されています。自然災害のみならず、テロや戦争行為のリスクも考えなければなりません。
 
原発問題は、一筋縄ではいかない困難なテーマの筆頭格です。賛成派と反対派の議論が分断され争点がかみ合わないことが多いのは、根本的な価値観や優先すべき課題の判断があまりにかけ離れているように見えるからでしょうか。だからといって、この問題を放置すれば、すべてのツケは将来世代が払うことになります。原発を再稼働しないと私たちの生活はどうなるのか。原発が存在する限り、核のゴミの最終処理という最大の問題がついてまわります。それはどうするのか。
 
「答えのない問い」を発し続ける
田坂広志・多摩大学大学院教授は、「『知能』とは、『答えの有る問い』に対して、早く正しい答えを見出す能力」と指摘します。原発政策を推進してきた官僚と電力会社は、知能の優れた人たちだと思います。だからでしょうか、「原発は安全」という答えが用意されていた時代には、問題なくことを推進できました。
 
しかし、田坂氏は続けてこう言います。「『知性』とは、『答えの無い問い』に対して、その問いを、問い続ける能力」。今、私たち日本人がほんとうに必要としているのは、田坂氏が指摘する「知性」です。原発について、単純に「賛成」「反対」を主張することで終わりにするのではなく、この困難なテーマを解くために、「答えのない問い」を発し続け、解決に知恵を絞る必要があります。
 
今メディアを賑わしている政治家の姿は、国政も地方政治も、「知性」とは縁遠い内容が目につきます。しかし政治とは、「答えの無い問い」に具体的に答えようとする試みであり、最も「知性」を必要とする仕事ではないでしょうか。

(文責:梅本龍夫)



  1. 女性登用促進へ新法 政府方針 企業に行動計画
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140713-OYT1T50108.html
  2. 滋賀知事選 自公系敗れる 民主実質支援 三日月氏 接戦制す
    http://www.yomiuri.co.jp/election/local/20140713-OYT1T50088.html
  3. ひき逃げ 女性3人死亡 1人重傷 酒気帯びか 男を聴取 北海道・小樽
    http://www.yomiuri.co.jp/national/20140713-OYT1T50062.html

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 卒原発派、滋賀知事に 三日月氏 再稼働 根強い批判
    http://www.asahi.com/articles/ASG7D63PVG7DUTFK00F.html
  2. がれき撤去 20キロ先汚染 福島第一 昨夏 コメにセシウム
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11241596.html
  3. ひき逃げか3人死亡 小樽・男に容疑 呼気からアルコール
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11241602.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 滋賀知事選 自公敗れる 嘉田氏後継 三日月氏初当選
    http://senkyo.mainichi.jp/news/20140714ddm001010235000c.html
  2. 日中首脳会談に意欲 首相「11月APECで」本紙インタビュー
    http://mainichi.jp/select/news/m20140714k0000m010144000c.html
  3. 閣僚会合めど立たず TPP合意「最速11月」
    http://mainichi.jp/select/news/20140714k0000m020078000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 女性管理職 登用に目標 トヨタや三井物産 20年に3倍
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDZ1300X_T10C14A7MM8000/
  2. 夏のボーナス8.48%増 バブル期上回る伸び 製造業けん引 本社最終集計
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASDZ13010_T10C14A7MM8000/
  3. おもてなし阻む障壁 観光立国 看板倒れ 規制 岩盤を崩す
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS0503L_U4A700C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 滋賀知事選 自公系敗れる 嘉田県政継承 三日月氏が初当選
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/140714/chn14071408370002-n1.htm
  2. にぎやかに 陛下傘寿お祝い
    http://sankei.jp.msn.com/life/news/140714/imp14071401050002-n1.htm
  3. 中国、孤立回避へ「遠方外交」習近平主席 中南米歴訪
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/140714/chn14071400370001-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 滋賀知事選 自公敗れる 集団的自衛権・やじ 影響 三日月氏が初当選
    http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014071490070333.html
  2. 新国立競技場 応募時 高さ条件10メートル超す 除外せず採用 後に修正
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014071402000115.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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