2013.02.13 wed

新聞1面トップ 2013年2月13日【解説】戦略的互恵を大きく捉える

新聞1面トップ 2013年2月13日【解説】戦略的互恵を大きく捉える


【リグミの解説】

北朝鮮の核実験
本日の新聞1面は、「北朝鮮の核実験」と「五輪レスリング除外」でほぼ埋め尽くされています。その他は、「通貨安競争を回避」(日経2番記事)と「首相、賃上げ要請」(
東京3番記事)という2つの経済記事だけです。

北朝鮮が国際社会の自制要請を無視して3回目の地下核実験を強行したことについて、各紙の社説のタイトルと、論説の中で特に
強調しているポイントを比較します。

読売: 「国際連携で制裁を強化せよ ~習近平政権の厳格対応が問われる」
 中国が北朝鮮への制裁に及び腰だったことが核開発を助長した。北朝鮮と安易に交渉に臨むべきではない。国際社会は制裁を解除してはならない。北朝鮮は、自己の行動が結果的に体制の脆弱化を招くことを自覚すべきだ。

朝日: 「孤立国家に未来はない ~北朝鮮核実験」
 中国は、北朝鮮の安定に過度に配慮する政策の限界を認めるべきだ。中国からの食糧やエネルギーを止めれば、北朝鮮への大きな圧力となる。核やミサイルの技術移転の国際監視体制でも、中国の役割は大きい。

毎日: 「深刻な脅威を直視せよ ~北朝鮮またも核実験」
 北朝鮮の核・ミサイルの開発が続くひとつの背景は中国だ。北朝鮮は食糧やエネルギーの7割以上を中国に依存すると言われる。その提供量を少し絞るだけで北朝鮮は立ち行かなくなる可能性がある。

日経: 「核実験強行の北朝鮮に厳しい制裁科せ」
 安保理決議に平然と違反する北朝鮮に、相応の罰を与えるのは当然だ。とりわけ中国の対応が重要だ。北朝鮮の生命線となるエネルギーなどの貿易制限、金融制裁に踏み出すべきではないか。

東京: 「核保有なら孤立無援に ~北朝鮮が実験強行」
 北朝鮮が核兵器保有を目指せば、完全に孤立する。強硬路線を変更しなければ、国際支援は期待できず、経済は再建できず、国民はいつまでも貧困から抜け出せない。今回の危機は長期化する。


核実験の背景
各紙とも、強い調子で北朝鮮を非難しています。そして、中国の態度がカギを握るという点で一致しています。参考になったのは、毎日新聞が示した「中国に食料とエネルギ
ーの7割依存」という情報です。

北朝鮮が強硬姿勢を続ける理由については、東京新聞が一番説得力のある解説をしています。「核兵器保有国と認めさせ、軍事施設の査察拒否をし、核削減を迫られたら巨額の経済支援を求めると言う皮算用がある」「金正恩は、軍事力を増強し周辺国を威嚇する瀬戸際外交を続けなければ、軍部と既得権層の支持を得られない」。

北風政策と太陽政策
北朝鮮問題をどう考えたら良いのでしょうか。「北風政策」と「太陽政策」の2つの側面を効果的に組み合わせる総合的な戦略が必要なのではないかと思います。北朝鮮が織り込み済みの制裁では、効果は限定的です。カギを握ると言われる中国が、どこまで支援を絞り込む実質的な制裁ができるかがポイントになるのでしょう。ということであれば、北朝鮮が直接対話を求めている米国が、中国と対北朝鮮政策で一致する必要があります。

米国にとって北朝鮮は、プラスもマイナスも限定的な存在でした。中東における核の脅威に比べ、朝鮮半島の危機に真剣に取り組んできたとは言い難いと思います。一方の中国とって、北朝鮮の体制維持は、対米の安全保障の意味でプラスであり、さらに大量の難民が自国に流れ込まないという意味でマイナスを回避する意味も大きいと推測されます。米国は、中途半端な「北風政策」に終始し、中国もまた中途半端な「太陽政策」に終始した結果、今の北朝鮮があるともいえます。

