【リグミの解説】
陸山会事件の高裁判決
「マスコミ報道は、公正中立であるべきか」。もし世論調査でこの質問をすれば、国民の大半が「そう思う」と答えるのではないでしょうか。しかし「公正中立」をどう具体的に実現するかについて、自覚的な国民は多くないのかもしれません。本日の新聞1面で大きく取り扱われた「陸山会事件の高裁判決」の各紙の記事を見て、そう感じました。
まず初めに、小沢一郎氏を政治家としてどう評価するか、また本件で無罪確定している事実をどう判断するかは保留します。元秘書ら3人が公職選挙法に抵触する行為をしたのかどうかについても、判断を控えます。理由は単純です。新聞報道を読んだだけでは、判断できるだけの客観的な情報が得られないからです。各紙の報道内容について、形式要件を見ていきます。
- 読売: 1面で高裁判決内容を記述、陸山会事件について補足説明。社説で政治家・小沢一郎の責任を指摘。社会面で裁判の様子を報道。
- 朝日: 1面で高裁判決内容を記述、石川被告のコメントを紹介。社説で政治家・小沢一郎の責任を指摘、同時に強引な取り調べや事実と異なる捜査報告書の問題を併記。社会面で陸山会事件について補足説明し、小沢氏の政治責任をあらためて指摘。同時に、石川氏側の反論を取材。さらに小沢氏の判決へのコメント文書の全文を掲載。
- 毎日: 1面で高裁判決内容を記述、陸山会事件について補足説明。社会面で石川被告の判決への反応を報道。小沢氏のコメントの概要を紹介。政治アナリストによる小沢氏批判コメントを引用。そして規制法構造で小沢氏と石川氏らの判決に差が生じたことを解説。
- (日経と東京は1面記事でないので省略)
「サードビュー」の不足
こうして比較すると、読売は事実上、裁判所の立場(「ファーストビュー」)のみから報道、朝日は読売同様に判決は妥当との立場ながら、被告側の主張(「セカンドビュー」)も紹介、毎日は読売と朝日の中間的な立場、という整理になります。3紙を読む限り、石川氏らの有罪は確定的であり、小沢氏もグレーで道義的責任は免れない、という点で一致。「推定有罪」という印象を受けます。事実そうであるかもしれません。そうでないかもしれません。
「そうでないかもしれない」と感じたのは、朝日が紹介している小沢一郎氏の反論コメントの全文を読んだからです。小沢氏はコメントの最後を「法と証拠に基づく法治国家の裁判の原則を自ら踏みにじる行為であり、民主主義国家においては絶対あってはならないことです。それがまかり通ることに、強い憤りと深い悲しみを覚えます」と結んでいます。この内容は、政治家・小沢一郎の裁判戦略、広報活動の一環に過ぎないのでしょうか。全体を俯瞰する「サードビュー」が不足している感は否めません。
歴史のファーストドラフト
マスコミの「公正中立」が本当に重要なのだとすれば、マスコミは予断で記事を書いてはいけないことになります。学術論文のように、様々な文献などを調べ、引用を明記し、事実や論を積み重ねる地道な努力をしなければなりません。しかし、新聞とは「新しく聞く」と書き、英語のニュース(News)は「新しい」の複数形です。新鮮なネタを速報することに価値を置くマスコミは、意図するとせざるにかかわらず、限定された情報、偏った見方で報道する可能性があります。
一方で新聞には、「調査報道」という手法があります。「新しさ」ではなく、「事実の積み重ねによって、真実を浮上させる」ジャーナリズムのもうひとつの価値です。「ジャーナリストの使命は、歴史のファーストドラフトを書くこと」という考え方があります。「公正中立」とは、何か。事実を偏りなく集め、バランスよく比較し、そこから浮上してくるものを虚心坦懐に見つめる。時間がかかり、労多くして益少ないこの地道な活動をするからこそ、私たちは、真実を知ることができることを思い出す必要があります。
(文責:梅本龍夫)
① 【独自取材】 「TPP交渉7月にも合流」
- 日本は、TPP(環太平洋経済連携協定)の交渉に7月にも合流する見通しとなった。5月と9月に加え、7月にも交渉会合の開催が検討されていることが明らかになったため。安倍首相は、15日に交渉参加を正式表明する。その際に、TPP参加の経済効果や農業への影響などの試算も公表する。TPP担当相に甘利経済再生相を任命する方向。
② 【司法広報】 「元秘書3人、2審も有罪」
- 東京高裁は13日、小沢一郎・生活の党代表の資金管理団体「陸山会」の土地取引をめぐる事件で、元事務担当者・石川知裕衆院議員ら元秘書3人の控訴審への判決で、いずれも有罪とした1審判決を支持し、元秘書側の控訴を棄却した。飯田裁判長は、石川氏らに「4億円を隠蔽する悪質な虚偽記入」があったと批判した。
③ 【政府広報】 「倒産急増防止へ監視継続」
- 政府は、中小企業金融円滑化法が今月末で期限切れとなることに伴い、中小企業の資金繰り支援のための新たな対応策を取る。4月以降の倒産急増を防ぐため、行政による監視強化や指導により、同法の大枠を維持する。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【独自取材】 「石原宏高議員側が運動員要請」
