【リグミの解説】
被災地復興までの道程
東日本大震災からまもなく2年。復旧・復興の進み具合について、朝日新聞が、被災3県の42市町村の首長のアンケート調査をしています(1面3番記事)。半数の22人が、復旧復興の完了まで「6~10年」かかると答えています。多くの自治体で、「復興の道遠し」の感があります。
避難指示が出された福島県の12市町村の住民帰還目標については、「住民の6~7割」=5人(42%)、「8~9割」=2人(17%)、「10割」=4人(33%)、その他=1人(8%)でした。帰還の目標時期は、「5年以内」=5人(42%)、「6~10年」=4人(33%)。原発が立地する大熊町は、「11~15年」という回答でした。
被災地の人口問題
読売新聞の1面2番記事は、「被災地の人口流出が止まらない」という内容です。朝日新聞2月26日の1面トップ記事でも、被災地の人口流出について報道していました(「リグミの解説」2013.02.26)。岩手県、宮城県、福島県の42市町村で、年代別で見ると30代以下65%減り、特に福島の15市町村では30代以下が約85%減ったそうです。
地方では少子高齢化に加え、若者の転出などにより、過疎化の問題が続いていましたが、大震災によってその動きが加速した感があります。人口問題は、日本全体で進行する構造問題ですが、地方とりわけ被災地で起きていることは、明日の日本全体の姿とも言えます。
誰がバスに乗るか
経営学者のジム・コリンズは主著『ビジョナリー・カンパニー』の中で、「バスの行先を決める前に、誰をバスに乗せるかを決めるべき」と提言しています。りっぱな理念を掲げ、大きな戦略を策定しても、それを実行する人がいなければ、絵に描いた餅に過ぎません。逆に、志高く有能な人を集めれば、自ずと理念も戦略も明らかになり、自律的に一貫した行動を取り始めます。コリンズ氏の主張は、何かを成していくプロセスの本質を突いています。
この視点で見ると、被災地復興は、その計画内容や予算配分、実行プロセスの是非を問うだけでなく、そもそも誰が被災地というバスに乗るのかを決める必要があるのかもしれません。東京電力は、福島県に「福島復興本社」を設置しましたが、その後の動きは伝わってきません。東電は、法律上の本社そのものを福島に移転する位の覚悟が必要ではないでしょうか。
被災地を日本の中枢に
トヨタ自動車は、岩手の向上で主力ハイブリッド車「アクア」の生産をしていますが、他の製造業などの動きにはつながっていないようです。東日本大震災からの復興は、日本の構造問題を解決し再生する要となる一大事業です。日本を代表する製造業などで、被災地を事業基盤の中核に据えるぐらいの覚悟を示す経営者が出てくることを願います。
「国内というバス」が厳しいから、「海外のバス」に乗り換える、という経済合理性だけでビジネスをするのは、短期志向です。長い目で見れば、日本国内に要の拠点を創造し全社を挙げてコミットすることで、予想外の大きなリターンをもたらされると思います。
同じことは、政治や行政についても言えます。首都直下型地震が予想される今、政治・行政の中枢機能を東北に移転する構想があっても良いはずです。また、福島第1原発の近くに居を構えることで、原子力エネルギー政策をよりリアリティーをもって考える契機にもなるでしょう。
(文責:梅本龍夫)
① 【企業広報】 「iPS臨床、国に申請」
- 理化学研究所などは28日、iPS細胞の臨床研究の審査を厚生労働省へ申請した。目の難病である「加齢黄斑変性」の治療のため。承認されれば、2014年中にも世界初のiPS細胞による人への治療となる。
② 【連続企画】 「戻らぬ暮らし、3万5000人流出 ~復興はいま(1)」
- 東日本大震災からまもなく2年経つが、被災地で人口流出が止まらない。宮城県、岩手県の沿岸24市町村は、震災前と比べ3万5000人余も減った(今年1月現在)。死者・行方不明者と合わせると、約5万人減少した。人口流出だけでなく、産業復旧の遅れ、放射性物質の除染など、多くの課題がおおいかぶさる。
③ 【政府広報】 「離島の警戒強化」
- 海洋基本計画の概要が28日、明らかになった。領土・領海を守るため、全国の離島の保全・警戒態勢の強化を打ち出した。同計画は、2008年策定の現行計画以降の情勢を踏まえ、2013年度からの5ヵ年の取り組みとなる。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【政府広報】 「関電4月値上げ、延期へ」
