【リグミの解説】
2つのモード
昨日、ある会合で「対話」をテーマとした組織論の講演を聞きました。そこで、ブルーナーという心理学者の理論が紹介されました。効果的な対話には、「論理実証モード」と「物語モード」の両方が必要、というものでした。昨日の本日の新聞1面記載の裁判報道を読んで、この2つのモードの大切さを感じました。
「論理実証モード」の不足
昨日の「リグミの解説」では、陸山会事件の報道姿勢について問題提起をしました。「事実を丁寧に積み上げ、多様な『ビュー』をバランスさせることで、隠された真実が浮かび上がる」報道の充実を求めました。ここでは、判決内容や司法の在り方などが「正しいのか、間違っているのか」を客観的な分析を通して追求する「論理実証モード」の大切さを示唆したといえます。
これに対して、今日の読売、朝日、毎日がトップで伝え、東京新聞が2番記事扱いとなった「成年後見、選挙権喪失は違憲」の報道は、「物語モード」の大切さを実感するものとなりました。
ダウン症などによる知的障害があり、財産管理などのために後見人を付けると、公職選挙法の規定で選挙権を失います。東京高裁は、これを違憲と判断しました。「後見人がついても選挙権を行使できる人はおり、一律に選挙権を奪うことは参政権を保障する憲法に違反する」という理由です。国側(総務省)は、「第三者の働きかけで不正投票が行われる可能性もあり、制限は必要」と主張していましたが、地裁は「選挙権を制限しなければ不正は排除できないことを、国は何ら立証できていない」と退けました(読売記事)。
「論理実証モード」から見て、各紙の報道に不足感はあります。国側の主張の具体的な根拠や論理展開が書かれておらず、唯一読売だけが「今後の対応は、訴訟を担当する法務省と協議したい」とする総務省の談話を掲載するのみだからです。
「物語モード」の片鱗
それでも、「成年後見制度」のことを知らない一読者にとって、今回の報道に意味と意義があったと感じたのは、以下のような記述を読んだからです。- 朝日: 「定塚裁判長は、『様々な境遇にある国民が、どんな施策がされたら自分たちは幸せかなどの意見を、選挙を通じて国政に届けることこそが民主主義だ』と述べた」
- 毎日: 「定塚裁判長は、ダウン症で知的障害がある名児耶(なごや)さんに対し『どうぞ選挙権を行使して社会に参加してください』と語りかけた」
- 読売: 「原告の名児耶は閉廷後、両親や弁護団と記者会見し、『うれしいです』と述べた」
毎日の記事に、裁判長の人間味を感じ、読売が引用した一言には、恐らくは多くを語ることのない原告の万感の思いを汲み取ることができました。そして、朝日が引用した裁判長の言葉は、「民主主義とは万人の幸せを実現する制度」なのだという「大きな物語」を実感させてくれるものとなりました。
2つのモードで憲法を論じる
「物語モード」は、物事が「正しいのか、間違っているのか」を論理的に詰めるのではなく、その事象に「リアリティーを感じるか」「腹に落ちるか」「共感するか」を重視します。「論理実証モード」が知性のレベルで客観的に「正しい/間違っている」を判別しよとするのに対して、「物語モード」は感情のレベルで主観的に「良い/悪い」を判断するベースを提供します。頭で理解する「論理実証モード」、腹で納得する「物語モード」ともいえます。
今、国政レベルでは憲法改正論議が盛んになっています(「リグミの解説2013.03.07)。憲法は、民主主義の根幹を保障する「軸」です。この「民主主義の軸」をどう再定義していくのかは、「論理実証モード」による客観的で正確かつ妥当な議論の積み重ねが必要です。同時に、「国民のしあわせとは何か」「命を懸けて守るべきものは何か」「基本的な権利と義務とは何か」といった心の内面に問い掛けない限り、本当の答を得ないテーマに向き合う必要があります。良き「物語モード」が国民の間に共有されていくことが大切だと思います。
(文責:梅本龍夫)
① 【司法広報】 「成年後見、選挙権喪失は違憲」
- 東京地裁は14日、知的障害がある茨城県の女性が国に選挙権の確定を求めた訴訟で、「成年後見人が付くと選挙権を失う」とする公職選挙法の規定は参政権を保障した憲法に違反すると判断、同規定を無効とし、選挙権を認める判決を言い渡した。「後見人がついても選挙権を行使できる人はおり、一律に選挙権を奪うことは許されない」とした。
② 【独自取材】 「井山、囲碁初の六冠」
- 囲碁の第37期棋聖戦七番勝負の第6局で、井山裕太本因坊が勝ち、初の棋聖を獲得した。天元、王座、碁聖、十段と共に、7大タイトルの6つを獲得、初の六冠となった。過去に名人も獲得しており、史上最年少で七冠制覇も達成。
③ 【企業広報】 「柏崎刈羽、安全対策500億円」
- 東京電力は、柏崎刈羽原発の安全対策に500億円超を追加投資する方針を固めた。原子力規制委が7月に定める新安全基準を先取りし、今夏以降の再稼働を確実にしたいため。東電は資金繰りが厳しく、原発再稼働を急がないと経営破綻のリスクが増大する事情がある。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【司法広報】 「成年後見、選挙権なし『違憲』」