- 自民党の石原宏高衆院議員側は、昨年の衆院選で大手遊戯機メーカー「ユニバーサルエンターテインメント」に支援を要請し、同社社員に選挙運動をさせていた。同社は社員3人を派遣し、給料も支払っていた。公職選挙法違反(運動員買収)に問われる可能性が出てきた。
② 【独自取材】 「春闘回答、春の兆し」
- 今春闘で大手企業が賃上げに動いており、安倍政権が求める「所得増」の兆しが見え始めた。自動車では、トヨタ、日産、ホンダ、スズキ、三菱がボーナス満額回答。小売では、セブン&アイとニトリがベースアップ実施、ローソンとファミリーマートがボーナス増。
③ 【司法広報】 「小沢氏元秘書、再び有罪」
- 東京高裁は13日、小沢一郎氏の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡り、石川知裕衆院議員ら元秘書3人の控訴審への判決で、元秘書側を有罪とした1審判決を支持し、元秘書側の控訴を棄却した。石川氏が水谷建設から5千万円の裏金を受け取ったことも、一審同様に認めた。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【政府広報】 「TPP、自民了承」
- 自民党のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)対策委員会は13日、政府の交渉参加を容認する決議を行った。農林水産分野の「重要5品目」(コメ、麦、牛肉・豚肉、乳製品、サトウキビなど甘味資源作物)や国民皆保険制度などの聖域確保を最優先するよう求め、それが困難な場合は「脱退も辞さないものとする」とする。
② 【司法広報】 「小沢氏3元秘書、控訴棄却」
- 東京高裁は13日、小沢一郎・生活の党代表の資金管理団体「陸山会」の土地取引を巡り、石川知裕衆院議員ら元秘書3人が政治資金規正法違反(虚偽記載)に問われた事件の控訴審への判決で、元秘書側を有罪とした1審判決を支持し、元秘書側の控訴を棄却した。飯田裁判長は、3人が故意に虚偽記載したと追認した。
③ 【政府広報】 「ネット選挙改正案提出」
- 自民党、公明党、日本維新の会は13日、インターネットによる選挙運動を解禁する公職選挙法改選案を共同で衆院に提出した。民主党とみんなの党は、メール使用を全面解禁する対案を提出。与野党の修正協議を経て、早ければ月内にも成立する見通し。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【独自取材】 「決算公表前の情報入手」
- 上場会社20社余りの重要情報が、公表直前にインターネット上で投資家らに閲覧されていた。投資家らは、公表に備え自社ホームページの管理サーバーに保存された重要情報にアクセスし、公表前後の株式売買で数百万円の利益を得たケースもあった。企業側の情報管理の徹底が急務となっている。
② 【政府広報】 「準正社員、採用しやすく」
- 政府は、6月にまとめる成長戦略の柱として、職種や勤務地を限定した「準社員」の雇用ルールを作成する。賃金を抑制し、事業所閉鎖時に解雇しやすくする。準社員は、正社員の賃金水準の8~9割。無期雇用で社会保険にも加入できるため、パートや派遣などの非正規雇用より生活が安定する。
③ 【連続企画】 「日本の将来創る原資に ~年金消失、AIJの教訓(下)」
- 厚年基金の役員の多くは母体企業の経営者が掛け持ちで務め、基金は運用報告を聞くだけ。そんな基金運営の隙をAIJは巧みに突いた。10年後に厚年基金制度が実質廃止されるまでの過渡期に、規模のメリットを追求し、運用のプロを雇う一括運用の構想も浮上している。年金資金を上手に運用すれば、日本経済の将来を創る原資となる。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【独自取材】 「コメ事前協議なし」
- TPP(環太平洋連携協定)を巡る日米の事前協議で、コメなどの農産品の輸入への関税維持はこれまで議論されておらず、今後も取り上げない見通しであることが判明した。自動車と引き換えにコメなどの農産品を守るという日本の当てが外れる可能性がある。
② 【政府広報】 「自民、交渉入り容認」
- 自民党は13日、TPP(環太平洋連携協定)を議論する対策本部で、コメなど農林水産分野の重要5品目や国民皆保険制度などの「聖域」扱いを安倍首相に求めることを決議。交渉参加を容認した。首相は、15日に交渉参加を表明する。
③ 【独自取材】 「25人の不合格に影響か」
- 千葉県我孫子市の教育委員会は13日、市立白山中学校が今年の高校入試の際に作成した内申書に誤りがあったと発表した。3年生257人中115人の内申書に誤りがあり、97人は本来より低い成績となっていた。うち25人は受験したいずれかの高校で不合格になっており、記載ミスが合否に影響した可能性がある。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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