2014.06.18 wed

2014年6月18日【新聞解説】映画「RAILWAYS」の現実

2014年6月18日【新聞解説】映画「RAILWAYS」の現実


【リグミの解説】

集団的自衛権の社説、原発30キロ圏の社説
集団的自衛権に関する与党協議が大詰めを迎える中、新聞各紙が賛否の社説を掲げています。読売は「集団的自衛権 機雷除去も可能にすべきだ」、産経も「集団的自衛権 機雷除去は日本の国益だ」とのタイトルで個別検討課題に踏み込み賛意を表明。一方、毎日は「集団的自衛権 吟味もせず行使容認か」、東京が「集団的自衛権 結論先行で議論急ぐ愚」とのタイトルを掲げ、具体的内容以前に拙速な進め方が納得できないとする主張です。
 
そんな中、朝日は1面トップ記事「原発避難 病院9割計画なし」という調査記事と連動し、原発再稼働に反対する趣旨の社説を掲げています。主張の概要は以下のとおりです。
 
<朝日新聞> 原発再稼働の前に―「被害地元」と向き合え
  • 福島での大事故の後、国は原発から30キロ圏内の地域に、万一の事態に備えて防災計画を立てるよう求めている。では30キロ圏外の地域は安全なのか。とてもそうは言えない。原発の周辺自治体が試算した放射性物質拡散予測で、その現実が次々と浮き彫りになっている。
  • 放射性物質の集まり「プルーム」は、風任せでさらに外へと流れていく。大気中の放射性ヨウ素が十分に薄まっていないエリアでは、のど元の甲状腺が被曝して、小さな子どもが甲状腺がんになる確率が高くなる。
  • さらに考慮せねばならないのは、プルームの通過と降雨が重なれば、セシウムなど長期の影響をもたらす放射性物質が地上に集中的に落ちて、土地を汚染してしまうことだ。そうなれば一時的な対策ではすまない。
 
島根県の魅力
先日、島根県・松江市を訪問しました。立ち上げにかかわったスターバックスの全国展開の状況を実地検分するのがひとつの目的でした。島根県は、スターバックスがもっとも遅く進出した県のひとつです。松江駅前店は去年3月に島根初の店舗としてオープンしましたが、繁盛していました。パートナー(従業員)もスターバックスらしさを体現しており、好感がもてました。それから、映画「RAILWAYS」で有名になったローカル線の一畑電鉄に揺られて出雲大社に向かいました。一月前に大社の入り口前にオープンした2号店は、和風のインテリアを取り入れ、こちらもがんばって営業をしていました。
 
出雲大社は平成の大遷宮と、高円宮家の典子さまの婚約内定が重なり、たいへんな人出でした。松江市は初めて訪問したのですが、疲弊した地方都市を想像していた私は、観光客で賑わう整備された町並みの魅力に惹きこまれました。地元の人に聞くと、ここ5年ぐらいでインフラの整備が進んできたという話でした。出雲大社をはじめ、往時の姿を今にをとどめる松江城、小泉八雲旧邸の趣き、さらには足立美術館(安来市)の日本庭園の魅力など、松江市周辺は魅力的な観光資源が豊富でした。
 
島根原発30キロ圏
旅館に戻ると、そんな私の物見遊山気分を吹き飛ばす新聞記事を目にしました。地元紙の山陰中央新報の5/30朝刊1面に「島根原発事故30㌔圏47万人 圏外全員避難、27時間50分」というタイトルが目に飛び込んできました。重大事故時の避難区域となる30㌔圏に47万人もいるという現実。さらに全員避難に標準的ケースで27時間50分かかると推計されたことを知り、原発事故の影響の深刻さと対処の困難さを実感しました。
 
