【リグミの解説】
株主総会の集中日
3月期決算の上場企業の株主総会は、決算業務の関係から6月に集中します。今年の集中日は、本日27日です。今でも約40%の企業が集中日を総会開催日に選んでいます。この数字、10年前は70%、15年前は95%でしたから、それでも随分と分散型にはなってきました(参照:
東京証券取引所)。
企業が総会集中日を選ぶ理由は、端的に言って「物言う株主」が大挙してやってこないようにするためです。会場の確保、弁護士などの専門家の対応時間などを考えたら、ある程度開催日を分散させた方が合理的であるにもかかわらす、今でも4割の企業があえて集中日を選択しているのは、株主総会の「建前」と「本音」が大きく乖離(かいり)しているからでしょう。
電力会社の株主総会
東京電力など9電力会社が、26日に株主総会を開きました。そのうち8電力会社に対して株主から「脱原発」を求める株主提案が提出されました。集中日の1日前に総会を開いたのは、「集中日の開催は対話を拒否している」と批判されないためだったのかもしれません。しかし、東京新聞のタイトルが「『再稼働ありき』総会 株主の『脱原発』すべて否決」、朝日(1面4番記事)が「8電力、『脱原発』否決」です。
東電の株主総会の様子を伝える東京新聞は、東電の生え抜きでない「下河辺会長になり、会社が変わるかと思ったが目立った変化はない」という株主の声を紹介し、質問を求める株主が多く残る中、質疑を打ち切った下河辺会長の議事運営を批判。「原発を使わない東電の株主になって誇りを持ちたい」と訴える株主に対して、広瀬社長は「(柏崎刈羽原発)の運転再開に向け、安全性向上の対策を確実に実施したい」と早期再稼働に固執する考えを繰り返した、と記しています。
「株主との対話」という建前
上場会社の株主総会の運営事務局や回答役員をした体験から言うと、東電をはじめとした電力会社が、「脱原発」を求める株主とまともな「対話」をする気がないことは、容易に想像できます。株主総会は、会社法に規定に基づき、かならず議案に採決を取り、法的に成立させる必要があります。大株主が余程強く意見しない限り、議案はすべて経営側の思惑を100%反映したものとなります。
さすがに過去のような「紋切型」の回答は減ったと思いますが、年の1回の総会で、投資家である株主と直接の「対話」をじっくりと行い、その意向を経営に反映させていくという考え方は、ただの「建前」に過ぎない企業がほとんどだと思います。
本当にその気があるなら、年に1回の総会だけでなく、常時株主とのコミュニケーションのパイプを設け、そのやりとりを議事録に残し、経営への反映度も開示するぐらいの取り組みがあってしかるべきです。最低でも、株主総会は法的に成立させ、しかるのちに株主との懇親会を開催するぐらいの取り組みはすぐできます。
電力経営の本音
それでも電力会社の場合は、株主との建設的な「対話」は難しいだろうと想像します。6月25日に「
リグミの解説」に書きましたように、原発は、通常の企業経営における合理的な経営判断を超えた存在といえます。福島第1原発のレベル7の事故が起きても、「安全第一」に舵を切った電力会社はゼロです。
電力会社の経営者として、「安全が確認された原発を順次再稼働させ、経営基盤を安定させる」と判断することは、一定の合理性があります。株主の負託を受けた経営者は、まずは原発に依存せざるを得ない「現実」に対処しようとするものです。脱原発という「理想」を求める一部個人株主の質問や提案を聞く耳は持っていない(あるいは、持ちたくても持てない)というのが「本音」でしょう。
新世代を育てる世論
しかし、経営者は「現実対応」が責務のすべではありません。現状を打破し、経営の「理想創造」に取り組むことが求められています。ただ、一経営者がひとりで(少数で)「理想」の姿を勝手に画策できないのが、原発の特殊性です。なぜなら原発は国策として推進されてきたからです。よほど型破りな経営者が東電などに入らない限り、官僚的な経営は変わらないと思います。
それでも、心ある経営者が電力会社にも少なからずいると信じています。そういう経営者たちが立ち上がり、新しい「理想創造」に取り組む後押しをし、支援をするのが、株主の大切な役割です。東電は、実質国有化されました。ということは、「国民一人ひとりが東電の株主」とも言えます。東電の経営により「理想」を求める世論が、長い目で見れば、新世代の電力経営者を育てる土壌になると思います。
(文責:梅本龍夫)
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- 【独自取材】 「国会閉会 参院選に突入」
http://www.tokyo-np.co.jp/article/politics/news/CK2013062702000113.html
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