【リグミの解説】
政府・日銀の共同声明
本日の新聞1面トップ記事は、全国紙4紙(読売、朝日、毎日、日経)がそろって、政府・日銀の「共同声明」に関連するの記事です。内容も大同小異、これが【政府広報】であることを象徴するのが、読売、毎日、日経が大きく掲載しているプレス向け写真です。安倍首相に対して、麻生副総理・財務相、甘利経済財政相、白川日銀総裁が並んで椅子に座っており、ちょど写真に綺麗に収まる配置になっています。
読売と日経の1面は、上記の写真のみのため、「政府広報紙」の印象が強くなっています。毎日は、これ以外に「毎日芸術賞」などの贈呈式の記念写真も掲載、やや独自色を打ち出しました。一方、朝日が唯一掲載したのは、マリ中部ディアバルに入るフランス軍の装甲車の写真。アルジェリアの人質事件の原因のひとつとなった紛争のものものしい雰囲気を伝えています。
映像のインパクト
映像(静止画、動画)は、往々にして文字以上のインパクトを持ちます。読売、毎日、日経の「政府広報写真」を見ると、日銀白川総裁が一番下座で小さくなっている印象を受けます。一方、安倍首相、麻生副総理、甘利大臣は、堂々としており、如何にも政府が日銀を先導しているという感じです(参照:毎日.JP)。一方、ワシントンポストが伝える記事は、日銀の金融政策決定会合の決定を伝える記事という位置づけの違いもありますが、掲載されている写真は日銀のラウンドテーブルであり、白川総裁はその中心で威厳を保っています(参照:Washington Post)。
安倍首相は、今回の共同声明を「画期的」と自画自賛しています。日経も、「政府と中央銀行がデフレ脱却という共通目標に一体で取り組む試みは過去に例がなく、『前進』と受け止めたい」と積極評価する企画記事を載せています。一方、海外からは中央銀行の独立性に対する懸念の声や、円安誘導が通貨戦争を引き起こすとの批判も起きているようです。東京新聞の関連記事では、「物価上昇と給与アップが両立しないと生活は苦しくなる。金融緩和で期待される円安は、輸出に有利、輸入には不利で両面がある」と、問題点を簡潔に整理しています。
「〇〇ノミクス」の功罪
エコノミストの浜矩子・同志社大学教授は、1月21日の毎日新聞6面に「〇〇ノミクスは悪徳商法」という論稿を寄せています。国家元首が主導する経済政策に名前をつけたのは、米国のレーガン政権時代の「レーガノミクス」が始まりであり、その真相はイメージ操作だったという批判しています。浜氏は、実際の経済政策の理論とは異なる政策が打ち出されても、政権もマスコミも、「〇〇ノミクス」というフレーズに騙され、思考停止となり、批判的な視点での検証を怠ってしまうことを懸念しています。
そもそも、金融政策は素人にはわかりにくいもの。政府発表やマスコミ報道の内容に国民は振られやすい傾向があると思います。専門家の間でも、安倍政権の金融政策については、意見が割れています。その理由を推し量ると、結局金融政策の効果は、どこまで行っても間接的だからだと思います。
この解説は、メカニズムを単純化しすぎている面もあるでしょうが、問題の本質は、「風が吹けば桶屋がもうかる」のような論理でしか経済効果を予測できないところにあるのだと思います。経済学は、合理的な判断をする経済人(ホモ・エコノミクス)を前提にしていますが、実際の企業や消費者の行動は、非合理的で感情的、直感的な判断に基づいて成されたり、マクロ経済政策で想定していない別の「合理的判断」で動いたりします(例えば、「金融政策の効果は長続きするかわからないので、利益が上がっても、社員の給与は上げないでおこう」と判断する経営者)。
新聞独自の「ビュー」を
こうした金融政策の実態があればこそ、「〇〇ノミクス」というキャッチフレーズでイメージ誘導し、「結果オーライ」を目指すことになるのかもしれません。浜氏は、「レーガノミクスが金融政策への便乗商法なら、アベノミクスは、金融政策に対する恫喝商法だ」と手厳しいです。
マスコミは、政権の広報戦略の片棒を担ぐのではなく、安倍政権の経済政策を冷静に客観的に検証し続ける視点を求めたいと思います。その出発点として、独自の「ビュー」(見方、考え方)が表現された写真を掲載することを提案します。
(文責:梅本龍夫)
① 【政府広報】 「物価2%四半期ごと検証」
② 【独自取材】 「『攻撃どういうことか』」
「人命優先を要請していたはずだ。攻撃するとは一体どういうことか」と声を荒げる安倍首相に、アルジェリアのセラル首相は、「我々が一番うまく対応できる」と答えた。
③ 【政府広報】 「生活保護7%程度下げ」
政府・与党は22日、生活保護費の中の「生活扶助費」(日常生活の費用)を3年程度かけて段階的に6~7%引き下げる方針を固めた。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【政府広報】 「金融政策、政府主導に」
② 【独自取材】 「幻だった『14人生存情報』」
アルジェリア軍の責任者クラスから「14人生存」という情報が寄せられていた。しかし、城内外務政務官から日本人の遺体確認の報告を受け、「14人生存」の情報は幻に終わった。
③ 【論点解説】 「デフレ脱却へ危うさも」
安倍首相の金融・財政政策は、景気がよくなり税収増となれば結果オーライだが、景気回復ないまま放漫財政を続ければ、日銀はお札を刷って国債を買い続ける「印刷マシーン」になり下がる。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【政府広報】 「資産購入、月13兆円」
② 【企業広報】 「日揮、プラント中止」
日揮は22日、アルジェリアの人質事件で日本人駐在員7人の死亡が確認されたことを受け、同国内で建設中の他の石油・天然ガスプラント2ヵ所の作業を一時中断し、日本人駐在員の避難を始めたと発表した。
③ 【政府広報】 「安倍首相『画期的』」
安倍首相は、政府と日銀の「共同声明」で、2%の物価目標を明記し責任を明確化させたことは、金融政策の大胆な見直しという意味で画期的な文書であり、マクロ経済政策の体制転換につながる、と評価した。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【政府広報】 「脱デフレ、連携強化」
② 【連続企画】 「政府・日銀、次は『成長』 ~脱デフレ新戦略」
政府に押し切られたように見える日銀の政策転換に、海外からは批判も届く。だが、政府と中央銀行がデフレ脱却という共通目標に一体で取り組む試みは過去に例がなく、「前進」と受け止めたい。
③ 【政府広報】 「7遺体、あすにも帰国」
政府専用機は、23日夕にアルジェリアに到着、人質事件で死亡確認された7遺体や無事に救出された7人を乗せ、早ければ24日夕にも帰国する運びだ。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【政府広報】 「原発事最大津波想定」
② 【政府広報】 「生活保護8%引き下げ」
厚生労働省は22日、生活保護のうち生活扶助の支給水準(食費や光熱費など充てられる基準額)を、2013年度から3年かけ、檀家的に約8%引き下げる案をまとめた。
③ 【論点解説】 「未知数の無期限緩和 ~Q&A」
日銀は、期限を定めない金融緩和を実施するとするが、具体的手法がわからず、効果は未知数だ。物価上昇と給与アップが両立しないと生活は苦しくなる。金融緩和で期待される円安は、輸出に有利、輸入には不利で両面がある。