【リグミの解説】
大震災関連の世論調査
東日本大震災から2年が経とうとしており、各紙は震災特集を繰り返しています。本日の1面では、読売、朝日、毎日の3紙がそろって、被災地の世論調査などに関する記事です。
読売は、国や町が実施したアンケート調査で、福島第1原発周辺の自治体で4割を超える住民が「戻るつもりはない」と回答していると報じています。「除染、賠償が進まず、帰還目標が立てられない」(飯館村)、「原子力プラントの安全性に不安があり、住民の将来の将来の人生設計が立てられない」(浪江町)という自治体の声が寄せられています。
「元の暮らし」にいつ戻れるか
朝日は、福島放送と共同で世論調査を実施。福島全体で元のような暮らしができるのは「20年より先」と答えた人が60%に上りました。これは、「5年ぐらい」「10年ぐらい」「20年ぐらい」と合わせた4択問題であり、最大値を選んだ人が圧倒的に多かったというものです。この60%の少なくない部分が、「永遠に元に戻らない」と思っている可能性もあります。
①除染が有効に完遂され、②賠償が納得いく形で実施され、③原発の安全性が確認でき、④自治体の生活基盤が復興してはじめて、「元のような暮らしができる」レベルに戻れるのではないでしょうか。
「除染」
朝日の世論調査は、「除染作業」について、「評価する」38%、「評価しない」62%―と厳しい評価が6割を超えています。将来の除染についても、「期待する」50%、「期待しない」49%―と半信半疑です。
一度汚染された土地を元に戻す困難さを想起させます。森林を含めてすべて除染すべきとする福島県の主張に、「そう思う」73% 、「そう思わない」24%、という回答から見て、「元のような暮らし」とは、市街地だけでなく、自然環境全体を意味すると解釈できます。
「賠償」
「賠償」については、毎日新聞が福島県から県外に避難している人々へのアンケート調査(計93人)を実施し、「東京電力の賠償に不満がある」が9割近くに上ったと伝えています。
制度運用への不満も背景にあると思いますが、そもそも物心両面で受けた被害の大きさは、賠償制度の範囲では償えきれるものとは言い難いというのが実態ではないでしょうか。
「原発の安全性」
「原発の安全性の確認」については、直接の質問がありませんが、朝日は「日本の原子力発電を今後どうしたらよいと思いますか」という質問で、福島県民と全国の比較をしています。「すぐにやめる」福島県29%(全国13%)、「2030年より前にやめる」32%(24%)、「2030年代にやめる」17%(22%)、「2030年代より後にやめる」7%(12%)、「やめない」11%(18%)―。
毎日は福島県外に避難した人のアンケート調査で、「原発即時廃止」42%、「時間をかけて廃止」56%、「存続」2%という結果を伝えています。
こうしたもろもろの環境にある福島県民は、朝日の調査で、「原発事故のあと、福島に住んでいることでどの程度ストレスを感じていますか」という質問に、「大いに感じている」26%、「ある程度感じている」49%、「あまり感じていない」20%、「全く感じていない」5%―とストレスを感じている人が75%に上っています。また毎日のアンケートでは、福島県からの避難者の2割が「差別された」と感じたことがあると答えています。
復興が「完了形」となるとき
最後に、ひとつの小さな事例を紹介します。リグミの関係者の女性が、所用あって乳児を連れて仙台に向かう新幹線に乗りました。福島駅停車中に、デッキで赤ちゃんをあやしていると、初老の男性が乗ってきて、「こんなところで何をしているのだ」と詰問してきました。何事かと思うと、福島市在住の人で、自分の孫も同じ乳児で、県外に避難させているとのことでした。こちらの身を思ってくれていたとわかりました。筆者には、原発事故が県民に与えた傷の深さを実感させるエピソードに思えました。
東日本大震災は、津波被害の甚大さと復興の困難さ、原発事故がもたらした物心両面での傷の深さにおいて、際立ったものがあります。3.11は、「現在進行形」です。「完了形」になるのは、「除染」「賠償」「原発の安全性」「被災地の復興」の4つが達成された時だとすれば、それは「日本全体が変容する」という覚悟を持って、取り組みべきことだと、改めて気付かされます。
(文責:梅本龍夫)
① 【独自取材】 「北米シェールガス輸入」
- カナダ政府は、三菱商事、ロイヤル・ダッチ・シェル、中国石油天然ガス、韓国ガス公社の共同事業によるシェールガスの日本向け輸出を認可した。日本向けシェールガス輸出が正式に決まった初のケース。現在輸入しているLNGより2~3割安い北米産シェールガス輸入が増えれば、原発の長期停止による電気料金上昇の抑制にもなる可能性がある。
② 【政府広報】 「自民『衆院比例を30減』」
- 自民党がまとめた衆院選挙改革の原案が4日、明らかになった。小選挙区比例代表制を維持し、比例定数を30減の150とし、全国のブロックを11から8に再編する。比例選のうち30議席以上は、第2党以下に優先的に配分する仕組みも盛り込み、中小政党に配慮した。
③ 【連続企画】 「将来見えず『戻らない』 ~復興はいま(5)」
