2014.06.06 fri

2014年6月6日【新聞解説】帝国主義の亡霊

2014年6月6日【新聞解説】帝国主義の亡霊


【リグミの解説】

G7首脳宣言
G7首脳宣言が出ました。読売、毎日、産経、東京の4紙が社説を掲げています。主要テーマはウクライナ問題に関してロシアに圧力をかけることですが、中国の海洋進出への懸念も共有されました。日本の関心が高い中国問題に関する各紙の記述を比較します。
 
<読売新聞> G7首脳宣言 国際法秩序の維持へ結束せよ
・ 安倍首相は首脳会議で、中国の海洋進出とロシアのクリミア編入を関連づけ、「世界のどこでも力を背景とする現状変更を許してはならない」と訴えた。その認識をG7が共有した意義は大きい。中国に強権的な外交姿勢の転換を促すことは今や、国際社会の共通の課題だ。G7を中心に、関係国の足並みをそろえたい。
 
<毎日新聞> G7と中露 建設的対話への努力も
・ 国際法に挑戦するかのような中国の行動にもくぎを刺した。安倍晋三首相は日本の主張が受け入れられたと強調しているが、欧米が尖閣諸島をめぐる日中対立などアジアの緊張を懸念していることが背景にあるとみるべきだ。日本も緊張緩和のため中国との対話実現に真剣に取り組まねばならない。
 
<産経新聞> G7サミット 「対中認識」を行動に移せ
・ 中国の尖閣奪取の試みや、南シナ海の大半を領海視しての振る舞いは、国際法・規範を破って一方的に行動する点で、ロシアによるクリミア併合と変わらない。首脳宣言が東シナ海、南シナ海に言及し、「力を背景とする一方的な現状変更の試みに反対」と謳ったことは成果である。中国に対しても結束し、国際ルールの順守を求めていくべきだ。
 
<東京新聞> ウクライナ声明 G7の結束が先決だ
・ 尖閣諸島をはじめ、中国の挑発行為による緊張が続くアジア情勢についても、「東シナ海、南シナ海での緊張への懸念」「一方的な武力行使による領土主張に反対」を明記しつつも、名指しは避けた。背景には欧米が抱えるそれぞれの内部事情がある。指導力を発揮すべきオバマ政権は、秋の中間選挙を控えて外交政策に本腰を入れることができない状況にある。欧州連合(EU)も欧州議会選挙で統合懐疑派が躍進し共通外交の足元も揺るぎがちだ
 
帝国主義の亡霊
多大な犠牲を払って終結した第二次世界大戦以降、武力を背景として領土拡張をはかる帝国主義的な動きを封じる国際体制が敷かれました。「戦後の国際社会は自由、民主制、主権尊重、領土保全などを諸原則としている。ロシアが戦勝国としての地位を自負するのなら、自らも含めて合意された国際的秩序の原則を順守する節度は示すべきだろう」と東京新聞の社説は主張しています。これは、同じく戦勝国である中国についてもあてはまることです。
 
20世紀の2つの世界大戦は、集約すれば、武力による領土の拡張を画策した国々の戦いでした。国家がエゴイズムをむき出しにした姿がそこにはありました。帝国主義の亡霊を、私たちは再び見ているのでしょうか。エゴイズムとエゴイズムが対決すれば、行き着く先は武力衝突です。帝国主義の亡霊を封じる勇気と知恵が求められています。
 
ノルマンディー上陸作戦70周年
70年前の1944年6月6日は、第二次世界大戦の連合軍によってナチス・ドイツ占領下の北西ヨーロッパへ侵攻した「ノルマンディー上陸作戦」が敢行された日です。70周年記念式典が6日にフランスで開かれ、戦勝国の立場としてプーチン大統領も出席する予定です。
 
