【リグミの解説】
本日の新聞1面トップ3記事は、5紙で重なる内容がほとんどなく、各紙の独自の視点を見られるます。各紙の1記事にコメントします。
読売: 「柔道告発『勝者いない』」
女子柔道選手15人が園田・全日本女子前監督の暴力行為を告発した問題について、日本オリンピック委員会(JOC)の山口香理事のインタビュー記事です。告発した選手たちが匿名であることを批判する声が上がっているそうです。事態が大きくなっているだけに、事の発端を作った本人たちの声を直接聞きたいという側面もあると思います。
ただ、内部告発は勇気のいることであり、組織内外から批判や非難を受けることを覚悟しなければなりません。企業でも、内部通報窓口は外部の弁護士に直接つながるようにするなど、匿名性などの安全策を担保しないと、機能しないと言われます。事は組織の上下関係から来るハラスメントを対象にしているだけに、実名公表は難しい面があると思います。誰が言い出したかよりも、何が成されたかに焦点を当てて、問題解決を図ることが、一番建設的だと思います。
内部告発には、確かに「勝者はいない」と思います。みな傷つきます。それでも避けて通れない時があります。であるならば、園田前監督も、訴えた選手たちも、全柔連も、そして何よりも日本のスポーツ界全体が、この苦痛に満ちたプロセスから多くを学び、成長するしかありません。長い目で見れば、「全員が勝者」になれる。そういう大きなビジョンのもとで、日本のスポーツの在り方を刷新する大きなチャンスにしてもらいたいと願います。
朝日: 「ギリシャを取り戻せ ~カオスの深淵」
グローバル市場でもがく民主主義を追ってきた連続企画記事の「カオスの深淵」は、ギリシャから始まり、ギリシャに戻ってきました。「自国の運命を自分たちで決められないもどかしさを抱えた民意と右翼が共鳴する」という指摘は、世界の右傾化の背景を説明するひとつのポイントになっています。ギリシャの場合は、EUに緊縮財政を求められ、それが高失業率、高消費税、年金の減額などにつながっている不満がありますが、どの国も本当の問題は国内にあると思います。それが対外的な問題にすりかえられ、強い声で攻撃する集団が喝采を浴びたりします。
日中の問題を見ていても、最近の報道では、中国国内で公然と日中の戦争を口にする者が多いという記事を見かけますが、実態はどうなのでしょうか。日本国内でも、ある政治学者が地方に講演に行ったところ、中国とは一回戦争をすべきだという発言をする日本人がいるという記事を見ました。日本の世論としては、異質な意見だと思いますが、そのような気分が一部にあるのかもしれません。戦争をして得られるものは何もなく、失うばかりだということがわかっているのに、こういう気分になる本当の理由は、国内問題への根深い不満がある、という点では中国も日本も、ギリシャと大差ないと思います。政治にも国民にも、賢明さが求められます。
問題があるとき、その問題を中心に、小さな範囲に境界線を引くと、すぐに「敵」が見えてきます。それは都合の良いことで、問題は外にあると攻撃することができます。しかし、あえて問題の本質を大きくとらえ、境界線を拡大してみます。すると、「敵」とみなしていた相手も、問題を共有する「仲間」に変わります。「敵」を増やすか、「仲間」を増やすか。長い目で見れば、どちらが損か得か、はっきりしていると思います。
毎日: 「芥川賞の魔力 ~ストーリー」
史上最年長の芥川賞受賞者となった黒田夏子さん(75)を巡るストーリーです。「芥川賞受賞をきっかけに、流行作家になる人、地道に寡作を貫く人、書きながら別の職に就く人、筆を折る人」とさまざまであり、芥川賞作家という肩書が、作家としての安定と成功を必ずしも約束しないと記事にあります。芥川賞は一時、史上最年少受賞を競うような時期がありましたが、今度は一転して史上最年長で話題になっています。
新人賞に年齢は関係ないのかといえば、何かを始めるのに遅過ぎるということはないと考えれば、年齢は関係ないと言えます。逆に、こうした賞は、これから作家として活躍することを期待される人に贈るものという考え方に立てば、ある年齢までに留めるという発想も出てきます。でも芥川賞はただの新人賞ではなく、文学賞の最高峰という世間の目もあると思います。一流の作家としてのお墨付きをもらうとも言えます。ポイントは、そこが「到達目標」なのか、ただの「通過点」なのか、あるいは「新たな世界の入り口」となるのかでしょう。黒田さんは、泰然とした風情で受賞を受け止めているようです。高齢となってもなお精進し続け、更なる高みを目指す事例となることを期待します。
