2013.12.04 wed

新聞1面トップ 2013年12月4日【解説】誰が「敵」なのか

新聞1面トップ 2013年12月4日【解説】誰が「敵」なのか


【リグミの解説】

「特定秘密保護法案に反対する学者の会」2006人が賛同
国内の著名学者らが結成した「特定秘密保護法案に反対する学者の会」は、法案の廃案を求める声明に賛同する学者が、呼び掛けから一週間で2006人に達したと発表しました。東京新聞が1面3番記事で伝えています。
 
メンバーが声明をブログに掲載したところ、賛同する学者が殺到したため、一週間かけて取りまとめたそうです。記者会見で栗原彬・立教大名誉教授(政治社会学)は「国が市民を取り締まる法案。現代の治安維持法で、ナチスドイツの全権委任法に近い」と批判しました(引用:TOKYO Web)。
 
 
「全権委任法」や「治安維持法」に似ているのか
ナチスドイツの全権委任法が制定された歴史的過程については、土野繁樹氏のブログ「歴史音痴」に詳しく解説されています。http://lgmi.jp/detail.php?id=1601
全権委任法は、「ヒトラーに憲法を除くすべての法律を自由に公布できる権限を認める法案」で、ヒトラーの独裁にお墨付きを与えるものでした。
 
日本の戦前を象徴する法律であった治安維持法はどうでしょうか。こちらは「国体(皇室)や私有財産制を否定する運動を取り締まることを目的として制定されました。当初は共産主義の浸透を防止することが目的と言われました(参照:WIKIPEDIA)。
 
一方の特定秘密保護法案は、(1)防衛(2)外交(3)特定有害活動(スパイ)防止(4)テロ防止―の4分野の情報を秘密にするというもの。こうして比較すると、全権委任法とも治安維持法とも、似ているようには見えません。それにもかかわらず、厳密な学問的定義をすべき学者がこのような発言をし、専門を異にする2000人以上の学者が特定秘密保護法案に反対する理由はどこにあるのでしょうか。
 
現政権・与党の意図
私は、現政権・与党の中にある明確な意図に対する懸念がそうさせているのだと思います。安倍政権は、憲法改正を意図して世論の喚起をめざしましたが、それがうまくいかないとわかると、集団的自衛権の容認などの憲法解釈の変更と、特定秘密保護法などの個別法案で状況を変えようとしているように見えます。
 
自民党の意図が一番わかりやすく表現されているのが憲法改選案です。現憲法の第12条は、「憲法が国民に保障する自由及び権利は、(中略)常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負う」とあります。これを自民党案は、「国民の責務」というタイトルをつけ、次のように変えています。「憲法が国民に保障する自由及び権利は、責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない」。
 
「公益及び公の秩序」とは何でしょうか。石破茂・自民党幹事長は、自身のブログに「(デモの)単なる絶叫戦術はテロ行為とその本質においてあまり変わらない」と記しました。批判を受けて訂正をしましたが、現政権・与党の中にある明確な意図がとてもよくわかる象徴的な言動となりました。
 
「合わせ技一本」
共産主義革命運動の激化を懸念して発足した治安維持法は、拡大解釈され、宗教団体や、右翼活動、自由主義等、政府批判はすべて弾圧の対象となっていきました(引用:WIKIPEDIA)。柔道に例えれば、ナチスドイツの全権委任法は、豪快な一本背負いで「敵」を倒しました。戦前の治安維持法は、身動きできなくなる寝技で「敵」から一本を取りました。
 
特定秘密保護法案は、これらに比べれば小さな技です。せいぜい「技あり」か「有効」です。しかし、これから続く他の法案や、法律の運用次第で、「技あり」や「有効」がいくつも重なり、いつか「一本」を取られることになる可能性があります。一体、政府・与党が戦っている「敵」とは誰なのでしょうか。
 

(文責:梅本龍夫)



  1. 日米、中国防空圏「黙認せず」TPP、普天間も協力
    http://www.yomiuri.co.jp/politics/news/20131203-OYT1T01133.htm?from=ylist
  2. 日本の学力 回復鮮明 読解・化学応用4位、数学応用7位
    http://kyushu.yomiuri.co.jp/magazine/kyoiku/20131204-OYS8T00286.htm
  3. 張成沢氏 失脚か 北ナンバー2 側近2人処刑
    http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20131203-OYT1T00894.htm

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 家不足 復興の重荷 東日本大震災1000日 新聞チラシ分析
    http://www.asahi.com/articles/TKY201312030707.html
  2. 参院委、あす採決強行も 秘密保護法案 きょう公聴会
    http://www.asahi.com/articles/DA2S10861507.html
  3. 中国防空圏 強く懸念 首相、米副大統領と一致
    http://www.asahi.com/articles/TKY201312030401.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 中国識別圏「黙認せず」米副大統領と首相一致
    http://mainichi.jp/select/news/20131204k0000m010113000c.html
  2. 会期末迫り攻防激化 4野党、公聴会欠席へ 秘密保護法案
    http://mainichi.jp/select/news/20131204k0000m010105000c.html
  3. 張成沢氏失脚か 北朝鮮ナンバー2 側近2人処刑
    http://mainichi.jp/select/news/20131204k0000m030040000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 中国防空圏「黙認せず」首相と米副大統領 連携を確認
    http://www.nikkei.com/article/DGKDZO63570020U3A201C1MM8000/
  2. ミャンマー金融市場開放 外銀の現法許可へ まず法人向け
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASGM0301V_T01C13A2MM8000/
  3. 学力 脱ゆとり効果 日本の高校生、順位上げる
    http://www.nikkei.com/article/DGKDASDG2805O_T01C13A2MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 「全員帰還見直し」賛成68% 東日本大震災1000日
    http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/131204/dst13120407310002-n1.htm
  2. 日本の15歳 学力向上 OECD「読解力」8→4位
    http://sankei.jp.msn.com/life/news/131203/edc13120322470003-n1.htm
  3. 張成沢氏 失脚か 正恩氏の叔父 側近2人処刑
    http://sankei.jp.msn.com/world/news/131203/kor13120317320004-n1.htm

(MSN産経ニュース http://sankei.jp.msn.com/
 



  1. 震災1000日 漏れ続ける汚染水 遮水壁 遠い完成 上空ルポ
    http://www.tokyo-np.co.jp/article/national/news/CK2013120402000127.html
  2. 「学会の会」2006人に「民主主義の危機、直ちに廃案に」

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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