2013.02.23 sat

新聞1面トップ 2013年2月23日【解説】ビッグデータを活かす知恵

新聞1面トップ 2013年2月23日【解説】ビッグデータを活かす知恵


【リグミの解説】

客観と主観
「客観」と「主観」は正反対の意味をもつ二項対立の言葉です。「客観」は理性的で事実に基づき正確で公正だが、「主観」は感情的で思い込みが強く間違いや偏りがある。
こんなイメージがあります。しかし、実際には「客観」と「主観」は、互いを補完し合う関係であり、どちらか一方だけで存在するものではありません。

本日の日経新聞の1面トップは、「ビッグデータ解析に投資」という記事です。日本の流通・サービス企業が、米シリコンバレーのIT技術に投資し、膨大な顧客情報、POSデータ、ネット上の位置情報やSNSでの評判などの解析技術を手に入れようというものです。新聞の朝刊数十万年分にも相当する膨大なデータを分析することで、消費行動の予測などに役立てるのがビッグデータ解析です。

現代のPOSデータは、販売時点の個別商品情報と購買者の属性(性別、年代、職業、収入、嗜好性など)を(推定も含めて)ひも付けし、「What(何が売れたか)」と「Why(なぜ売れたか)」ワンセットでわかるように工夫されています。しかし、どれほどのデータを積み重ねても本当に有用な情報が得られる保証はありません。なぜなら、役に立つ情報を見つけ出し、それを再現性のある知識として活かせるのは、解析をする人間の主観に依存するからです。

「売れすはず」
大量のデータを分析する多変量解析の手法として、クラスター分析や因子分析などがありますが、膨大なデータを一定のパターンに分類できたとしても、そのパターンに有用
な意味を付与するのは人間の解釈です。何か普遍性のある法則が自動的に導き出されるわけではありません。

POS分析の古典話になりますが、セブンイレブンでお弁当の販売動
向を分析したところ、売れ行きが芳しくない「死に筋」を排除しようとした担当者に対して、社長だった鈴木敏文さんがストップをかけ、商品の配置や積上げ方などを変更。その結果、屋台骨を支える「売れ筋」に変貌しました。鈴木さんの「売れるはずだ」という「主観」が、「売れていない」という「客観」に疑問を呈した結果でした。

ここでの「売れるはずだ」は「仮説」であり、「売れていない」は「結果」です。大事なのは「検証」です。「売れないからダメだ」で終わらせていたならば、膨大なデータを有用な情報に転換したことにはならなかったでしょう。では、有効な「仮説―検証」のプロセスを積み上げるにはどうしたらいいのか。

鈴木さんは、心理学が大事だと指摘
しています。消費者の心理を洞察し、隠れたニーズを掘り起こす必要があります。膨大なデータは、まさに掘り起こすプロセスで役立つのであり、答が魔法のように自動的に浮上してくるわけではありません。

統計の「嘘」
本日の東京新聞1面のエッセー「筆洗」は、愛知県東浦町の幹部が、市になるために必要な5万人を超すために、2010年の国勢調査で人口の水増しをした事例を引き、統計を鵜
呑みにする危険を指摘。そして、「19世紀の英国の首相ディズレーリは、『嘘には3種類ある。嘘、ひどい嘘、統計』と言い、その十数代前の首相カニングは、『何でも統計で証明できる。真実以外は』と言った」という逸話を紹介しています。

統計データを偽るのは論外ですが、例えば世論調査などでは、質問の仕方によって、答の傾向が変わるということがあります。新聞社などでは、統計的に有意な方法を慎重に採用し電話調査をしていますが、回答者の属性的な偏りは常にあるはずです。新聞社は、年代別の回答者比率と回答内容を開示しませんので具体的にはわかりませんが、若い世代のデータが十分に反映されていない可能性が指摘されていることなど、注意を要します。

科学的アプローチと物語法
2月11日の「リグミの解説」で、「仮説―検証」を繰り返す「科学的アプローチ」と、社会のビジョンを語る「物語法」を上手に組み合わせていくのが、これからの民主主義に
とって大事だと指摘しました。これは、企業経営にもそのまま当てはまります。「科学的アプローチ」は「客観」を活かす手法であり、「物語法」は「主観」が生み出す価値を具象化する方法論です。両者は二項対立ではなく、互いに補完し合う関係です。

ビッグデータという「客観」を解析できるだけのテクノロジーを比較的安価なコストで入手できるようになった今日、経営者は自分の「主観」から生まれる洞察力を一層磨く必要があります。「客観」と「主観」をひとつながりにし、偏りや偽りを超えた世界観を獲得できた集団は強いです。それは、企業も国家も同じです。

(文責:梅本龍夫)





① 【政府広報】 「米に日本のリニア」

  • 安倍首相は、米国のオバマ大統領との会談で、日本の超伝導リニアモーターカーの技術を米側に提供する意向を示す。
  • 米国の高速鉄道整備計画に協力するもので、世界で唯一実用段階にある日本の技術を米側も歓迎している。会談での基本合意を目指す。
  • 米国で超伝導リニアの建設が始まれば、日本にとって海外でのインフラ(社会基盤)輸出を後押しする効果も期待される。


    ② 【政府広報】 「辺野古、来月にも申請」
    政府は22日、米軍普天間飛行場の沖縄県名護市辺野古沿岸部への移設に関して、近く同県に埋め立て許可申請をする方針を固めた。

