2013.02.02 sat

新聞1面トップ 2013年2月2日【解説】小事が大事

新聞1面トップ 2013年2月2日【解説】小事が大事


【リグミの解説】

原子力規制庁の不祥事
本日の新聞1面は、原子力エネルギー政策に関わる記事が注目を引きます。その1つが、「原子力規制庁の審議官が資料を事前に日本原電に漏らした」という記事です(読売トップ
記事、朝日2番記事、毎日2番記事、東京2番記事)。

組織序列で長官、次長に次ぐナンバー3の地位に就く審議官(地震・津波担当)が、公表前の日本原電敦賀原発直下の断層
問題をめぐる資料を、有識者評価会議前に原電側に渡していました。同審議官は、訓告処分となり、出身元の文科省に更迭されました。

東京電力福島第1原発事故を調査した国会事故調査委員会は、コスト増や反原発訴訟への懸念から津波や過酷事故への対策を怠ってきた東電がもたらした「人災」と断罪しました。さらに、それを許容してきた当時の原子力保安院や内閣府原子力安全委員会は、「規制当局は電気事業者の虜(とりこ)だった」と指弾しました(参照:毎日.JP)。

原子力規制委員会とその事務局である原子力規制庁は、国の原子力行政の在り方のへの強烈な反省から生まれた新組織のはずでした。しかし、実態は違っていたようです。


結果責任と原因責任
情報開示をした同庁の森本次長は、「信頼失墜をもたらす恐れにある不適切な行為」としつつ、文書を渡した理由や原電側がそれをどう利用したかについては「承知していな
い」と回答を避け、審議官個人の過ちであり調査は行わない、と答えました(読売新聞)。

日本の組織の悪弊のひとつが、「結果責任」だけ取らせて、「原因責任」を追及し
ないことです(参照:「バス事故」「原発事故」「ダルビッシュ敗戦」にみる責任の取り方)。直接の担当者の個人的な過失に原因を集約させ、処分をして打ち切りにします。いわば個人を足切りすることが禊(みそぎ)の位置づけになっています。

深刻な原発事故を経験した国民は、「安全・安心」を求めています。原子力規制委が昨日公表した新安全基準の骨子案は、新しい規制の在り方に沿ったものと評価できます(参照:「リグミの解説」2013.02.01)。しかし、その足元で事務局の仕事をしている規制庁は、国民が求めているものが何か、よくわかっていないようです。

日本人は、自分たちが「原発安全神話」という共同幻想に浸らされていたことに無自覚だったことを反省しています。もう政府・規制組織、電力会社、専門家に任せきりはできないと感じています。それは、強烈な不信感とも言えます。この不信感を払拭しない限り、「安全・安心」を求める国民の声は満たされず、結果として国のエネルギー政策は世論の支持を得られず、迷走し続けることになります。


長が変われば、組織は変わる
原子力規制庁の長官は、池田克彦・前警視総監です。池田氏は、1995年の警察庁長官銃撃事件を、警視庁が「オウム真理教による犯行」と2010年に発表した時の責任者です。東京地裁は、アレフによる名誉棄損の訴訟に関する1月15日の判決で、「裁判を経ずに犯人を断定したことは、無罪推定の原則に反するだけでなく、刑事司法の原則を根底からゆるがすもので、重大な違法性がある」と指摘。警視庁の対応を厳しく批判しました(参照:「リグミの解説」2012.01.16)。

池田氏個人も訴えられていましたが、「公務員個人は民事上の損害賠償を負わない」との理由で、損害賠償請求が棄却されました。
なぜ警視庁は公表をしたのか、今回の判決をどう受け止めているのか、池田氏には、当時の警視総監として「説明責任」を果たして戴きたいと思いました。しかし、係争が続く可能性もあり、発言を控えなければならない事情もあるかもしれません。