- 東京地裁は14日、成年後見人が付く知的障害者らに選挙権を与えない公職選挙法の規定は憲法の反し、無効であるとの判決を下し、原告のダウン症の女性に選挙権があると認めた。定塚裁判長は、「様々な境遇にある国民が、どんな施策がされたら自分たちは幸せかなどの意見を、選挙を通じて国政に届けることこそが民主主義だ」と述べた。
② 【警察広報】 「中国実習生、2人殺害容疑」
- 広島県警によると、広島県江田島のカキ養殖業「川口水産」の作業場で2人が死亡、6人が重軽傷を負った。中国人技能実習生の陳双喜容疑者(30)を殺人と殺人未遂容疑で現行犯逮捕した。陳容疑者は、容疑を認めているという。
③ 【独自取材】 「石原宏高議員側に計1800万円」
- 自民党の石原宏高衆院議員は、大手遊戯機メーカー「ユニバーサルエンターテインメント」(UE社)と親族会社経由でコンサルティング契約を結び、2011年6月から2012年12月の契約終了時までに計1800万円を受け取っていたことが判明した。石原氏は、昨年12月の衆院選でUE社の選挙支援を受けていたことが発覚している。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【司法広報】 「後見で選挙権喪失、違憲」
- 東京地裁は14日、成年後見人が付くと選挙権を失う公職選挙法の規定は法の下の平等などを保障した憲法に違反すると判断、選挙権の確認を求めていたダウン症で知的障害のある原告の訴えを認めた。定塚裁判長は「選挙権を制限するやむを得ない理由は認められない」とし、原告に「どうぞ選挙権を行使して社会に参加してください」と語りかけた。
② 【独自取材】 「井山、囲碁初の6冠」
- 囲碁の井山裕太本因坊が14日、棋聖戦七番勝負の第6局に勝ってタイトルを取り、史上初の6冠(本因坊、天元、王座、碁聖、十段、棋聖)を達成した。これまでは張栩(ちょうう)棋聖の5冠が最高だった。井上は過去に名人も獲得しており、「7冠グランドスラム」も達成。
③ 【政府広報】 「精神障害者、雇用義務化」
- 労働政策審議会(厚生労働相の諮問機関)の分科会は14日、企業に精神障害者の雇用を義務付けることで合意した。就労希望の精神障害者は増えており、社会進出をさらに促す狙いがある。厚生労働省は、今国会に障害者雇用促進法改正案を提出する方針だ。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【企業広報】 「半導体技術、次世代へ」
- 半導体大手は、ウエハーの直径を1.5倍にすることで高性能半導体の生産効率を倍増させ、製造コストを半減する次世代技術を導入する。ニコンは、450ミリ・ウエハー(従来は300ミリ)に回路を描く露光装置をインテルから受注し、試作機を納入。2017年度をめどに量産機を納入する。
② 【政府広報】 「GDP3.2兆円拡大」
- 政府が15日に公表するTPP(環太平洋経済連携協定)参加に伴う経済効果の試算は、GDPを実質で3.2兆円(0.66%)押し上げる効果があるとする。安価な農産品流入で3.0兆円落ち込むが、消費増大(3.0兆円)、輸出(2.6兆円)、投資(0.5兆円)が補う。
③ 【政府広報】 「就職活動、大学4年から」
- 政府は、経済界に大学生の採用活動の解禁時期を4年生の4月にするよう検討を促す方針を固めた。現在の3年生の12月から4ヵ月後ろ倒しとなる。学業専念期間の延長と、海外留学生の就業機会拡大も考慮する。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【独自取材】 「米の関税維持要求のむ」
- 政府は、TPP(環太平洋連携協定)を巡る日米両政府の事前協議で、米国が乗用車を輸入する際の2.5%の関税を5年超、トラックの25%を10年超残すことで大筋合意した。米韓FTA(自由貿易協定)をひとつの基準に、それ以上の長期間の関税維持を認める内容。
② 【司法広報】 「選挙権喪失は違憲」
- 東京地裁は14日、成年後見人が付くと選挙権を失う公職選挙法の規定は憲法に違反すると判断、選挙権の確認を求めていた被後見人の原告の訴えを認めた。定塚裁判長は、「憲法が国民に保障する選挙権を制限することは原則として許されず、やむを得ない理由がある極めて例外的な場合に限られる」と述べた。
③ 【独自取材】 「『国家超えた創作続ける』」
- 昨年のノーベル文学賞受賞者の中国人作家、莫言(ばくげん)氏は東京新聞の取材に対して、「作家に国籍はあるが作品に国境はない。国家を超えた文学の創作が、私の作家としての最低ライン。あくまで人の立場に立った創作を続ける」と語った。「体制内作家」との一部海外メディアから批判に反論した格好だ。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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