歌舞伎界で初めて文化勲章を受章した六代目尾上菊五郎の辞世の句は、「まだ足らぬ 踊りおどりて あの世まで」。これは「生涯現役」のスピリットを見事に表わした言葉です。大きな賞をもらうような一流の役者や作家など、例外的な人だけが、尾上菊五郎の句の境地に達すると思われるかもしれませんが、そんなことはないと思います。これを「たいへんで自分にはできない」と境界線を引くか、「わくわくして楽しそう」と憧れ、自分なりに目指したくなるかで、大きな違いが生まれます。小さな世界に留まるか、大きな世界を共有するかは、気持ちの持ちようです。
(文責:梅本龍夫)
① 【警察広報】 「『猫に首輪』30代男特定」
② 【政府広報】 「中国艦の動画、公開方針」
政府は9日、中国海軍艦艇が海上自衛隊艦艇に火器管制レーダーを照射した問題で、自衛隊艦艇が撮影した中国艦艇の動画や写真などの証拠データを公開する方針を固めた。
③ 【独自取材】 「柔道告発『勝者いない』」
日本オリンピック委員会(JOC)の山口香理事は、女子柔道選手15人が園田・全日本女子前監督の暴力行為を告発した問題で、「この問題では、勝者は誰もいない。選手も、全日本柔道連盟もスポーツ界全体も被害を被った」と述べ、選手らも傷ついていることを明らかにした。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【連続企画】 「ギリシャを取り戻せ ~カオスの深淵」
② 【独自取材】 「東電、釈明も虚偽」
東京電力が、国会事故調査委員会に福島第1原発1号機の現場は「真っ暗」と虚偽の説明をし、現地調査を妨げた問題で、東電は事故調側から現場の明るさについて質問があったと説明していたが、実際は東電の部長から切り出した話だったことが判明。東電の釈明も虚偽の内容で構成されていた。
③ 【独自取材】 「グループホーム入所定員超過か」
火災で4人の死者を出した長崎市の認知症高齢者グループホーム「ベルハウス東山手」が、事実上の定員オーバーとなっていた可能性があり、スプリンクラーの設置義務違反があったと判断される可能性もある。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【独自取材】 「抜本的な防災策急務」
② 【連続企画】 「芥川賞の魔力 ~ストーリー」
史上最年長の芥川賞受賞者となった黒田夏子さん(75)は、受賞前より顔つきが泰然としたように見えた。「芥川賞作家」の肩書は重たい。だがそれは、作家としての安定と成功をかならずしも保障しない。
③ 【独自取材】 「脆弱な経営基盤」
介護保険法が施行された2000年にスタートした認知症高齢者グループホームは、17万人以上が利用する(2012年10月時点)が、単独経営が多く事業基盤は脆弱だ。また、自力避難が困難な要介護4以上の人の割合も多い。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【政府広報】 「原発輸出、サウジと協議」
② 【連続企画】 「つぎはぎ脱却 ~金融ニッポン」
グローバルに動く資金を国内に惹きつけるには、税制面でも国際的な魅力が要る。過去のつぎはぎだらけの税制を解き、市場振興、税収確保、税負担の公平性などを達成する必要がある。
③ 【企業広報】 「保有株1500億円売却」
新日鉄住金は、新日本製鉄と住友金属工業の旧2社の顧客の株を保有しているが、こうした持合い株などを1500円規模で売却する方針だ。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【独自取材】 「節電逆行、再生エネ賦課金」
② 【独自取材】 「勇壮絵のぼり、立つ日は来る」
福島県いわき市の絵師高橋謙一郎さん(66)は、端午の節句に男児の健康を願って飾る「いわき絵のぼり」をつくる。東日本大震災からまもなく2年、今もほとんど注文がない相双地域に、「再び絵のぼりを」と願い、絵筆を握る。