【リグミの解説】
テロ事件の全容解明を
本日の新聞1面は、読売、朝日、毎日、日経、東京のトップ3記事のうち2つが「アルジェリア人質事件の日本人犠牲者10人」と「2013年度与党税制改正大綱の決定」です。
サハラ砂漠で巨大プロジェクトを推進してきた17人の日本人スタッフのうち、実に10人もの方が残忍なテロの犠牲になりました。毎日新聞は1面の記事で、イスラム武装勢力で逮捕された男が、主導者のベルモフタール司令官の命令で、フランス人、英国人、日本人の計5人を人質に取るように指示されていたと語った、と報道しています。
日本人の10人目の犠牲者は、日揮の最高顧問(全社副社長)で、英国のBP社の幹部と現地で会合を持つためにプラント施設を訪れていたところを襲われた可能性が指摘されています。BP社の英国人副社長もテロの犠牲となりました。幹部会合の情報が洩れ、テロリストに狙い打ちされた可能性が指摘されています。テロ集団の意図や背景、アルジェリア政府と軍の対応、プラント関係者の関与など、全容が解明されるまで、事件は終わりません。
短期的な経済効果
「2013年度与党税制改正大綱の決定」については、新聞によって報道スタンスが違います。読売と東京は、暮らし支援のための減税策に着目。一方、朝日、毎日、日経は、改正大綱の主眼が企業減税にあり、成長優先の経済政策の色合いが強いとしています。全体としては、企業優先の内容としつつ、暮らしにも配慮し批判が出にくいものにした、という印象です。
経済政策と企業戦略は、活動の範囲と規模が比較にならないほど違いますが、せんじ詰めれば「最適な資源配分を決める」という意味で、本質的に同じものだと言えます。政府と言えども、お札を無限に刷って際限なくばらまくことはできません。重要度(効果の大きさ)と時間軸(すぐ効果が現れるもの、時間を経て効果を発揮するもの)を判断し、個々の施策を打つ順番を間違えないことが大切です。
今回の税制大綱は、企業にも個人にも、短期的な行動を促し、心理的な景気浮揚感を演出する効果を狙っているのかもしれません。「閉塞感」が時代を象徴する言葉として使われてきたことを考えれば、まずは心理的バリアを払拭することに、一定の価値はあります。
「人」への投資
しかし、短期の効果を長期的なほんものの変革につなげるには、金融や税制といった個別の経済政策を超えた、「国家像の構築」ともいうべき視点が必要だと思います。効果を発揮するまで一番時間がかかるが、効果は最大のもの。それが何かを明らかにし、そこへの投資を「幹」として打ち立てた上で、そこにつながる「枝葉」を決めていく。
政府もマスコミも、半年後の参院選に間に合う、短期的効果に目が行ってますが、この間も「人口減少と少子高齢化」という日本の一大テーマはなくなりません。国家の「幹」は、「人」です。政府の最大の仕事は、「人」を中心とした「国家像」を構築し、今から投資を始めることではないでしょうか。
企業が成長できるのも、国力が増していくのも、「人」が育っていくからです。企業であれば、「一人あたりの生産性」という指標がありますが、国家であれば「民度」を推し量るべきかもしれません。子供たちが生き生きとし、若者が志高くさまざまな活動に取り組む社会は、間違いなく活力があり、そして幸福度も高いと思います。
教育制度の改革といった狭い発想ではなく、たくさんの子供たちが生まれやすい環境、生まれた子たちが幸福に育っていける環境、成人した若者たちが失敗を恐れず挑戦し、創造力を発揮できる環境。こうした諸々の環境を一貫して構築すれば、日本は長期的に大きな飛躍を遂げることが可能です。
夢や希望が持てる社会
バブル景気以後に社会に出た40前後以下の世代と話していると、日本の将来に期待をしていないことに気付かされます。なぜでしょうか。「夢」や「希望」が持てないというのが理由です。これが戦後の経済成長の恩恵を受け取ってきた50代以上のシニア世代との決定的な「違い」といえるかもしれません。
その気にならなければ、能力は開花しません。安倍政権が目指す短期的な経済効果や心理の好転は、40歳以下の人々が、成長意欲をかきたてられるようなものになったとき、本当に持続力を持てるようになると思います。「人」の可能性は、無限大です。そのことを確信できたとき、日本の社会は、「夢」や「希望」に満ちた場所になるでしょう。
(文責:梅本龍夫)
① 【政府広報】 「日本人死亡10人に」
② 【政府広報】 「暮らし配慮、減税拡充」
自民、公明両党は24日、2013年度の与党税制大綱を正式決定。増税項目と減税項目の差し引きで、2700億円規模の減税となる。
③ 【企業広報】 「リチウム電池統合交渉」
政府系投資ファンドの産業革新機構が、ソニーのリチウムイオン電池事業を核に、日産自動車・NECが共同設立した電池会社と統合する業界再編に乗り出すことが分かった。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【政府広報】 「日本人犠牲者は10人」
② 【政府広報】 「企業減税で成長優先」
自民、公明両党は24日、2013年度の税制改正大綱を決定。企業が研究開発や投資をしやすくする減税策を並べ、経済成長優先の経済政策を鮮明にした。
③ 【独自取材】 「強化爆弾、実験の可能性」
北朝鮮の国防委員会は24日、国連安全保障理事会の制裁決議に反発し、「高い水準の核実験」を実施すると明言した。米国を狙うことを想定したものだ。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【政府広報】 「日本人、残る1人死亡」
② 【政府広報】 「企業中心に2700億円減税」
自民、公明両党は24日、2013年度の税制改正大綱を決定。企業が研究開発や投資を後押しする減税策を並べた。参院選なども見据えた景気刺激策の強い内容。
③ 【政府広報】 「成長率見通し2.5%」
政府は24日、2013年度の国内総生産(GDP)成長率の見通しを実質2.5%(名目2.7%)程度とする方針を固めた。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【政府広報】 「脱デフレへ企業後押し」
② 【政府広報】 「全10邦人、死亡確認」
菅官房長官は24日、アルジェリアの人質事件で、安否不明だった日本人1人の死亡を確認、日本人の死亡は10人となったと発表した。
③ 【企業広報】 「巨大農場、衛星で管理」
日立製作所は三井物産と組み、広大な農場の管理を効率的に行うことができる、衛星データを活用した情報システムを海外で販売する。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【政府広報】 「景気呼び水に高齢者の財布」
② 【政府広報】 「邦人犠牲者は10人」
菅官房長官は24日、アルジェリアの人質事件で、安否不明だった日揮の日本人男性1人の死亡を確認したと発表。日本人17人全員の安否が判明した。無事だったのは7人で、犠牲者は10人となった。
③ 【政府広報】 「与党、税制改正大綱を決定」
自民、公明両党は、2013年度税制改正大綱を決定した。2014年4月の消費税率8%への引き上げを前提に、家計と企業向けの減税など負担軽減策を盛り込んだ。