【リグミの解説】
3.11の報道姿勢
本日の新聞1面は、2年経った3月11日を、日本人がどう迎えたかを伝えています。印象として、マスコミはテレビを含め、昨年よりも3.11報道に力を入れています。1年目は、起きたことを振り返るだけで精一杯だったのが、2年経つことで、天災と人災がもたらしたものの重さと深さをより実感しつつあるからでしょうか。記事の多くは、個々の被災者の心情に分け入るものとなっています。
3.11ストーリー- 読売新聞は、天皇陛下の御言葉を伝えています。「苦しみを分かち合う」。被災者や被災地に対して、普段何もできなくても、同じ日本人として気持ちを分かち合うことはいつでもできます。
- 朝日新聞は、若くして妻子を亡くした男性と、多くの消防団員を亡くした消防団長の思いを伝えています。何ための生きているのか、亡くした人々に対する申し訳なさ。
- 毎日新聞は、「悲しみは一生消えない」と涙する男性の姿を映しています。同時に政府追悼式で、亡くなった妻が「前に向いて欲しい」と語りかけていると感じた遺族男性のあいさつを報道。
- 日経新聞と東京新聞は、政府追悼式で遺族代表挨拶をした高校3年生の女子の言葉「あれから少し強くなりました」を紹介。
ひとくくりにできない現実
3月11日は、重く深い震災の現実を見つめ直し、同時に未来への希望を見つけだそうとする日。新聞各紙に共通するスタンスです。東京新聞は同時に、福島から避難している家族の間で、離婚危機が増えている実態も伝えています。時間が経っても解決せず、事態がより深刻化することもあります。被災者の現実は、一人ひとりの現実であり、決して「被災者」や「被災地」という言葉でひとくくりにできるものではありません。
時間の旅
それでも私たち全員が共有する現実があります。それは、「今」という同じ時間を一緒に生きているという現実です。死者は亡くなった過去に留まっていると思われがちですが、死者もまた「今」を共に生きています。なぜなら、生き残った者たちが、死者を記憶の中に蘇らせ続けるからです。
ここに時間の魔法があります。私たちは決して過去には戻れない。死者は取り戻せないし、過去をもう一度やり直すこともできない。しかし、いやでも前へ前へと押し出されていくのが時間の旅の最中に、何かが変わる瞬間があります。死者が新しい言葉を語りかけてくる瞬間が、かならずやってきます。
「今」のテーマ
神話の世界観が機能していた時代には、死者と生者はひとつながりでした。現代は、生と死が絶対的に分断されています。それでも人々は、手を合わせることで、分断されたものをひとつに戻せることを無意識的に記憶しています。このままでは終わらない。かならず被災地は新しい姿に生まれ変わる。そんな「再生」の物語は、私たちの内側で創られ、外側の現実を変えていきます。
これからも毎年巡ってくる3.11をどう迎えていくのか。それは「今」のテーマです。生き残った者の責任とは、「今」を精一杯生き、心の底から楽しみ、命の無限の可能性を引き出すことです。「今」が永遠の輝きを放つ瞬間は、かならずやってきます。それこそが死者への何よりの弔いです。
(文責:梅本龍夫)
① 【独自取材】 「集団移転、用地8割めど」
- 東日本大震災で被災した岩手県、宮城県、福島県の沿岸市町村で、国の防災集団移転促進事業の活用を計画している25市町村のうち21市町村が読売新聞の調査に回答。移転先の用地確保率は、岩手県7市町村69%、宮城県11市町83%、福島県3市町71%、合計78%―。
② 【独自取材】 「鎮魂、復興、思い新た」
- 政府主催の東日本大震災追悼式で、天皇陛下は「困難に耐えている被災者の姿には、常に深く心を打たれ、この人々のことを、これからも常に見守り、この苦しみを、少しでも分かち合っていくことが大切だとの思いを新たにしています。被災者一人びとりの上に一日も早く安らかな日々の戻ることを共に願い、御霊(みたま)への追悼の言葉といたします」と述べられた。
③ 【政府広報】 「辺野古、月内にも申請」
- 政府は11日、米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古沿岸部への移設に向け、埋め立て許可の申請を仲井真知事に29日にも申請する方針を固めた。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【独自取材】 「妻と息子の人生の続き、私が歩んでいこうと思う」
- 政府主催の東日本大震災追悼式で、遺族代表の西城卓哉(32)は、7ヵ月の息子の直人ちゃんと妻由里子さん(当時27)を亡くした。「ひとつだけ確かなことは、あなたがいた私の人生は幸せだったということです。自分に残された年月をかけて、愛する2人の人生の続きを、私が歩んでいこうと思います」。
