【リグミの解説】
上部構造と下部構造
経済という土台(下部構造)があることで、政治という建物(上部構造)が成り立つという考え方があります。カール・マルクスは、「上部構造は下部構造に規定される」と考えました。ソビエト連邦が崩壊し、中国が経済開放路線を取ったことで、マルクス主義は、政治経済理論としての有効性をすっかり失いました。それでも、マルクスが指摘した上部構造と下部構造の関係性は、2010年代の世界で、依然として機能しているように見えます。
本日の新聞1面は、経済関連の記事が目立ちます。「NY株市場最高値」は、読売2番記事、毎日2番記事、日経3番記事です。「TPP自動車は例外」が、毎日のトップ記事で、日経の2番記事です。国内企業に目を転じれば、「経営再建中のシャープに韓国サムスンが出資」と朝日と日経がトップで、毎日が2番で扱っています。また朝日は、「トヨタ国内生産300万台割れ計画」を3番目に持ってきています。
リーマン・ショック
まず、ニューヨーク株式市場が最高値更新という記事に驚きます。減税と規制緩和で企業活動を後押しする新自由主義的な経済政策に、ITイノベーションが重なり、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」と浮足立ち、あえなく失速した日本と攻守交代するように、米国経済は力強い復活を遂げました。しかし、バブル景気の天井とどん底を体験した日本から見れば、1990年代以降の米国経済の復興は、常にバブルの危うい要素をはらみながら成長を続けてきました。投資のプロでない普通の勤め人が、自分の年金のポートフォリオの大きな比率に株式を入れる様子に、その予兆を見た思いがしたものです。
実際の米国の好景気は、予想を超えて長期の上昇トレンドを続けました。複雑な金融工学を駆使したデリバティブなどのリスク分散手法により、破産リスクの高い普通の生活者がローンを組んで次々と住宅購入を進めるようになった結果、世界中を駆け巡るマネーの中に織り込まれたリスクレベルは、誰も理解できないほど複雑化しました。
そして2008年9月にリーマン・ブラザーズが破綻したことをきっかけに、グローバル経済は、パニック状態に陥りました。それは、日本が「失われた20年」に苦しんでいた同じ20年間続いた「熱狂の時代」の終わりを意味しました。
新しいバブルの可能性
そのニューヨーク市場が、わずか4年半で再び活況を呈しています。問題は、破綻したリスクマネジメントの手法の問題点の究明と再発防止策を、政治主導で成し遂げたという話をまったく聞かないことです。いろいろな試みが続けられた結果、経済は再び成長軌道に乗りつつある。その期待感に株式市場が反応する。そこには、骨太のロジックや深い洞察はありません。「集合的な期待感」のうねりがすべてです。政治ができることは、この期待感が過剰になったり、しぼんでしまったりしないように、微調整をすることぐらいです。
安倍首相は、TPP交渉参加に関連する民主党議員との国会答弁で、「政治は結果がすべてだ」と発言しました(「リグミの解説」2013.03.04)。昨年末の衆院選で自民党が圧勝した理由が、主に有権者が「経済再生」を優先したことと合わせて考えると、日本経済が力強い回復基調に乗れば、自民党政権が再び長期化する可能性は十分にあります。シャープやトヨタの記事のように、現段階の日本企業の状況はまだ苦境脱出の途上ともいえます。企業業績が盤石となり、雇用が増え、基本給が上がれば、確かに「結果よし」とも言えます。
全員参加のシステム思考
「上部構造と下部構造」の関係は、「導きと支え」と考えることができます。経済という土台が国家を「支える」ことで、政治という建物が国民を快適な状況に「導く」ことができる。しかし、政治が真に賢明であり、広範囲に起きること、長い時間をかけて生じる変化を見据える「システム思考」を持ちえない限り、政治の「導き」は、国家を迷走させ、経済は国家を「支える」ことをあきらめます。
21世紀の政治経済の大きなテーマは、「上部構造と下部構造は、互いを規定し合う有機的なシステムである」ことを深く理解することです。そして、大きな視点(空間的な広がり)と長い視点(時間的な経緯)で、国家の在り方を構想する必要があります。その際に忘れてならないのは、経済活動は、一人ひとりの人間の行動の集積だということです。
であれば、生活者みずからが「当事者」としてシステム思考に参加すること、そしてみなで知恵を出し合う国家こそが、健全で強いことになります。「フォロワー(国家の土台を支える生活者)がリーダ(国家を導く政治家)を選ぶ」時代です。
(文責:梅本龍夫)
① 【独自取材】 「東京五輪支持上昇70%」
- 国際オリンピック委員会(IOC)は、2020年オリンピック招致に関連し、市民を対象とした調査で、東京のオリンピック開催支持率が都内で70%となったと発表した(全国は67%)。昨年5月にIOCが行った調査では47%だった。支持率の改善は、東京開催の追い風となりそうだ。
② 【独自取材】 「NY株、史上最高値」
- ニューヨーク株式市場は5日、ダウ平均株価が急伸し、一時1万4285.52ドルをつけ、取引時間中の最高値(1万4198.10ドル)を約5年5ヵ月ぶりに更新した。日米の金融緩和により株式市場に資金流入するとの見方や、欧州や中国の景気後退懸念が薄まり、世界景気の回復期待が高まっていることなどが要因。