戦略的互恵の意味
日本の世論は、対北朝鮮への制裁強化という「北風政策」を求める声が強くなると予想されます。しかし、力で封じ込める施策には限界があります。「窮鼠猫を噛む」という
形で北朝鮮が暴発する事態もあり得ます。北朝鮮が求めているのは、独裁的な現体制の維持だと思います。一方、北朝鮮が本当に必要とし、世界も求めているのは、朝鮮半島が平和な形で経済社会が豊かになっていく状況です。

リアリズムとしては、一党独裁のまま経済開放路線を進めてきた中国の国家モデルを北朝鮮は真似したいはずです。その中国が、体制維持を図りつつ、国際社会のルールに従っていくことが、結局は最も得るものが大きいということを身を持って示し、北朝鮮を「太陽政策」で開放していくことが一番成果を上がる道ではないかと思います。長い目で見て、一党独裁や世襲型独裁は、国家の繁栄の阻害要因となると気付き、徐々に体制転換していく長期の取り組みはどのようなものとなるのか。

ここでもカギを握るのは、中国となります。日本は、米国一辺倒では国家の安全保障を確保できない段階に来ています。中国との「戦略的互恵」の関係は、日中2国間のことに限られていないことが明らかになってきました。今回の北朝鮮の動きを受け、東アジアの安定と繁栄のために、日本は中国と本気で対話をし、足並みを揃えて戦略づくりを開始する好機とすべきではないでしょうか。

(文責:梅本龍夫)
 





① 【発表引用】 「北朝鮮3回目核実験」

  • 北朝鮮は12日、「地下核実験を成功裏に実施した」と朝鮮中央通信を通じて発表した。「以前と異なり、爆発力が大きいながらも小型化、軽量化した原子爆弾を使用した」と主張している。
  • 韓国国防省報道官は12日、爆発規模について、TNT火薬換算で「6~7キロ・トン程度」と推定されると語った。2006年10月は0.8キロ・トン、2009年5月は3キロ・トンだった。
  • 日米韓などは、昨年12月の事実上の長距離弾道ミサイル発射に続く国連安全保障理事会決議違反として非難した。安保理は緊急会合を開き、核実験を強く非難する談話を発表。日本政府は、追加制裁を一段と強める方針を発表した。


    ② 【発表引用】 「レスリング五輪除外へ」
    国際オリンピック委員会は12日、ロンドンオリンピックで実施された26競技のうち、2020年夏季オリンピックでも行われる25競技を決定。レスリングがはずされた。レスリングは1896年の第1回アテネオリンピックから行われ、女子種目は2004年アテネオリンピックから追加された。

    ③ 【連続企画】 「高まる脅威、中国も非難 ~金正恩の核(上)」
    「今回の核実験を経て、いずれ(ミサイルに搭載可能な)核弾頭の開発に成功するとみた方がいい」とブルース・クリングナー米ヘリテージ財団上級研究員は指摘し、北朝鮮の脅威は、大きく増していると警告する。

     

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【発表引用】 「北朝鮮が核実験」

  • 北朝鮮の朝鮮中央通信は12日、「3回目の地下核実験を成功裏に実施した」と発表。「小型化、軽量化した原子爆弾を使った」と伝えた。
  • 日米韓などは、一斉に非難。国連安全保障理事会は緊急会合を開き、「過去3回の制裁決議に対する重大な違反」と強く非難した。安保理は、追加制裁などの措置をとるための決議採決をめざす交渉に入る。
  • だが北朝鮮は、「米国があくまで敵対的に出るなら、より強い2次、3次の対応で連続措置を取らざるを得なくなる」と警告。朝鮮半島をめぐる緊張がさらに高まる可能性がある。


    ② 【発表引用】 「五輪、レスリング除外へ」
    国際オリンピック委員会は12日、ロンドンオリンピックで実施された26競技のうち、レスリングを除外した。レスリングは、次回の2016年リオデジャネイロオリンピックでは実施されるが、2020年オリンピックでは行われない可能性が大きくなった。

