2013.02.08 fri

新聞1面トップ 2013年2月8日【解説】「お金」を活かす視点

新聞1面トップ 2013年2月8日【解説】「お金」を活かす視点


【リグミの解説】

「お金」の記事
本日の新聞1面のトップ3記事(5紙計15記事)のうち、「お金」に関する記事が6つあります。
そのうち3つは、新聞ネタの定番となる不正使用に関するものです。「研究費不正使用に厳罰」(読売新聞トップ記事)は、公的な研究費を支給された研究者が個人の利益のために私的流用していることに関連するもの。

「高額備品、28億円分不明」(東京新聞3番記事)は、厚労省所管の3つの研究所で、購入総額は約28億円に上る高額備品が所在不
明になっているという内容。いずれも、国民の税金を活用する立場の人間が、そのありがたみを理解していない事例です。もう1つは、フィリピンでの賭博事業を計画している企業が、認可を得るために巨額の接待をしていた問題についてです。

研究費不正使用
この中では特に「研究費不正使用」が残念な内容です。我が国の経済は長期低迷し、GDPで中国に抜かれ、エレクトロニクスや自動車などの基幹産業で韓国企業の勢いの前に日
本の大手企業は精彩を欠く状況が続いています。しかし、ノーベル賞の科学部門の受賞者を見ると、日本は物理学賞7人、化学賞7人、医学生理学賞2人の計16人います。中国と韓国は未だにゼロで、受賞者を出したいと熱望していると言われます。日本が今後も、科学の基礎研究で成果を上げ続けるためには、何が必要なのでしょうか。

日本がここまでの成果を上げられたのは、科学者の地道な研究を支える様々な体制や環境があったからだと思います。昨日、ノーベル賞候補の一人と言われる高名な研究者の講演を聞く機会がありました。今やエレクトロニクスの分野などでブレークスルーとなる新しい技術を次々と生み出し、脚光を浴びていますが、まったく成果が出ない暗闇の14年間に耐えたそうです。その間、研究を諦めずに済んだからこそ、今日の革新が生まれたのですが、それも研究を続ける場所、設備、そして資金がなければ不可能でした。

「原石」を排除しない
国などから研究助成金が出ることは、当然ありがたいことですが、半年単位で成果を求められるため、研究者が目標を低く設定する落とし穴があると言います。国は予算主義
で運営されています。予算を何に配分し、成果は上げたかを年度単位で見ます。

しかしメジャーブレークスルーは、10年20年の潜伏期間は当たり前だと思います。予算主義は
、長い目での投資を妨げると同時に、余った予算を消化してしまおうというあやまったインセンティブにもなりがちです。私的流用は論外ですが、研究者が安定した環境で研究し続けられ、未来のブレークスルーを生み出す「原石」を排除しない仕組みや環境を如何に維持発展できるか。日本の国力が試される分野です。

給料を上げる
「お金」に関する残り3つの記事は、「ローソン、子育て世代年収増」(毎日新聞2番記事)、「雇用延長の賃金、再設計」(日経新聞トップ記事)、「教育の空白、1500兆円
眠らす ~金融ニッポン」(日経新聞2番記事)です。ローソンは、安倍政権の経済財政政策に協力するため、正社員の給与を3%(年収で15万円)上げるというもの。こうした動きは、初めてで注目されます。

ただ、中身を見ると、上げるのは夏冬の賞与です。企業サイドからすれば、賞与は「変動費」です。固定的に支払っていても、業績が悪くなれば、最初に手を付ける(削減する)対象になります。デフレ脱却を本気で追求するのであれば、増やすべきは賞与や手当ではなく、基本給です。研究者にとっての安定した研究費と同じように、基本給が安定的に増えることで、人々は初めて長期的にライフスタイルを充実させていこうとするものです。

「お金」の教養
日経の連続企画記事「金融ニッポン」の今日の内容は、「お金は汚い」と感じている中高生が8割に上り、教育の空白が個人資産の活用の阻害要因になっているというもの。で
は、大人はどうでしょうか。「お金は汚い」という観念は、結構一般的なものかもしれません。

