【リグミの解説】
「反原発国会大包囲」
昨日(6月2日、日曜)に、原発ゼロを求め、再稼働に抗議する「反原発国会大包囲」が東京・永田町で開催されました。毎週金曜日に首相官邸前や国会周辺で脱原発を訴えている首都圏反原発連合などが主催しました。参加者は、主催者発表で約6万人、警察発表で約2万5000人でした。
原発に対するスタンス:ステレオタイプのイメージ
5月27日の日経新聞に掲載された世論調査で、「安全が確認された原子力発電所の再稼働の是非」を問う質問に、「賛成だ 30%」「反対だ 52%」「どちらともいえない 9%」という結果でした(参照:
「リグミの解説」2012年5月27日)。
一般にビジネス指向の人は、火力発電に90%依存する現在の電力事情を危惧し、電気料金値上げの可能性と、燃料の海外依存のリスクを懸念する傾向が強いイメージがあります。経済界のリーダーの発言の中に、そうした傾向が顕著にみられるからでしょうか(最近の例として、読売新聞の5/26(日曜)のコラム「地球を読む」で葛西敬之・JR東海会長が原発再稼働の必要性を論じました)。
これに対して昨日の反原発デモに参加した人々は、社会活動に熱心な市民で、どちらかというアンチ・ビジネスの人々というイメージが一般的かもしれません。「ビジネス系の人=原発再稼働賛成」「アンチビジネスの人=原発再稼働反対」という図式は、あまりに紋切型にすぎるかもしれません。日経新聞の世論調査結果は、このテーマをもっときちんと調査し、熟議したいと思わせます。逆に言えば、このデータだけでは何もわからないとも言えます。
新聞の「事実報道」の違い
ステレオタイプのイメージには気をつけないといけない、と自戒しています。ただ、今の新聞を読んでいる限り、原子力エネルギー政策について国民がどう感じ、何を問題意識としているのか、少しも伝わってこないことも、一因となっていると思います。
その一例が今回の「反原発国会大包囲」の報道姿勢です。掲載の大きさ順でいくと、①東京新聞=1面2番記事(写真2枚)、②朝日新聞=社会面(37面、写真2枚)、③毎日新聞=1面4番記事(写真1枚)、④日経新聞=社会面(38面)の小記事(写真なし)、⑤読売新聞=記事なし。
全国から東京・永田町に数万人が集うデモは、かなりの規模であり、メッセージ性もあります。新聞は、まずはこの「事実」を正確に伝える義務があります。これだけ情報化が進展した現代社会でも、実は世の中で何が起きているのか、客観的で網羅的な視点(「サードビュー」)でニュースを伝えるメディアは殆ど存在しません。一方ネットの中は、玉石混淆の情報が生煮えの状態で散乱しています。未編集の混とんとして情報では、全体観をつかめません。
使命を自覚する
新聞に第1の使命は、「事実」を正確に伝えることです。その上で、第2の使命として、テーマごとに「賛成」「反対」「異論」など、さまざまな立場を並列的に取り上げ、国民が問題の全体観を持てるように工夫すべきです。
どのような政治的・社会的テーマでも、「サイレント・マジョリティー」がどう考え、行動するかがカギを握ります。物言わない大多数の人々が、「傍観者」から「当事者」に変わっていく「場づくり」をしていくこと。それは今日の「メディア」(=さまざまな人々をつなぐ存在)の大きな使命です。
新聞が、自分のスタンス(政治的メッセージ)を打ち出すのは、第1と第2の使命をきちんと果たした後に、成される第3の使命とすべきです。この3つの順番を間違えると、新聞は長い目で見れば存在理由をじわじわと失い、ビジネス的にも厳しさを増すのではないでしょうか。「国民主権」の民主主義の国家で、新聞を中心としたマスコミの健全な存立は、国民の公共財であると思います。
(文責:梅本龍夫)
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