2013.03.11 mon

新聞1面トップ 2013年3月11日【解説】3.11からの再生

新聞1面トップ 2013年3月11日【解説】3.11からの再生


【リグミの解説】

3.11再び
東日本大震災から2年経ちました。「あの日」、日本人はどこで何をしていたか。一人ひとりの命の一瞬が、その日その時、輝いていました。新聞各紙は、大震災の被害規模を
報道しています。死者1万5881人、行方不明者2668人、震災関連死2554人、避難者31万5196人。生死を分けたものを「運命」の一言で片づけるには、あまりにも過酷なものがあります。天災に人災が重なった3.11は、2年が経っても大きな傷跡は癒えず、災害の影響は「現在進行形」です。

「3.11の今」を各紙はどう捉えているのか。社説のタイトルを比較します:

読売: 「政府主導で復興を加速させよ 安心して生活できる地域再生を」
朝日: 「もう一度、共有しよう 原発、福島、日本」
毎日: 「事故が再出発の起点だ 震災から2年、原発と社会」
日経: 「福島の再生へ現実的な工程表を 東日本大震災2年」
東京: 「後退は許されない 3.11から2年」


現実を見る
5紙それぞれに問題意識をもって3.11の社説を書いていますが、書いてある内容は客観的に理解できても、心に響かないものもありました。天災としての地震・津波と、人災と
して原発事故の関係を分け、正しく追求するのがジャーナリズムの使命であるのはずなのに、その基本を忘れたかのような新聞があるのは、残念です。原発事故の「原因責任」を明らかにし、相応の償いをしない限り、人災の現実は完了しません。3.11を、「誰も責任を取らない国」を象徴する日にしてはならないと思います。

東日本大震災の27年前の1984年3月11日に、宮崎駿監督の『風の谷のナウシカ』が劇場公開されました。巨大文明が滅びた後の世界の再生と救済を描く物語と、現代文明を象徴する原子力発電所が崩壊した映像は、既視感のようにつながります。朝日新聞の社説に、「バリバリの原発推進派」だった福島県の自民党議員の言葉が載っています。

「『原発は必要』という人ほど事故後の福島を見に来ない。自分で3号機の前に立ってみろ。そしたら再稼働なんて簡単に言えなくなる」。

日本の現実の当事者になる
朝日の社説は、浪江町の住人の声も紹介しています。

「電力会社が悪い、国が責任を果たせって言えるのは僕らが最後かもしれません。今度どこかで事故が起きたら『福島のことを知ってて原発を受け入れたんでしょ。自己責任です』と言われておしまいになりかねない」。
 
27年前、私たちは『風の谷のナウシカ』を架空の物語として観ました。東京電力福島第1原発の事故現場は、紛れもない現実です。1945年に焦土と化した東京や広島、長崎を見て、「自己責任」を自覚した日本人はどれほどいたのでしょうか。戦争を遂行した責任者たちは、どうだったのでしょうか。

日本には、あまりにも「記録」がありません。そして「記憶」は簡単に風化し、変節していきます。1945年8月15日と2011年3月11日を、日本人は「記録」し続け、「自己責任」の意味を問い続ける必要があります。巨大文明が滅びるのは、決してアニメの世界だけのことではありません。

崩壊は内部で始まり、それが次第に外部を侵食していくもの
です。2つの敗北を、犠牲者としてでなく加害者として省みる真摯で誠実、かつ正確で冷静な姿勢。日本人が日本の現実の「当事者」になるとは、そういうことだと思います。3.11からの再生は、日本人全員が参加する真実の物語です。

(文責:梅本龍夫)





① 【政府広報】 「『20ミリ・シーベルト帰還』へ安全指針」

  • 政府は、東京電力福島第1原発事故による避難者の帰還に向けた安全指針を年内に作る。震災後に、年間積算線量1ミリ・シーベルト以下に下げるとした長期的な除染目標が事実上の安全基準と受け取られ、帰還の障害となっているためだ。線量の段階ごとに、安心して暮らせるために必要な対応策を示す。


② 【独自取材】 「『復興』実感するために」

  • 3.11がまた巡ってきた。津波の被害を受けた沿岸部は、時間の経過に見合うほどの変化を被災者は実感できていない。石の上にも3年は、我慢は3年が限界という解釈もできる。今日からの1年は重い。


③ 【独自取材】 「日本、決勝ラウンド進出」

  • 第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)の東京2次ラウンドで、日本代表がオランダに16-4で7回コールド勝ちし、決勝進出を決めた。


