【リグミの解説】
全柔連も「結果責任」の問題
本日の新聞1面は、朝日のトップ記事と東京の2番記事が「全柔連の刷新要求」です。園田前監督の辞任会見で、幕引きになるのかと思ったら、告発した15選手が「ひとり前監督の責任という形で問題解決が図られることは、私たちの真意ではない」とする声明を代理人を通して発表しました。
2月2日の「リグミの解説」で、「結果責任」と「原因責任」について論じました。原子力規制庁の審議官が、日本原電に事前に資料を漏らした問題についてでした。同じ趣旨のことを、今回改めて指摘する必要がありそうです。
「結果がすべて」
園田前監督の記者会見の発言を新聞などで読んで、印象に残ったことがいくつかあります。1つは、「優勝しなければいけない、金メダルを取らなければいけないという焦りがあった」という趣旨の発言です。日本柔道は、国技とも呼ばれ、金メダルが義務付けられているかのようです。オリンピックが始まれば、日本のテレビも柔道を最優先で放映しますし、国民も今でも全階級で最低でもメダル獲得、できれば金メダルをと期待していると思います。
そんな環境の中で、全日本柔道連盟は、どんな思想や価値観、そして戦略を持って世界大会やオリンピックに臨んできたのでしょうか。「結果がすべて」という姿勢だったのでしょうか。心ある日本の柔道ファンは、「結果がすべて」ではなく、どういう柔道をして結果を得るかを同じぐらい評価してきたと思います。
何をしても勝てばいいという一部の外国選手に対して、日本の柔道は正々堂々と相手と組み、立ち技や寝技の切れと連続性で相手を圧倒し、一本を取る。それは武道を極めた者だけが成し得ることで、心技体が一致しなければ達成できないものと考えられます。暴力やハラスメントとは、スピリットにおいて正反対のものを、私たちは柔道家に期待しているのです。
「結果」と「成果」の違い
「成果主義」は、企業現場にいろいろな問題を生み出してきましたが、その考え方や運用の仕組みの中には、有用な部分も少なくありません。そのひとつが、「結果」と「成果」の区別です。計画を達成したり、売り上げや利益が増えるなどの「結果」は、かならずしも本人の取り組みと直結しないものです。そこで、良い「結果」の評価は単年度の賞与などで報いても、翌年には繰り越さないという発想が出てきます。
一方で、本人が取り組んだことで達成できたことは、「成果」として評価し、基本給や翌年のポジションなどで報いるという方法があります。こうすることで、長い目で一貫した人材育成ができるようになります。全柔連は、人事制度のプロと交流し、「結果」がすべてではない「成果」を積み上げていく仕組みや方法論を志向してみては、どうでしょうか。
「わかったつもり」
園田さんの発言でもうひとつ印象に残ったことには、「選手たちとコミュニケーションが取れていると思った、信頼関係が築けていると思った」というのがあります。これを聞いて、「いじめ」問題で、「いじめの加害者」と指摘された側が、「いじめをした覚えはない」としばしば発言することを思い出しました。自己弁護のこともあるでしょうが、本当にそう思っていた可能性も十分あります。
「強い立場」にある者は、「弱い立場」がよく見えません。会社でも、部下からは上司のことが良く見えていますが、上司は部下のことが見えていないものです。「わかったつもり」の上司が、実に多くいます。園田さんも、いつの間にかそんな「上司」になっていたのかもしれません。
昨日の「リグミの解説」で、体罰やスポーツ指導の暴力やハラスメントをなくしていく手法として、「対話力」を身に着けることを提案しました。文中に、「言葉の力」とも書いたのですが、その後ちょっと気になっていました。というのは、園田さんたち指導者は、「暴言を吐いていた」と報道されたからです。まさに「言葉の暴力」が行使され、体罰との比喩で言えば、「心罰」ともいうべき心の傷を選手たちに与えていたことがわかりました。「対話力」を発揮する「言葉の力」は、正反対のものです。相手を癒し、解放していくのが「対話力」の妙です。
柔道本来の「良いもの」を引き出す
「対話」が成立するためには、本来上下の関係は邪魔です。相手と同じ位置に立ち、互いを理解し合い、共感し合える環境がなければ、良い「対話」は生まれません。また意見や価値観が違っていても、相手を攻撃したり、論破しようとしないのも「対話」の大前提になります。
