【リグミの解説】
原発の新安全基準
本日の新聞1面トップは、読売と日経が「原発の新安全基準」です。朝日は3番、東京が2番扱いでした。各紙の強調点に違いがあります。
読売新聞:
「今夏の再稼働が困難」というサブタイトルを掲げ、懸念を表明。社説でも「安全と再稼働の両立を目指せ」というタイトルで、「規制は合理的かつ効率的であるべきだ。再稼働にいたずらに時間をかけてはならない」と主張しています。
朝日新聞:
過酷事故対策を打ち出し「想定外」を厳格想定したことに着目しています。2面では自民党の動向を伝える記事で、「党役員連絡会で『衆院の原子力特別委員会で、規制委をチェックすべきだ』といった要求が飛び出した」と伝えています。夏の電力需要のピークに向け、自民党政権がどう対応するかに注目する内容です。
日経新聞:
新基準を満たすためには、電力業界全体で総額1兆円の投資が必要になると報道。新基準に基づいた発電コストの上昇により、今後のエネルギー政策に影響を及ぼす、としています。
東京新聞:
1面では稼働中の大飯原発も新基準を満たさなければ、稼働停止となるという規制員会の担当委員の発言に着目しています。さらに2面では、「なぜ原発のためにここまで対策をしなければならないのかと思う」という専門家の言葉を引用し、「割な合わぬ再稼働」と報じています。
毎日新聞:
昨日の1面トップ扱いだったため、本日は社説のみです。「『猶予』で骨抜きにするな」と題し、安全基準の厳守を求めた上で、コストがかかるのは当然、コストの見合わない施設は淘汰されるもの、電力会社は国の安全基準は最低限の守るべき基本線と認識すべき、と主張しています。
まとめれば、読売は政府・自民党寄りの主張、朝日は政府・自民党の立場を客観報道、日経は企業(電力会社)よりの報道、毎日は消費者寄り、東京は脱原発派寄りの報道となります。ここには、「電力の安定供給に原発をどう位置付けるか」、という重要問題に関する立場・主張の違いがあります。
特に「短期の必要性」と「長期の必然性」の判断が背景にあると思います。読売新聞は、「短期必要」「長期必然」、逆に東京新聞は、「短期不要」「長期必然性なし」という立場です。
「短期の必要」と「長期の必然」の判断
戦後の日本は長く「安全と水はただ」と表現されてきました。戦争や紛争、犯罪が当たり前の諸外国と比べ、日本は安全と思われてきました。しかし、「失われた20年」の間に雇用の安定にヒビが入り、社会のセーフティーネットも弱くなりました。そこに3.11が起き、日本人は物理面の「安全」と心理面の「安心」をセットで求めるようになりました。それは、「安全神話」という「安心」の共同幻想が崩壊したからです。
そういう中で、原子力規制員会が出してきた原発の新安全基準です。その内容を見る限り、原発という特殊な背景を持った巨大装置を稼働し続ける限り、避けて通ることのできない安全対策が盛り込まれているものであり、特段過剰だとは感じられません。なぜなら、原発は事故に対して寛容ではないからです。一旦事故が起きれば、他の巨大装置とは比較にならない甚大な影響が想定される以上、安全基準がより厳しくなるのは致し方ありません。
「安全と安心」と「効率・便利」の対立
問題は、意外なところにあるかもしれません。それは、戦後の日本は、「安全と安心」を重視した社会であっただけでなく、「効率と便利」を極端なまでに追求してきたという点です。家中のモノが電化され、建物という建物のドアがみな自動化され、自動販売機と24時間営業のコンビニ(「便利商店」)が全国に展開する特異な国が、日本です。
この異常なほどの「便利」を維持・発展させるために、あらゆる方面で「効率」を追求してきました。原発は、この高効率を支えるために、「安全」を後回しにした面があったのではないでしょうか。日本人は、今まで「安全・安心」かつ「効率・便利」な社会環境を満喫してきました。原発問題は、この2つが両立しない可能性を私たちに初めて突きつけました。選択肢は、3つあります。
第1が「安全・安心」を優先し、「効率・便利」を我慢する。原発再稼働に反対する立場と言えます。第2が「効率・便利」を維持したいので、「安全・安心」は合理的な範囲でよいではないかと妥協する。原発再稼働を早期に図りたいとする立場です。これに対して第3の選択肢として、新しい「安全・安心」と「効率・便利」の両立を目指す、という立場が考えられます。