- 経済産業省の電気料金審査専門委員会による審査の遅れを受け、関西電力と九州電力の家庭向け電気料金の値上げが、予定の4月1日から遅れることが確実となった。関電と九電の審査が同時に重なったためだ。関電は、経産省の認可がいらない企業向け料金は、予定通り4月から平均19.23%値上げする方針。
② 【政府広報】 「B787バッテリー抜本改善」
- 国土交通省は28日、ボーイング社がB787のバッテリーシステムの設計変更を含む改善策を提示したことを明らかにした。GSユアサ製のバッテリー本体だけでなく、米国製の充電器やフランス製の電流逆流防止装置も含めた、システム全体の設計変更となり、同社民間航空機部門社長のコナー氏は、「恒久的な措置」と述べた。
③ 【首長調査】 「『復興に6~10年』半数」
- 東日本大震災で被災した岩手県、宮城県、福島県の42市町村の首長にアンケート調査をした。復旧復興が完了する時期についての回答は、以下の通り。▽「3年以内」=10人(24%)、▽「4~5年」=8人(19%)、▽「6~10年」=22人(53%)、▽「11~15年」=1人(2%)、▽無回答=1人(2%)―。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【企業広報】 「iPS臨床研究、申請」
- 理科学研究所と先端医療振興財団は28日、目の病気の治療にiPS細胞を使う臨床研究について、厚生労働省に実施計画の申請を行った。承認されれば、iPS細胞を使った世界初の臨床研究がおこなわれることになる。
② 【政府広報】 「本土低空訓練、6日から」
- 在日米軍は28日、MV22オスプレイ3機が、3月6~8日に岩国基地周辺で低空訓練を行う方針を日本政府に伝えた。山間地を中心に、昼夜両方で行われる見通し。
③ 【政府広報】 「『バランス』より『頑固者』」
- 政府は28日、日銀次期正副総裁人事案を衆参両院の議院運営委員会理事会に提示した。総裁候補の黒田東彦・アジア開発銀行総裁と副総裁候補の岩田規久男・学習院大業受について、首相の政策ブレーンの1人は、「(ふたりは)頑固者。日銀理論に染まらない人を求めた」との首相の考えを代弁した。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【独自取材】 「個人マネー動き活発」
- 個人マネーによる投資が活発化しており、株式や外国為替証拠金取引(FX)、不動産投資信託(REIT)の2月取引は、いずれも記録的。個人の売買代金は、約6年ぶりの水準に回復し、売買代金全体の個人シェアも昨年秋ごろの約2割から約3割に増えた。
② 【政府広報】 「邦人保護、陸路も可能に」
- アルジェリア人質事件に関する政府の検証員会は28日、報告書をまとめた。自衛隊法を改正し、自衛隊が海外で危険に陥った日本人を陸路輸送できるようにすることを検討する。また、邦人保護に関する政府全体の手引書をつくる方針。
③ 【連続企画】 「カギ握る政府との間合い ~脱デフレへの道(上)」
- 前任者の政策運営を厳しく批判する人々が日銀執行部に就任するのは、日銀史上はじめてとなる。期待が高まり、夢見心地の市場にどう対応するか。カギは政府との間合いとなる。金融緩和を一段と進めていくと、政府の領域と重なる部分が増えるからだ。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【独自取材】 「肺にミクロ『時限爆弾』」
- 阪神大震災で壊れた建物のがれき処理をした作業員らに、健康被害の恐れが広がっている。有害なアスベスト(石綿)を吸引した可能性があるためだ。長い時間をかけて身体を蝕むミクロの物質を「時限爆弾」と呼ぶ人もいる。既に死者も出ており、遺族は目に見えない災害への備えを強く促している。「東京でも地震が起きればかならず飛散する」。
② 【政府広報】 「6日から本土低空飛行」
- 小野寺防衛相は28日、3機のMV22オスプレイが岩国基地を拠点に3月6~8日、低空飛行訓練を行うことを明らかにした。防衛省は、飛行ルートに入るとみられる自治体などへの連絡を始めた。
③ 【政府広報】 「原発再稼働を首相明言」
- 安倍首相は28日、施政方針演説において、エネルギー政策に関し、原子力規制委員会が安全を確認した原発は再稼働する方針を明らかにした。国会で明言したのは初めて。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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