    ③ 【政府広報】 「日本、追加制裁を決定」
    安倍首相は12日、北朝鮮の核実験を「我が国の安全に対する重大な脅威」と非難。日本政府は同日、在日朝鮮人総連合会の副議長5人を新たに北朝鮮への渡航制限対象に加える独自制裁を決定した。

     

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【発表引用】 「北朝鮮、3度目核実験」

  • 北朝鮮は12日、「北(東)部の地下核実験場で第3回地下核実験を成功裏に行った」と朝鮮中央通信を通じて発表した。
  • 同通信は、「爆発力が大きく小型化、軽量化し、高い水準で安全かつ完璧に実行した」と報じた。事実なら、ミサイルに搭載できる核弾頭化に近づいたことになる。
  • 今回の「成果」によって、米本土が北朝鮮の核ミサイルの射程に入る事態も現実味を帯びる。オバマ大統領は、「米国の国家安全保障に対する脅威」とする声明を発表した。


    ② 【連載企画】 「先代遺訓に忠実 ~3度目の衝撃(上)」
    朝鮮労働党幹部による内部講演会の様子を収録した資料によると、党幹部による自国の核戦略について「5年以内に米国の首都ワシントンを攻撃できるようになる」と説明した。時期は2011年夏、金正日総書記が健在だった時期だ。

    ③ 【発表引用】 「レスリング除外も」
    国際オリンピック委員会は12日、ロンドンオリンピックで実施された26競技のうち、レスリングを除いた25競技を2020年オリンピックで実施する「中核競技」と決定した。

     

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【発表引用】 「北朝鮮『核実験に成功』」

  • 北朝鮮は12日、地下核実験を強行した。2006、2009年に続いて3回目となる。
  • 核弾頭の小型化と軽量化とともに、核兵器の量産化が進んだ可能性があり、北朝鮮の核の脅威は新しい段階に入った。
  • 国際社会による経済制裁などによる核開発抑止は、手詰まり感を強めており、核拡散防止体制は、曲がり角に来ている。


    ② 【発表引用】 「通貨安競争を回避」
    主要7ヵ国(G7)財務相・中央銀行総裁は12日、各国の財政・金融政策は「国内目的の達成に向けられており、為替レートを目的にしないことを再確認する」との緊急共同声明を発表した。

    ③ 【発表引用】 「安保理が非難談話」
    国連安全保障理事会は12日、北朝鮮の核実験強行への対応を協議する緊急会議を開催し、制裁強化に向けた協議を開始した。

     

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【発表引用】 「『小型・軽量化』主張」

  • 北朝鮮は12日、「地下核実験を成功裏に行った」と朝鮮中央通信を通じて発表した。2006、2009年に続いて3回目で、金正恩体制では初。
  • 同通信は「爆発力は大きいが小型化、軽量化された核爆弾を使い、高い水準で安全かつ完璧に実施された」と伝えた。核爆弾が小型化され、中長距離弾道ミサイル搭載が可能となると、軍事脅威は深刻化する。
  • 北朝鮮は、日米韓や、後ろ盾となる中国も含む国際社会の自制要請を無視して核実験を強行した。潘基文・国連事務総長は「国際社会の要請を振り切った挑発行為は誠に遺憾だ」と強い口調で北朝鮮を非難した。


    ② 【発表引用】 「レスリング、五輪除外危機」
    国際オリンピック委員会は12日、ロンドンオリンピックで実施された26競技のうち、レスリングを除く25競技を2020年オリンピックで実施する「中核競技」として選択した。

    ③ 【政府広報】 「首相、賃上げ要請」
    安倍首相は12日、経済3団体の代表者と会談し、「業績が改善している企業は、報酬の引き上げを検討してほしい」と協力要請をした。所得を増やして個人消費を伸ばし、デフレ脱却を目指す。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