2013.06.25 tue

新聞1面トップ 2013年6月25日【解説】国会と原発は似た者同士

新聞1面トップ 2013年6月25日【解説】国会と原発は似た者同士


【リグミの解説】

 
「0増5減」の衆院再可決
最高裁が2009年の衆院選を「違憲状態」と判断し、昨年12月の衆院選については「選挙無効」の判決まで出た衆院の「1票の格差」。最大2.30倍を1.998倍に修正する「0増5減」を実施する改正公選法がようやく成立しました。読売、朝日が1面トップで、毎日が2番記事として報道しています。各紙の社説の論調を比較します(「サードビュー」)。
 
読売: 「参院の存在意義はどこにある」
  • 与党の対応にも問題はあるが、民主党の対応は筋が通らない。昨年11月に0増5減の先行実施に同意しながら、政権交代後には法律実施のための区割り法には反対している。ご都合主義で「与党の強引な国会運営」をアピールしても国民の共感は得られない。
 
朝日: 「国会丸ごと不信任だ」
  • 議会として当たり前の審議をせず、会期末を控えた与野党は、有権者にまったく理解できない駆け引きを繰り広げた。そのあげくに衆院に再可決を許したのでは、参院の自殺行為に等しく、「国権の最高機関」のむなしい姿がある。
 
毎日: 「許せぬ無責任な幕引き」
  • 0増5減をすみやかに実施し、衆院の選挙制度改革に向けた協議を進め、定数削減の結論を出すことが各党に課せられた今国会の使命だったにもかかわらず、与野党は批判の泥仕合を演じた。国会議員だけに問題を任せられないことがはっきりした。
 
日経: 「さらなる1票の格差是正を」
  • 参院で審議しなかったのは野党の怠慢だ。自公と0増5減に合意した民主党が法改正を阻んだのは理解に苦しむ。昨年の衆院選について、最高裁は0増5減では不十分と判断する可能性もある。国会はより踏み込んだ1票の格差是正に動くべきだ。
 
東京: 「弥縫策を繰り返しては」
  • 弥縫策を繰り返しても不平等はなくならない。より踏み込んだ方の下も平等を追求するが国会の責務ではないか。政党交付金が政党収入の多くを占める「国営」と化した政党に、国民の側に立った政策が実現できるのか、甚だ疑問だ。
 
「誰」の責任なのか
読売と日経は、民主党の対応を批判する論調で、朝日、毎日、東京は与野党を同等に批判する内容となっています。どの政党がより「悪党」なのかを議論するのはあまり意味がないと思います。参院が自らの使命を果たせなかった「結果責任」をまずは問う必要があります。その上で、「原因責任」を客観的に追求すべきでしょう。その際に参考になるのが原発問題です。
 
原発経営を正す方法
原発の安全対策を電力会社に一任できないのは、原発が通常の企業経営における合理的な経営判断を超えた存在だからです。福島第1原発について、東日本大震災前に津波対策を示唆されながら、東電は対策を先送りしました。起きるか起きないかわからない巨大津波に対応した堤防などを造作することを優先度の高い経営課題と考えた経営陣は皆無であったのだと思います。
 
そこで必要になったのが、いわゆる「原子力ムラ」に取り込まれない独立した安全基準の策定と審査をする機関でした。現在の原子力規制委員会は、大震災前の原子力保安院に比べれば、事業者側の事情に影響されず「安全第一」の理念を追求できています。一方で、新基準が策定される過程でも、電力会社は基準を満たす「最低線」はどこなのかを探る動きを繰り返しました。原発に関する電力会社の経営インセンティブが依然として「安全第一」に置かれていないことを象徴する事象です。
 
制度・仕組みと倫理
度重なる最高裁の「警告」にも関わらず、憲法違反を是正するために身を切る改革を断行できない国会議員。国民の生存権を脅かし、国家の安全保障に脅威を与えた深刻な原発事故を体験しても、「安全第一」に舵を切れない電力会社の経営陣。
 
ここには、組織風土の問題や、個々の人物のプロフェッショナリズム(職業倫理観)の欠落という深刻な問題があります。しかし同時に、「フェアなゲームを成立させるには、審判制度が必要」という制度上の課題があります。
 
まず、制度や仕組みを整える。しかる後に倫理を問う。この順番であれば、現実を改善することが可能であり、並行して理想を目指す視点も提供してくれると思います。

(文責:梅本龍夫)



  1. 【独自取材】 「『0増5減』成立 みなし否決適用 衆院が再可決」
       http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin/news/20130624-OYT1T00840.htm
  2. 【独自取材】 「上村会長10月にも辞任 全柔連 助成金6055万円返還へ」
       http://www.yomiuri.co.jp/sports/news/20130624-OYT1T00837.htm
  3. 【連続企画】 「汚染水との格闘続く ~電力再生(上)」
      

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 



  1. 【独自取材】 「一票の格差、遠い抜本是正 0増5減、再可決で成立 新区割り法」
       http://www.asahi.com/shimen/articles/TKY201306240798.html
  2. 【独自取材】 「上村会長、辞任を表明 柔道不祥事 『改革目めどつけば』 時期は明示せず」
       http://www.asahi.com/sports/update/0624/TKY201306240215.html
  3. 【独自取材】 「海のトリチウム濃度倍増 福島第一原発 港湾内、汚染水漏れか」
       http://www.asahi.com/national/update/0624/TKY201306240481.html

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 



  1. 【連続企画】 「プルサーマル、米に約束 昨秋、民主党政権、国民に説明せぬまま プルトニウム 軍事転用懸念受け ~虚構の環(サイクル) 第3部 安全保障の陰で1.」
       http://mainichi.jp/feature/news/20130625ddm001040039000c.html
  2. 【独自取材】 「0増5減、再可決 改正公選法成立 1票の格差縮小」
       http://mainichi.jp/select/news/20130625k0000m010075000c.html
  3. 【独自取材】 「今年も頑張った 宮城の品評会 奇跡の牛入賞」
       http://mainichi.jp/feature/20110311/news/20130625ddm001040046000c.html

(毎日jp http://mainichi.jp/
 



  1. 【企業広報】 「アップル・グーグルに配信 マイクロソフト、スマホゲーム 囲い込み戦略、転換」
       http://www.nikkei.com/article/DGXNASDD240H8_U3A620C1MM8000/
  2. 【連続企画】 「心つかむ極意、日常に 生み出すのは私 ~Wの未来 会社が変わる①」
       http://www.nikkei.com/article/DGKDASDD110QD_U3A610C1MM8000/
  3. 【独自取材】 「スパコンOS、日米開発 コスト削減 東大・富士通が参加」
       http://www.nikkei.com/article/DGXNASGG1902K_U3A620C1MM8000/

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 



  1. 【独自取材】 「請願、6割報告せず 都教委事務局、市民の声を選別 教育委員会に 君が代斉唱など 過去3年、33件中21件」
       http://www.tokyo-np.co.jp/s/article/2013062590070905.html
  2. 【連続企画】 「怒り、LOVEに乗せ ~犠牲の灯り 第5部『サマータイム・ブルース』―1.清志郎通り(上)」
       http://www.chunichi.co.jp/article/feature/akari/list/CK2013062402000199.html
  3. 【独自取材】 「返還請求わずか1000億円 復興予算 すでに1兆円執行済み」
       http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2013062502000129.html

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/
 


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