- 福島第1原発事故から2年経ち、故郷への帰還に見切りをつける人も増えてきた。国や町のアンケート調査で、「戻るつもりはない」と答えた人は、大熊町46%、富岡町40%。「町外コミュニティー(仮の町)構想」もあるが、町民の多くは、仮の町の姿が分からないため、移住を判断できずにいる。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【独自取材】 「黒田日銀総裁、民主同意へ」
- 民主党は4日、日銀総裁に黒田東彦・アジア開発銀行総裁(元財務官)を充てる人事案に同意する方針を固めた。黒田氏の積極的な金融緩和姿勢を市場も評価しており、反対は難しいと判断した。黒田氏の就任は確実となった。
② 【世論調査】 「『生活復旧に20年超』6割」
- 朝日新聞と福島放送は共同で福島県民への世論調査を実施した(電話RDD法、有効回答は1014人。回答率59%)。「福島県全体で、元のような暮らしができるのは、今からどのくらい先になると思いますか」(択一) の結果は、「5年ぐらい」3%、「10年ぐらい」14%、「20年ぐらい」19% 、「20年より先」60%―。
③ 【独自取材】 「朝日生命、月末に廃止」
- 朝日生命保険は、「企業開拓チーム」を廃止する方針を固めた。大手企業で「追い出し部屋」などと呼ばれる部署の問題について、厚生労働省の調査対象の4社のひとつとなっていた。厚労省は、「明らかな違法性は確認できなかった」と結論付けたが、しつこく退職を迫れば違法になるとして、全社に注意を呼び掛けていた。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【連続企画】 「『故郷に戻らぬ』8割 ~東日本大震災2年」
- 東日本大震災で被災した岩手県、宮城県、福島県から県外に避難していた人に毎に新聞がアンケート調査をした。8割が移住の意向を示し、2割強が実際に移住していた。半年ごとの調査で、移住志向は増加傾向。福島第1原発事故で避難区域に指定された地域からの避難者は、2割が「差別された」と感じ、6割が被爆による健康不安を抱えていた。
② 【政府広報】 「あすから九州で訓練」
- 在日米軍は4日、MV22オスプレイによる低空飛行訓練を、岩国基地を拠点に6~8日にかけて実施すると防衛省に通告した。大分県、熊本県などを通過する「イエロールート」となる。
③ 【独自取材】 「職員派遣、数百人不足」
- 東日本大震災で被災した岩手県、宮城県、福島県の自治体の職員不足を補うため、3県の49市町村は、計1490人の職員派遣を国に求めている。しかし、全国の自治体からの職員派遣のめどがついたのは475人に留まり、被災地が任期付採用する職員を加えても685人であり、数百人規模で不足する可能性がある。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【企業広報】 「楽天ポイント、実店舗でも」
- 楽天は、国内最大となる約8100万人の会員数をもつ強みを生かし、4月をめどに、ネット通販などで付与するポイントを実店舗でも使えるようにする。「Rポイントカード」と呼ぶ共通カードを発行し、ネット上の「楽天スーパーポイント」と統合する。
② 【連続企画】 「技術力で変化を商機に ~シェール革命(下)」
- 経営再建中の東京電力が「前向き投資」に活気づく。北米の割安なシェールガスを大量に受け入れるためのタンク新設や発電設備の改造に400億円を投じる。エネルギー構造の変革期には、勝者と敗者が入れ替わる。シェール革命は、ガス掘削交換、天ガス自動車、LNGプラントなど、日本企業の強い分野の新規需要を喚起する。
③ 【企業広報】 「地域経済、一体再生を」
- 日本経済新聞主催の「ニッポン金融力会議」の第3回トップ・シンポジウム「地域の再生と金融」が4日に開催された。冒頭講演の瀬谷・企業再生機構社長は、個別企業だけでなく、地域経済も一体で再生する必要性を訴え、地域再生に1兆円の投融資をする考えを示した。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【独自取材】 「報告義務化検討へ」
- 厚生労働省は4日、保育所における事故の報告を義務付けることや、原因調査の仕組みづくりを国の審議会で検討する。国の基準を超える子供の詰め込み保育が一因で長男を亡くした遺族に対して、明らかにした。
② 【政府広報】 「国立追悼施設を整備」
- 政府は、東日本大震災の大津波に耐え残った「奇跡の一本松」一帯に、国立の犠牲者追悼施設を整備する方向で検討を開始した。原爆被爆地の広島、長崎の事例などを参考に施設内容を検討し、大震災の記憶を伝承する拠点と位置付けたい意向だ。
③ 【独自取材】 「核燃プール、むき出し」
- 東京電力福島第1原発は、事故からまもなく2年を迎えるが、3、4号機は核燃料プールがむき出しのままだ。底にある大量の核燃料と外界を隔てるものは水だけであり、事故収束はまだ遠い。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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