特に毎日のようにマスコミで「お金」にまつわる不正などの報道に接している
と、余計そういう風に感じるようになります。しかし、言うまでもなく、「お金」そのものは、ニュートラルです。お金がなければ経済は回りませんが、お金がすべてを解決するわけでもありません。

日本に必要なものは、日経の記事が示唆するような、投資に積極的になる「お金の教育」ではないと思います。「お金」が役立つケースと役立たないケースを示し、「お金」があって初めて成り立つ活動のありがたみと、「お金」では買えない尊いものがあることを学ぶことが必要です。「お金は汚い」と忌み嫌うのでなく、「お金の教養」を身に着けることこそが、人生の大きな財産になります。

ノーベル賞受賞者数のように、GDPの大きさだけでは測れない国家の本当の財産は、国民の教養のレベル(民度)に依存します。だからこそ、国民一人ひとりが「安心して生活できるお金」が必要、という観点に戻ります。国が進める経済再生の基本として、忘れてはならないポイントです。

(文責:梅本龍夫)
 





① 【政府広報】 「研究費不正使用に厳罰」

  • 文部科学省は、研究者に支給する補助金の規定を見直し、2013年度支給分から罰則を強化する方針だ。公的な研究費の不正使用や、データ捏造などの不正を防止することが目的。
  • 個人の利益を得るために私的流用した悪質な研究者に対しては、応募資格を現状の2倍の10年間停止する。必要な注意義務に違反した上司も、最長2年間の応募制限を新設する。
  • 政府の公的な研究費は、2012年度で約4300億円あり、文科省が約3580億円(83.3%)を占める。厚生労働省など公的な研究費を扱う他の7府省も罰則基準をそろえる。


    ② 【政府広報】 「首相『国際ルール違反』」
    安倍首相は、中国海軍艦艇による海上自衛隊護衛艦への火器管制レーダーの照射について、国際ルールに違反するとの考えを強調した。同時に、引き続き対話の糸口を探る考えを示した。

    ③ 【連続企画】 「過激派、サハラに拡散 ~検証アルジェリア人質事件(下)」
    2年前に始まった「アラブの春」をきっかけにエジプト、チュニジア、リビアの独裁政権が崩壊し、混乱が周辺に波及した。その中、中央政府の統治が十分及ばない砂漠地帯が武装勢力の潜伏先となった。北アフリカには、重武装した過激派が広く潜行する。

     

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【独自取材】 「巨額送金、会長ら認識」

  • 大手遊戯メーカー「ユニバーサルエンターテインメント」(UE社)の首脳は、子会社からフィリピン・カジノ規制当局の顧問側への計4千万ドル(約37億2千万円)の送金について、報告をされていたことが判明した。
  • UE社はこれまで、担当社員の独断による不正送金と主張していた。しかし、朝日新聞が入手した内部資料には、100%子会社のアルゼUSAの送金に関する取締役会議事録を作成した経緯が書かれていた。
  • UE社は、フィリピンでのカジノ事業計画で比娯楽賭博公社から暫定免許を取得しているが、同社幹部に対する高額接待が明らかになり、フィリピン国会で糾問されている。


    ② 【政府広報】 「津波想定し物資航路確保」
    国土交通省は、津波被害を受けた港湾の早期復旧のため「緊急確保航路制度」をつくる。緊急物資を運ぶ船舶が往来できるようにするため、被災した船などの漂流物を所有者の了承なしに国が撤去できるようになる。

    ③ 【独自取材】 「民主、事前報道で拒否方針」
    民主党は7日、公正取引委員長に関する安倍内閣の人事案の提示を認めない方針を決めた。元財務事務次官の杉本和行・みぞほ総合研究所理事長を充てる案が、事前に報道されたため。

     