② 【独自取材】 「原発要員計画が破綻」
- 東京電力福島第原発で働く作業員の要員計画が破綻していることが判明した。違法な偽装請負状態で働く人が約半数に上る疑いが浮上、適法な作業員が不足している。偽装請負に依存しない計画に改善できるかが焦点となる。
③ 【独自取材】 「消防団、仲間の死を胸に」
- 岩手家の大槻町の慰霊祭で、町の消防団長だった煙山佳成さん(74)は「わが身を顧みなかった団員を思うと、痛惜に耐えません」とあいさつ。その声は震えていた。団員217人のうち14人が殉職した。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【独自取材】 「今も枯れぬ涙」
- 東日本大震災の津波で亡くなった次女の菅井恵美さん(当時31)夫婦の自宅跡(宮城県名取市閖上)で、田所寿雄さん(65)は祭壇を作り、涙を拭った。そして、「この悲しみは一生消えません」とつぶやいた。
② 【政府広報】 「放射線監視、国主導に」
- 原子力規制委員会の有識者会合は11日、原発事故時の放射線量の監視などに関して、国主導でモニタリングセンターを設置する方針を固めた。現在は、立地道府県や事業者が実施することになっているが、測定データの回収に手間取ったり、消去したりする問題が発覚したため、国が前面に出て調整することにした。
③ 【独自取材】 「それでも一歩一歩前へ」
- 政府主催の東日本大震災追悼式で、福島県の遺族代表を務めた南相馬市の八津尾初夫さんは、「現実を受け止め、一歩一歩歩んで行く」と、津波で犠牲になった妻一子さん(当時58歳)に誓った。前を向いてほしい。妻はそう望んでいると思い、選んだ言葉だった。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【企業広報】 「新日鉄住金、高炉休止へ」
- 新日鉄住金は、君津製作所の高炉1基を休止する方向で最終調整に入った。新日本製鉄と住友金属の合併に伴い、過剰設備の削減に入る。今月末予定だった和歌山製鉄所の新設高炉の稼働も延期する。高コストの国内生産を効率化し、国際競争へ向け体質強化を図る。
② 【独自取材】 「『未来へ、若者が行動』」
- 政府主催の東日本大震災追悼式で、遺族代表挨拶をした高校3年生の山根りんさん(18)は、一緒に津波に流された母(当時42)を亡くした。「あの日より少しだけ強くなった。生きて人の役に立つことが使命と考え、震災が未来の記憶となるよう、被災地から若い世代が行動していく」と山根さんは表明した。
③ 【政府広報】 「太陽光、偏重見直し」
- 政府は、再生可能エネルギーの価格政策を見直す。太陽光発電の急拡大を支えてきた買い取り価格を2013年度から約1割下げる。風力や地熱発電の買い取り価格は据え置き、再生エネ全体のバランスを図る。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 ① 【独自取材】 「あれから少し強くなりました。亡くなった母への思いと、多くの支えがあったから。」
- 政府主催の東日本大震災追悼式で、岩手県の遺族代表の県立宮古商業高校3年の山根りんさん(18)は、津波で母ゆかりさん(当時42)を亡くした。今は父親と2人暮らしだが、4月からは埼玉県内の大学に進学する。震災で海外からの支援を体験した山根さんは、将来は国際関係の仕事に就きたいと考えている。
② 【独自取材】 「『原発事故は人災』」
- 福島県の住民や避難者ら1650人が、東京電力福島第1原発事故で平穏な生活を奪われたとして、国と東電を相手に計約53億6千万円の損害賠賠償や原状回復を求めて4つの地裁・地裁支部に集団提訴した。原告団は、「原告らが求めているのは、もとの美しい福島を返せという住民の叫びそのものだ」と強調した。
③ 【連続企画】 「避難ストレス、壊れる夫婦 ~放射能がなかったら(2)」
- 放射能への危機感の違いから夫婦の間に亀裂が生じ、幼子を抱えた母親が孤立する。福島県の菅波香織弁護士のもとに寄せられる離婚相談は、最近4~5割増えている。除染は進まず、避難家族が帰還するめどが立たない。夫婦関係が継続している家族も、二重生活の経済負担が重くのしかかる。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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