第3の道
「安全・安心」と「効率・便利」が、二項対立の構図となったことは、かならずしも悪いことではありません。「安全神話」という虚構の上に築かれてきたものの矛盾が明らかになったからです。二項対立は、新しい次元へと私たちを押し上げていくエネルギーにもなります。1970年代の石油危機や、排ガス規制法によって、自動車の燃焼効率が飛躍的に向上したように、厳しい環境変化や規制基準は、技術やビジネスの取り組みの進化をもたらすきっかけにもなります。
原子力規制員会の新安全基準は、原発を再定義する一歩となるものであり、日本の未来が再び「安全・安心」と「効率・便利」が両立する「第3の道」を進むための貴重な道標となる可能性があります。新安全基準をきっかけに、原発推進派も原発反対派も、二項対立を超え、原発のあるべき位置づけのコンセンサスを作り、未来志向のエネルギー政策を創造すべき段階に来ていると思います。
(文責:梅本龍夫)
① 【政府広報】 「原発、多重安全を義務化」
② 【記者会見】 「園田監督が辞意」
柔道の女子選手15人が園田隆二・全日本女子監督から暴力を受けたとして日本オリンピック員会に告訴した問題で、園田監督は31日、辞意を表明した。
③ 【独自取材】 「10邦人、悲劇の地」
アルジェリア東部イナメナスでの人質事件で、アルジェリア政府は31日、事件後初めて、犯行現場の天然ガス関連施設を外国メディアに公開した。居住区内の施設は、壁の一部が砲撃で破壊され、戦闘の激しさを伝えていた。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【政府広報】 「発送電分離、5年後めど」
② 【政府広報】 「笹子トンネルずさん工事」
国土交通省の調査で、中央自動車道笹子トンネル上り線で崩落した天井板をコンクリート壁に固定するボルトに、十分な接着剤が使われていなかったことが判明した。
③ 【政府広報】 「過酷事故対策を義務化」
原子力規制委員会は31日、原発の新たな安全基準の骨子案をまとめた。これまで電力会社の自主取り組みだった過酷事故対策を義務化。地震や津波のほか、火災、テロ攻撃、航空機墜落事故にも対応できる対策を求める。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【行政広報】 「自殺、いじめが直接原因」
② 【記者会見】 「園田監督が辞意」
暴力や暴言が表面化した園田隆二・全日本女子柔道監督が31日、記者会見し、引責辞任する意向を示した。「指導力不足が一番の原因。(言葉で)伝える力を持っていなかった」と語った。
③ 【独自取材】 「日米首脳、対テロ議題に」
ルース駐日大使は31日、2月に予定される日米首脳会談について、「オバマ大統領はテロとの戦いや貧困対策などを議論したいと思っている」と語った。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【政府広報】 「電力、原発対策に1兆円」
② 【企業広報】 「エチレン国内生産撤退」
住友化学は、内需が減少し、世界で競争が激化する中、石化製品の基礎原料であるエチレンの国内生産から、事実上撤退する方針を固めた。
③ 【企業広報】 「円高修正、収益下支え」
ホンダは、円安・ドル高の効果により、2013年3月期の営業利益が、従来予想に比べ約400億円の押し上げ要因になる。ダイハツ工業も31日、円高修正などを理由に通期業績予想を上方修正した。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【独自取材】 「『スーッと橋が落ちた』」
② 【政府広報】 「大飯原発、7月停止へ」
原発再稼働条件となる新安全基準の取りまとめ役を務める原子力規制委員会の更田委員は31日、「基準が施行された時点(7月18日)で、動いている炉も満たしている必要がある」との考えを示した。稼働中の関西電力大飯原発が期日までに求められるすべての設備を整える可能性は極めて低く、運転停止に追い込まれることが確実になった。
③ 【記者会見】 「園田監督が辞意表明」
柔道のロンドンオリンピック代表を含む15人の選手から暴力行為とパワハラ告発を受けた園田隆二・女子日本代表監督が31日、辞意表明した。