ロシアを含めてG8に成長した先進国首脳会議は、今回G7に逆戻りしました。しかし、問題を起こした国を排除し、非難したり経済的圧力をかけるのが本当に正しい姿なのか、疑問があります。ロシアは欧米への対抗上、中国に急接近しています。敵と味方に別れ、非難の応酬をするやり方は、もう卒業できないものでしょうか。
 
第2のガルボは小説の中で
300万人近い兵員が投入されたノルマンディー上陸作戦は、実は薄氷を踏むようなプロセスを経て実行されたものであったことを、国際ジャーナリストの土野繁樹さんの最新エッセー「ノルマンディ上陸作戦の舞台裏」を読んで知りました。ガルボという暗号名の二重スパイの活躍が決定的な役割を果たすさまは、まるで一級の映画を観るような展開です。
(参照:ノルマンディ上陸作戦の舞台裏 ~フランス田舎暮らし(34)~
 
ガルボは、「養鶏学校卒の小柄で地味でやさしいスペイン人」であったと土野さんは描写しています。スペイン内戦の体験から、ファシズムに対する強い怒りをもち、自ら二重スパイになることを買って出ました。ガルボは平和を希求し、危険を顧みず行動したのだと思います。
 
戦争か平和か。そんな単純な二者択一はもうなくなったと思っていましたが、帝国主義の復活を思わせる最近の国際政治動向をみると、政治の指導者たちの度量と英知が今ほど試されている時代はないと感じます。第2のガルボが活躍するのは、小説や映画の中だけであってほしいと切に願います。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 力で現状変更 認めず G7宣言 中露を念頭
    http://www.yomiuri.co.jp/world/20140605-OYT1T50132.html?from=ytop_ylist
  2. 橋下系37人 石原系23人 無所属2人 維新分党 行き先決定
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/20140605-OYT1T50127.html
  3. 欧州マイナス金利 銀行向け、主要中銀で初
    http://www.yomiuri.co.jp/economy/20140605-OYT1T50128.html

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 厚労省不正入札 捜査へ 職業訓練 市民団体が告発
    http://www.asahi.com/articles/ASG656330G65UTIL042.html
  2. 調書公開 11人中10人容認 原発事故 聴取受けた民主元閣僚ら
    http://www.asahi.com/articles/ASG653PL5G65UTFK006.html
  3. 混合診療を拡大 16年度にも、全国で実施 政府方針
    http://www.asahi.com/articles/DA3S11175674.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. G7 エネルギー安保 露を批判 調達先多角化へ
    http://mainichi.jp/shimen/news/m20140606ddm001030180000c.html
  2. 残土管理計画求める リニア建設で環境相意見
    http://sp.mainichi.jp/shimen/news/m20140606ddm001020114000c.html
  3. マイナス金利を導入 欧州中銀 主要国・地域で初
    http://mainichi.jp/select/news/20140606k0000m020092000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 「G8後」描けぬ秩序 G7サミット閉幕 対ロ包囲網詰め切れず
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASFS05015_V00C14A6MM8000/?n_cid=TPRN0001
  2. 欧州中銀 マイナス金利 政策金利も最低の0.15%に
    http://www.nikkei.com/markets/features/12.aspx?g=DGXNASDC05007_05062014MM8000
  3. ハイブリット車用の磁石 TDK、中国生産 トヨタなど向け
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDZ050GB_V00C14A6MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. G7「力で現状変更反対」首脳宣言ウクライナ支援結束
    http://sankei.jp.msn.com/politics/news/140606/plc14060603150004-n1.htm
  2. 後方支援の基準厳格化 政府 グレーゾーンは運用改善
  3. 中国、新たな南沙開発か 岩礁2カ所 埋め立て作業
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/140605/asi14060520430004-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 97年以降、身元確認せず 18年不明「野村さん」と確認 埼玉県 照会4ヶ月のみ
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2014060602000144.html
  2. 首相 中国脅威論空回り G7 関心はウクライナ
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2014060602000143.html
  3. リニアの建設は相当な環境負担 アセス意見書
    http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2014060501001628.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