(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【独自取材】 「区切りじゃない、忘れない」

  • 宮城県石巻市の大川小学校では、児童と教職員計84人が死亡・行方不明となった。「ここの捜索が終われば『区切り』になってしまうのだろうか。時間がたてばたつほど、つらくなる」。大川小で行方不明となった子の帰りを待つ男性は言う。


② 【世論調査】 「家再建『未定・断念』3割」

  • 岩手県、宮城県、福島県の被災者やその保護者約1000人のアンケート調査をし、約699人の回答を得た。津波で持家が被災した人416人のうち、「再建をあきらめて土地を手放す(した)」人が13%、「まだどうするか決められない」が17%―。最も大きな理由は、「二重ローンになる」「年齢的に新たなローンを組むのが難しい」が計57%―。


③ 【解説記事】 「復興『自分のこと』として」

  • 東北は日本の未来の縮図だ。人が老いていき、減っていき、社会保障も財政も屋台骨がゆらぐ。東北の復興に向け、日本が戦後ずっと未解決としてきた問題が透けて見える。東京一極集中、原発・エネルギー政策、国と地方の主従関係、省庁の縦割り、公共事業への依存―。3.11で何が変わったのか。「わがこと」として考える。


(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【独自取材】 「東日本大震災2年」

  • 東日本大震災の犠牲者は、3月8日現在で死者1万5881人、行方不明2668人。関連死を含めると、2万人以上が犠牲になった。避難者は31万5196人(復興庁、2月7日現在)。復興は徐々に進むが、復興格差も目立ってきた。福島県は、除染が遅れ、避難住民の帰還は遅々として進まない。


② 【独自取材】「涙の後の道しるべ」

  • 福島市の主婦、橋本幸枝さん(35)は、2年前の大震災の日、病院から避難した車の中で産気づき、次女の栞(しおり)ちゃんを産んだ。2歳になった栞ちゃんは、外出するとき、公園の砂場や落ち葉、道の石ころに触れないように気を使う。「3月11日を祝えない人もいるかもしれない。でも、親としては誕生日は大事にしたい」。


③ 【独自取材】 「侍ジャパン4強」

  • 第3回ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)2次ラウンドで、日本代表がオランダに16-4で7回コールド勝ちし、準決勝進出を決めた。侍たちが3たび海を渡る。


(毎日jp http://mainichi.jp/
 





【① 【独自取材】 「政策空回り、復興に格差」

  • 東日本大震災から2年、被災地の復興の速度や中身に格差が目立ってきた。復興の主な進捗:▽通信99%、▽電気96%、▽鉄道89%、▽三陸海岸の水揚げ量63%、▽土地区画整理60%、▽水道施設46%、▽がれき処理44%、▽農地38%、災害公営住宅(用地確保)27%、▽堤防など海岸対策(着工)26%―。


② 【企業広報】 「サウジで汚染監視」

  • 富士通は、サウジアラビアの工業団地で、大気や水質の汚染監視事業を開始する。団地の工場の煙突や排水口にセンサーを設置し、データを収集・分析し、環境規制の設計に役立てる。


③ 【独自取材】 「中国、海洋局の権限強化」

  • 中国政府は10日、開催中の全国人民代表大会で、国務院(政府)の機構改革案を提示した。国家海洋局の権限を強化する。国家海洋委員会も新設し、海洋戦略の策定と調整に当らせる。尖閣諸島をめぐる日本との対立や、南シナ海での周辺国との摩擦に対応する狙いがある。


日経Web刊 http://www.nikkei.com/

 





① 【独自取材】 「原発関連死789人」

  • 東京新聞は、東京電力福島第1原発事故に伴う避難やストレスによる体調悪化などで死亡したケースを「原発関連死」と定義し取材したところ、少なくとも789人に上ることが判明した。震災関連死の認定数は、被災3県の中で福島が突出している。影響が長期化しているのも福島だ。原発事故は、収束していない。


② 【連続企画】 「田畑と犬奪われ、逝った父 ~放射能がなかったら(1)」

  • 福島県いわき市の仮設住宅に避難している大和田晴美さんの父は、お笑い芸人のようにひょうきんだった。愛犬2匹のうち1匹は置き去りにした。高齢で弱った2匹目も、一時帰宅の時に庭に離した。父は除染の仕事に就いた。田畑を耕す震災前の生活とはまるで違った。銀行の窓口で心臓破裂となり亡くなった。「田畑も愛犬もみんな捨てさせられ、どんなつらい思いで死んでいったか。責任ある人には頭を下げてほしい」。昨夏、震災関連死と認められたが、東電関係者が弔問に訪れることはない。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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