現在、原子力規制庁の初代長官という重責を担う立場として、組織員が行った過失をどう受け止め、どう再発防止策を打つのか。注目したいと思います。池田氏は、危機管理の経験を重視した当時の民主党政権によって、起用されました。今回、足元で起きた不祥事を「組織の危機」と捉え、原因追求を徹底することを期待します。


組織は、長の言葉と行動、その本気度を見ています。長が変われば、組織も変わります。そして国民も、責任者たちの言動や本気度を見ています。原子力行政に関する政府・規制組織、電力会社、専門家は、今回の不祥事を「小さなこと」と片付けず、「小事が大事」という姿勢で臨んで戴きたいと思います。

(文責:梅本龍夫)
 





① 【政府広報】 「報告案、原電に事前提供」

  • 原子力規制委は1日、事務局の原子力規制庁の名雪哲夫審議官が、公表前の資料を日本原子力発電に渡したとして、同審議官を訓告処分とし更迭したと発表した。
  • 文書は、日本原電敦賀原発の原子炉建屋直下の断層について、規制委の専門家チームが「活断層の可能性が高い」と結論づけた報告書の原案。
  • 規制庁は、「中立性を重視する規制組織の職員として著しく軽率」であり、「信頼失墜をもたらす恐れのある不適切な行為」と判断。しかし、「個人の過ち」を理由に詳しい調査は行わない、とする。


    ② 【政府広報】 「ボルト強度、6割想定以下」
    国土交通省は1日、中央自動車道笹子トンネル上り線で起きた天井板崩落事故について、天井板を吊り下げるアンカーボルトの約1割が強度不足で荷重に耐えられず、約6割が基準(荷重の3倍超)を下回っていたとする調査報告書を発表した。

    ③ 【政府広報】 「インフル流行ピーク」
    厚生労働省は1日、この冬のインフルエンザの流行が最盛期に入ったと発表した。

     

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





① 【独自取材】 「急進、アベ相場」

  • 円安・株高を促す「アベノミクス」で、企業業績が急回復の兆しを見せている。輸出中心の製造業が復調し、銀行や証券でも好決算が相次ぎ、景気底打ちが鮮明化しつつある。
  • 東京金融市場の対ドル円相場は1日、約2年7ヵ月ぶりに1ドル=92円代まで下げた。日経平均株価は、「岩戸景気」の1958年12月~1959年4月の17週連続に続く、12週連続の上昇となった(週間ベース)。
  • 東証1部上場の3月期決算企業468社(全体の35.6%)の4月~12月期の純利益は、前年同期比36.3%増となった。4月~9月は17.5%の減益であり、10月~12月の好調が寄与。米国など海外の景気回復傾向も重なり、大きく改善した。


    ② 【政府広報】 「報告書案、原電に漏出」
    原子力規制委は1日、事務局の原子力規制庁の名雪哲夫審議官が、公表前の日本原電敦賀原発直下の断層問題をめぐる資料を原電側に渡したとして、同審議官を訓告処分とし、出身元の文科省に更迭したと発表した。

    ③ 【政府広報】 「ボルト引き抜ける状態」
    国土交通省は1日、中央自動車道笹子トンネルの天井崩落事故について、天井板を固定するボルトの約6割が調査で抜けたと発表した。接着剤の不足など強度が足りなかった可能性があるという。

     

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





① 【連続企画】 「原燃社長、突然役場に ~虚構の環(サイクル)」

  • 民主党政権の原子力政策が大詰めを迎えた昨年9月、日本原燃社長の川合吉彦は、青森県六ケ所村の村議会議長の橋本猛一の携帯電話に連絡。「核燃料サイクルを一から見直す」とする閣議決定が近くされる懸念を伝えた。
  • 川合社長らは翌日、面会の約束なく橋本議長を役場に訪問。再処理から撤退した場合の問題を文書で説明した。村議会の意見書のたたき台とも言える内容だった。橋本議長は、「証拠が残るから文書を持ち帰ってほしい。後は我々で相談して決める」と伝え、退席させた。六ケ所村村議は、電話から17時間半の早業で意見書を作成し全会一致で可決。意見書は後日、政府のエネルギー・環境会議に届いた。
  • 民主党の方針通り閣議決定すれば、使用済み核燃料は行き場を失う。2月に英国から返還予定の高レベル放射性廃棄物も陸揚げできなくなる。「国際問題にもなりかねず、意見書は猛烈に聞いた」(エネ環会議事務局関係者)。エネ環会議は、再処理継続を決めた。「見直す」とした民主党の方針は、わずか8日でひっくり返った。