    ③ 【連続企画】 「iPS、しれつな臨床競争」
    山中教授は、京大が持つiPS細胞(人工多能性幹細胞)の基本特許を世界中に提供し、iPS普及のために広く競争の種をまく。「作る」技術で先んじても「使う」技術は優位とは言えない。

     

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【政府広報】 「日銀総裁、黒田氏軸に調整」

  • 白川方明・日銀総裁の後任人事は、元財務官の黒川東彦・アジア開発銀行総裁(68)を軸に調整される見通しだ。
  • 黒田氏は、1999年から2003年まで財務省の通貨政策を仕切る財務官を務めた。円高に歯止めをかけるための為替介入を積極的に行った。
  • 日銀の「物価目標」の導入を求めるなど、安倍政権が掲げる金融政策に前向きなため、次期総裁の有力候補となった。


    ② 【政府広報】 「日米同盟強化、確認へ」
    安倍首相は22日、ホワイトハウスでオバマ米大統領と会談する。アジア太平洋地域の安定と発展のため、日米同盟を強化することを確認する。

    ③ 【政府広報】 「震災がれき処理46%」
    環境省は22日、岩手、宮城、福島の3県の震災がれきについて、1月末時点で46%分の処理が終了したと発表した。

     

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【企業広報】 「火元はリコール加湿器」

  • TDKの上釜健宏社長は22日、長崎市の認知症高齢者グループホーム「ベルハウス東山手」で4人が死亡した火災は、同社の加湿器が「火元であった可能性が極めて高いことが判明した」と発表した。
  • 加湿器は1998年から発売した「KS-500H」で、約2万台を販売したが、内部ヒーターの取り付け不良が原因で発火や発煙の事故があり、1999年に国にリコール回収を届け出て回収中だった。
  • 長崎県警も、この加湿器が火元になったとみている。現時点で5509台が未回収であり、TDKは回収への取り組みが不十分だったとして、全国のグループホームなどに加湿器の使用状況の確認作業を開始する。


    ② 【政府広報】 「輸入車規制緩和へ」
    政府は22日、TPP(環太平洋パートナーシップ協定)交渉参加に向けた事前協議で米国側から日本の自動車市場の閉鎖性を指摘されたことを受け、外国製自動車輸入における安全・環境検査基準を緩和する方向で調整に入った。

    ③ 【政府広報】 「『対北朝鮮連携』一致」
    安倍首相は22日、ホワイトハウスでオバマ米大統領と会談し、核実験を行った北朝鮮に対し追加制裁を含む国連安全保障理事会決議の早期採択を目指すことで一致する。

     

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【企業広報】 「ビッグデータ解析に投資」

  • ローソン、サンリオ、リクルートグループなど4社が、米シリコンバレーのIT企業に出資する。出資総額は5000万ドル(約47億円)。出資企業を15社程度に増やし、ファンド規模は総額約230億円を目指す。
  • スマホの位置情報、SNSの評判、個人の購買履歴など膨大な販売情報や顧客情報などの「ビッグデータ」を最先端のデータ解析技術と結び付け、売れ筋を把握し、効果的な商品開発や販売促進に生かす。製品の故障予測、株価予測にも応用する。
  • シリコンバレーでは、ビッグデータ活用技術が集積するが、日本企業が単独で出資先や提携相手を探すのは難しい。出資先に選定などのファンド運営は、米国のベンチャーキャピタル人材養成機関「カウフマン・フェローズ・プログラム」の代表者などが設立した投資会社が担う。


    ② 【政府広報】 「『強い日本』で同盟強化」
    安倍首相は22日、ホワイトハウスでオバマ米大統領と会談する。「強い日本を取り戻す」として日米同盟を強化し、地域の安定に取り組む考えを表明する。

    ③ 【連続企画】 「『婦唱夫随』円満の秘訣」
    団塊世代の女性は、免許保有率が高く行動的。新しいものに敏感で美容にもお金をかける。家庭ではほとんどの商品の購入決定権を握る。夫を邪険にしないが、夫をだしにもっと楽しもうとする。恋愛結婚が多くなった世代であり、ウーマンリブの影響も受けている。

     

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【独自取材】 「母ら『一緒に考えて』」

  • 東京都杉並区で希望者の3分の2にあたる約1800人が認可保育所に入れない問題で、母親らの訴えを受けて区は22日、2次選考の受け入れ枠を40人から100人に増やす緊急対策を発表した。
  • 母親らが作る市民団体「保育園ふやし隊@杉並」の曽山代表は、「それぞれすごくつらい思いを抱えています。くみ取ってください」と訴える。異議申し立てを受け取った区の担当部長は「切実な声をいただいた。しっかり審査したい」と答えた。
  • 「どうしたら保育所を増やせるか、一緒に考えて欲しい」と母親のひとりは呼び掛ける。小さな一歩が未来に大きな意義を示す。


    ② 【企業広報】 「リコール加湿器火元か」
    電子部品大手のTDKの上釜健宏社長は22日、長崎市の認知症高齢者グループホーム「ベルハウス東山手」の災は、同社の加湿器のS-500Hが「火元であった可能性が極めて高いと発表した。

    ③ 【独自取材】 「3.11後の『共生社会』探る ~猪瀬知事の研究(下)」
    猪瀬都知事は、副都知事時代の2011年9月に、帰宅困難者対策協議会で強いリーダーシップを発揮し、民間業界団体に負担を求めた。猪瀬氏には、「事実」「現場」を相手にするノンフィクション作家としての自負がある。経験や発想力を活かした施策を積み上げていけるか。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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