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【政府広報】 「『護衛艦照射、報告遅れ』」

  • 安倍首相は、1月30日に発生した中国海軍艦艇による海上自衛隊艦艇への火器管制レーダーの照射について、自分への報告が遅れたとの認識を明らかにした。
  • 小野寺防衛相は5日夜、公表の遅れたことについて、「慎重にも慎重を期し、分析・検討に時間がかかった」と説明していた。
  • 首相は7日の衆院予算委員会で、「事務方が(分析に)慎重になり、情報が上がるのが遅くなった」と答え、「発生時点で未確認でも、情報が上がるようにする」との改善策を述べた。


    ② 【企業広報】 「ローソン、子育て世代年収増」
    ローソンは7日、20歳代後半から40歳代のグループ正社員約3300人を対象に、来年度から年収を約3%(年2回の賞与で計平均15万円)増額する。デフレ脱却を目指す安倍政権の経済財政政策に賛同し、子育て世代の労働意欲向上も目指す。

    ③ 【独自取材】 「防衛相『国連憲章上の武力威嚇』」
    小野寺防衛相は7日、中国海軍艦艇による海上自衛隊艦艇への火器管制レーダーの照射について、国連憲章の「武力による威嚇」に該当する可能性があると中国側を批判した。ただし、憲章上の「威嚇」の定義はあいまいであり、政府内の具体的な動きは乏しい。

     

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【独自取材】 「雇用延長の賃金、再設計」

  • 高齢者雇用安定法の4月改正を見据えた賃金制度の見直しが進んでる。希望者に対して65歳までの雇用延長が企業に義務付けられるのを受けたもの。
  • 定年延長に備えた制度導入企業に例は、以下の通り。▽トヨタ自動車=定年後のハーフタイム勤務など、▽日産自動車=嘱託社員としての再雇用する制度を導入済み、▽パナソニック=希望者全員を65歳まで再雇用する制度を導入済み、▽JFEスチール=再雇用するリーダークラスに賃金上乗せ、▽日本精工=希望者は65歳までフルタイム勤務、▽NTTグループ=65歳まで雇用延長するため40~50代の人件費上昇を抑制する制度を導入―。
  • 総人件費の増加につながる制度改革に踏み込み、60歳以上の働き手が持つ能力の有効活用を目指す。


    ② 【連続企画】 「教育の空白、1500兆円眠らす ~金融ニッポン」
    「お金は汚い」と全国の中高の生徒の8割が答える。「子どものお金観がゆがんでいる」と投資教育を手掛ける岡本和久さんは危機感を持つ。教育の空白により、多くの個人は投資に関する基本的な知識を持たず、お金が動かない。

    ③ 【政府広報】 「サウジから原油融通」
    日本とサウジアラビア両政府は、テロや原油急騰などの有事に、日本の要請を受けサウジが原油を増産し融通する体制づくりに合意する。

     

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【独自取材】 「軽すぎる原発防災計画」

  • 原発30キロ圏にある21道府県と130市町村は、重大事故が起きた際に住民を守るための避難ルートなどを盛り込んだ地域防災計画を3月をめどに作ることになっているが、38市町村(25.2%)が検討作業をコンサルタント会社などに丸投げしていた。
  • 他に8市町が住民の避難計画などを部分的に委託していた。丸投げの38市町村のうち、31が新たに区域入りした市町村となる。初めて計画づくりをする自治体が急増していることが背景にある。
  • 自治体は、事故の際には住民の避難や内部被曝を防ぐ安定ヨウ素剤を配布するなど、重要な役割を担うため、地域を熟知する自治体が自ら防災計画作りを進めるのが本来の姿だ。業者任せでは机上の計画になりかねず、住民の安全確保につながるか疑問がある。


    ② 【独自取材】 「原発事故、国を提訴」
    東京電力福島第1原発事故で避難するなどの被害を受けた東京、千葉、福島の被災者が、国と東電を相手に損害賠償を求める集団訴訟を、事故から2年目を迎える3月11日に各地裁に起こす。

    ③ 【独自取材】 「高額備品、28億円分不明」
    厚生労働省所管の3つの研究所で、高額備品約1300点が所在不明となっている。購入総額は約28億円に上る。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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