「対話」は、(指導者と選手など)違う立場や背景を持ちつつも、共通のテーマや目標に向けて、どうしたら一緒に良い成果を上げられるか、探求するプロセスになります。それは、互いの内側にある「良いもの」を引き出し合う作業です。今回のことで、全柔連が園田さん個人の問題(「結果責任」)で終わらせようとした問題に気づき、、組織全体の「原因責任」を追求する方向に転換することを期待します。
そしてその際に、選手たちやコーチ陣など、現場で頑張っている人々を叱責したり、調べ上げる姿勢で臨むのでなく、良い「対話」を始めるきっかけにしてもらいたいと思います。優れた「対話」のきっかけは、「良い質問」をすること。そこから真の原因を知り、柔道本来の「良いもの」を再構築する探求のプロセスが始まります。
(文責:梅本龍夫)
① 【独自取材】 「アベ相場、業績押し上げ」
② 【企業広報】 「東電赤字1200億円に拡大」
東京電力は4日、2013年3月期連結決算の業績予想を下方修正した。原発の長期停止による火力発電用燃料増に加え、円安で輸入にかかる費用もふくらみ、税引き後の赤字が1200億円(昨年10月予想は赤字450億円)に拡大する。
③ 【独自取材】 「中国大気汚染、西日本に不安」
大気汚染が深刻な中国から飛来したとみられる微粒子物質「PM2.5」が、福岡市、大阪市など西日本各地で国の基準値を上回る濃度を観測している。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【発表引用】 「全柔連の刷新要求」
② 【連続企画】 「『俺が厳しく指導したから勝てた』 ~暴力とスポーツ(上)」
「お前、監督に何か言いたいことがあるらしいな。本人に直接言えばいいじゃないか」。強化委員会幹部は威圧的に選手を問い詰めた。その選手が試合で勝つと、今度は園田監督が軽い口調で「おれが厳しく指導したから勝てたんだぞ」と言った。選手たちは、何も変わっていない、これから4年間同じことの繰り返し、と感じた。
③ 【独自取材】 「マリ、空爆で解放された街」
イスラム武装勢力が制圧したため、フランス軍がマリ介入するきっかけとなった中部コンナ。武装勢力は厳格なイスラム法を強要。略奪も相次いだ。シレさん(65)は「食糧、家畜、服すべて持っていかれた。空爆は怖かったが、おかげで自由になれた」と語った。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【政府広報】 「仮設供給を迅速化」
② 【独自取材】 「中国の1/4でスモッグ」
中国環境保護省によると、1月の大気汚染は中国全土の4分の1、全人口の半数近い6億人に影響が出た、とウェブサイト上で公表した。
③ 【企業広報】 「東電、赤字750億円拡大」
東京電力は4日、2013年3月期連結決算の業績予想を下方修正した。最終(当期)損失が1200億円(従来予想は450億円の損失)に拡大する見込み。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【政府広報】 「老朽インフラ、官民で監視」
② 【企業広報】 「富士通、赤字1000億円規模」
富士通は、2013年3月期に1000億円近い連結最終赤字を計上する見通しとなった。半導体を中心とする不振事業の立て直しを図るため、半導体工場の設備の減損処理をし、多額の損失を計上する。
③ 【連続企画】 「成長マネー、好循環を探る ~金融ニッポン」
欧米の有力運用会社に日本の成長株の運用を一任されるシオズミアセットマネジメントの塩住秀夫。不動産投資信託に投資する国内最大のファンドを運用する三井住友トラスト・アセットマネジメントの太田素資。共通すのは、専門性に裏打ちされた目利きの力だ。本物の運用のプロが増え、本領を発揮すれば、日本経済と市場が活性化する。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【行政広報】 「虐待防止に子育て助っ人」
② 【発表引用】 「全柔連、抜本改革を」
ロンドンオリンピック代表を含む柔道女子選手15人が代表監督の暴力行為などについて告発した問題で、代理人の弁護士が、告発の意図は監督交代だけでなく、全日本柔道連盟の「指導体制の抜本的見直し」も求めているとする選手たちの声明文を公表した。
③ 【独自取材】 「一時93円台に」
ロンドン外国為替市場は4日、円相場が一時93円台に下落した。米国の景気回復の期待などからで、2010年5月以来、約2年9ヵ月ぶりの円安ドル高水準となった。