③ 【連続企画】 「土木系職員が足りない ~復興はいま(6)」
- 東日本大震災で被災した岩手県、宮城県、福島県の49市町村が応援派遣要請をしている職員数は計1490人。うち、土木、建築など技術系職員は640人の要望があるが、確保見込みは347人にとどまる。公共事業削減で、全国の自治体の土木系職員が減っているため、派遣したくても余裕がない実情がある。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【企業広報】 「シャープにサムスン出資」
- 経営再建中のシャープは、韓国のサムスン電子から100億円規模の出資(出資比率約3%)を受ける方向で最終調整に入った。シャープは、液晶パネルを優先的にサムスンに供給する業務提携も打診している模様だ。
② 【連続企画】 「被災地、未来の縮図 ~3.11後、日本は(上)」
- 財政難の中、日本は今後40年で人口が4分の3に減り、高齢化率は40%に迫る。インフラの維持費を押えるコンパクトシティーづくりが、ひとつの解決策であり、被災地の復興でも取り組みが進む。宮城県宮元町では、機能集約化の「大手術」に踏み切ったが、町主導による計画推進に戸惑う住民の姿もある。
③ 【企業広報】 「トヨタ、300万台割れ計画」
- トヨタ自動車は、2015年の国内の生産台数を270万台に減らす方針を固めた。消費増税が一因と見られる。トヨタは従来、生産技術を守るために300万台程度の国内生産が必要と説明してきたが、ものづくりの最低ラインの旗をいったん降ろす。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【政府広報】 「TPP、自動車は『例外』」
- 日本のTPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉参加を巡る日米の事前協議で、米国の輸入車への関税を当面据え置く方向で両国政府は最終調整している。交渉参加の最大の懸案だった自動車関税に関する協議が決着の方向になったことで、安倍首相は交渉参加を表明する意向を固めた。
② 【企業広報】 「シャープ、サムスン提携」
- 経営再建中のシャープは、韓国のサムスン電子から100億円前後の出資(出資比率約3%)を受け入れる司法業務提携をする方向で最終調整に入った。シャープは、財務体質の改善と、液晶パネル工場の稼働率向上で業績に回復を目指す。
③ 【独自取材】 「NY株、史上最高値」
- ニューヨーク株式市場は5日、一時1万4200ドルを超え、取引時間中の最高値(1万4198.10ドル)を上回った。この水準で推移すれば、終値ベースでも約5年5ヵ月ぶりに史上最高値(1万4164.53ドル)を更新する。米国の財政面への不安要素は根強いが、住宅市場の回復など米経済の回復ペースは徐々に上がると市場は見ている。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【企業広報】 「シャープにサムスン出資」
- 経営再建中のシャープは、月内にも実施する第三者割当増資により、韓国サムスン電子から約100億円の出資(出資比率約3%)を受け入れることで合意した。今回の提携は、日韓の電機大手による長年のライバル関係を超えるもので、生き残りをかけた新たな国際提携の呼び水となる可能性もある。
② 【政府広報】 「TPP、車関税で日米合意」
- 日本のTPP(環太平洋経済連携協定)交渉参加に向け、日米両政府は、米国の日本車輸入への関税を当面維持し、日本への米国車輸入の手続きを簡便化することで大筋合意した。自動車分野の協議にめどがついたことで、安倍首相は来週にも交渉参加表明をする。
③ 【独自取材】 「NY株、一時最高値」
- ニューヨーク株式市場は5日、ダウ工業株30種平均が続伸し、過去最高値(2007年10月9日の1万4164ドル)を一時上回る1万4200ドル台をつけた。日米の積極的な金融緩和により、余剰資金が株式市場の流入するとの期待が相場を下支えしている。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 ① 【独自取材】 「母の熱意でまた一歩」
- 東京都杉並区は、認可保育所の不足問題で、公表済みの既存の認可保育所の受け入れ枠の拡大に加え、新たに3施設を来年4月に設置する緊急対策を区議会に示した。子供を認可保育所に入れることを求める母親たちの熱意が、行政をまた一歩動かした。
② 【独自取材】 「身近に迫る危険・騒音」
- 米軍のMV22オスプレイの低空飛行訓練が、6日から本土で実施される。既に配備済みの沖縄では、できる限り避けることになっている学校や病院、人口密集地の上空での飛行や夜間訓練の目撃が続いており、安全性への不安が高まっている。新たに訓練ルートとなる本土の自治体や住民からは、怒りの声が上がっている。
③ 【独自取材】 「大田区でも異議」
- 希望しても認可保育園に入れない問題で、東京都大田区の複数の夫婦が、区に対し行政不服審査法に基づく異議申し立てを7日に予定している。認可保育所の入所に関連する集団異議申し立ては、杉並区、足立区に次いで3件目となる。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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