    ② 【政府広報】 「原電に原案漏らす」
    原子力規制委は1日、事務局の原子力規制庁の地震・津波担当の名雪哲夫審議官が、公表前の日本原電敦賀原発直下の断層問題をめぐる資料を、有識者評価会議前に原電側に渡していたとして、同審議官を訓告処分とし、出身元の文科省に更迭したと発表した。

    ③ 【独自取材】 「マリ世界遺産都市の古文書救出」
    フランス軍が介入したマリ北部(西アフリカ)の世界遺産都市トンブクトゥの研究所に保管されていた古文書の約6割が、南部に秘密裏に移送されていた。歴史的に貴重な資料で、イスラム過激派による破壊が懸念されていた。

     

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





① 【政府広報】 「電力、事業別に免許制」

  • 経済産業省の有識者小委員会がまとめる電力システムの改革の報告書案が判明した。政権交代後、電力政策の方向性を網羅的に示す最初の文書となる。
  • 報告書案の概要は、以下の通り。▽2015~2016年:「小売り参入の全面自由化」「事業部別免許を導入」「発電分野の規制(卸規制)の撤廃、▽2017~2019年:「発送電分離の実施」「小売料金規制の廃止」、▽2020年:「東西の電力融通容量を210万キロワットまで拡大(現在は120万キロワット)」―。
  • 電力会社の監督は、現在の経産省から新たに創設する規制機関に移行する案も盛り込まれている。


    ② 【企業広報】 「2商社から年80万トン」
    東京電力は、米国から新型天然ガス「シェールガス」を原料とする割安の液化天然ガスを調達する。2017年をめどに、三菱商事と三井物産から合計年80万トン買い取る。

    ③ 【企業広報】 「株高・金融緩和追い風」
    株高と金融緩和の追い風を受けて、大手銀行と証券会社の業績が堅調だ。5大銀の21012年4~12月期の連結純利益は、計1.8兆円となり、通期計画の9割弱に達した。

     

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





① 【独自取材】 「耐震補強工事、168橋手付かず」

  • 首都圏1都6県が管理する緊急輸送道路の橋のうち、168橋は耐震補強工事が必要とされながら、予算措置がなく手付かずとなっていることが判明した。
  • 耐震化対象ので予算が付いていない橋は、以下の通り。▽茨城県=82橋、▽神奈川県=65橋、▽栃木県=21橋―。いずれも着工は、新年度以降になるとみられる。一方、東京都、千葉県、埼玉県は予算措置で耐震設計に入っている。群馬県は、既に耐震化を完了している。
  • 震災時、最重要路線の橋が使えないと、救命や輸送に支障をきたす。「耐震化計画や橋の状態を利用者に周知することが大事」と専門家は指摘する。


    ② 【政府広報】 「規制庁幹部、情報漏えい」
    原子力規制委は1日、事務局の原子力規制庁の名雪哲夫審議官が、公表前の日本原電敦賀原発直下の断層問題をめぐる評価報告書の草案資料を原電側に渡していたことを明らかにした。なれあい行政に終止符にを打つために設立された組織が、発足から半年ももたず大きな不祥事となった。

    ③ 【発表引用】 「原発即時廃止訴え」
    政府税制調査会長を長く務め、国鉄分割民営化や消費税導入に関わった千葉商科大学、慶応大学名誉教授の加藤寛氏が、1月30日に心不全のため死去した。86歳。


(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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