しかし何よりもショッキングだったのが、同記事添付の「島根原発30キロ圏の自治体」と題された地図でした。日本海に面した島根原発を中心に、5キロ、10キロ、20キロ、30キロ圏がそれぞれ赤色の同心円で描かれています。見ると、県庁所在地の松江市は10キロ圏の内側です。出雲大社がある出雲市は30キロ圏の内側です。東京都心の永田町や霞が関の10キロ圏といえば、世田谷区、杉並区、板橋区、江戸川区あたりです。30キロ圏で、東京都町田市や千葉県柏市、埼玉県所沢市あたりとなります。大都市圏の住民は、原発とともに生活する実感に乏しいことを、私は島根原発の同心円地図を松江市で見て、思い知らされました。
 
映画「RAILWAYS」の現実
映画「RAILWAY」で主人公役の中井貴一さんは、東京で妻子とともに暮らす大手家電メーカーの経営企画室長。取締役への昇進が内定していました。故郷・島根に住む母が倒れたことなどをきっかけに、「一畑電車の運転士になる」ために帰郷します。紆余曲折を経て、主人公は晴れて運転士となります。人生の意味を味わい深く描いたこの映画は、現代日本の経済、社会、コミュニティー、家族の在り方を問う内容でした。しかし映画で描かれなかった側面があります。それは、のどかな田園風景をガタゴトと走る一畑電鉄が、島根原発の10キロ圏と30キロ圏の間を往来する現実です。
 
昭和の戦争を研究している作家の半藤一利氏は、「日本は真ん中を山脈が貫く細長い国で、日本人はみんな海側に張り付いている。海岸線はアメリカより長く、この国を守ろうとしたら、ものすごい数の兵隊が要る。しかも海岸線には原発が五十何基もあり、ミサイル1発撃ち込まれたら誰も住めなくなる。地政学的に見て最も守りづらい国。だからこそ戦争を起こさないように真剣に考えないといけない」と語っています。集団的自衛権と原発再稼働問題は、地続きのテーマです。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 成年後見 首長の申請急増 昨年5000件突破「子」に次ぎ2番目
     
  2. 集団自衛権 新3要件 修正協議へ 会期中の閣議決定 困難に
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140617-OYT1T50188.html
  3. 岸田外相ウクライナ訪問 7月、経済支援など表明
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140617-OYT1T50229.html

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 原発避難 病院9割計画なし 再稼働審査先行の30キロ圏52市町村
    http://www.asahi.com/articles/ASG6G451DG6GUTFK006.html
  2. 来週中の閣議決定視野 集団的自衛権 自民、公明と調整へ
    http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/ASG6K7FT9G6KUTFK014.html
  3. 医療事故調、来年発足へ 調査の必要性 病院側が判断 法案きょう成立
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11195562.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 集団的自衛権 会期内与党合意は困難 新3要件 公明内に異論
    http://mainichi.jp/select/news/20140618k0000m010074000c.html
  2. 病死 身元照合に載らず 警察・自治体、連携規定なく
    http://mainichi.jp/select/news/20140618k0000m040127000c.html
  3. 参入前 複数から誘い 楽天 三木谷浩史オーナー
    http://mainichi.jp/sports/news/20140618k0000m050130000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 共通番号で医療費抑制 マイナンバー投薬など管理 政府方針
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASGC1701G_X10C14A6MM8000/
  2. 車7社、研究開発最高に 今期2.4兆円 環境・ITに重点投資
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDZ170DZ_X10C14A6MM8000/
  3. 三菱重、仏に拠点 調達や開発 アルストムと協力
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDZ170JN_X10C14A6MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 競争力弱点「後戻りできぬ」 「三原則」歴史的緩和 開国 防衛産業
     
  2. イラク首都近郊で交戦 44人死亡 北方50キロ、一進一退
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/140618/mds14061808440002-n1.htm
  3. 代金納期決まらず抗議 マルナカ、地裁に要請 総連本部売却
    http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20140618-00000083-san-pol

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 介護サービス縮小へ「要支援」市町村事業に 自己負担引き上げ きょう法案成立
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014061802000119.html
  2. 公明 慎重論が大勢 自民、行使の範囲譲らず
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014061802000120.html
  3. 東京五輪1964の記憶
     

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