【リグミの解説】
アルジェリアでのテロと9.11
アルジェリアの天然ガス関連施設で起きた人質事件は、日本人の犠牲者が7人と発表されました。残り3人の安否は依然不明です。今回の事件の遠因として、9.11以降の米欧の対テロ戦争の在り方を指摘する必要があると思います。
2001年9月11日、ニューヨークの世界貿易センタービルに2機の旅客機が突っ込み、高度文明の象徴として聳え立っていた高層ビルが崩落。その様をテレビで観ていた全世界の人々は、大変な時代が始まったことを知りました。それまでもテロ行為はありましたが、それは思想犯などによる単独または組織的な犯罪という位置づけでした。9.11以降、テロリストは、戦争の相手とみなされました。
対テロ戦争を宣言した米国のブッシュ大統領(当時)は、9割以上の支持率を得た、と世論調査は伝えました。やがて米国は、「イラクは大量破壊兵器の保有している」「フセインはアルカイーダと協力関係にある」などとして、イラク開戦を先導しました。米国は圧倒的な戦力でイラク戦争に勝利。逃走していたフセイン大統領は捕まり、裁判の末に処刑されました。しかし、イラクの大量破壊兵器は結局見つかりませんでした。
9.11テロの遠因
9.11テロの背景は、少なくとも第2次世界大戦後の中東におけるイスラエル建国とパレスチナ難民問題にまで遡ると思います。そこには当時の米欧のさまざまな思惑があり、地政学上の戦略が交錯していました。
その後の米ソ冷戦構造の中、「敵」と「味方」が時代とともに入れ替わる状況が続き、テロを生み出す複雑な環境が作りだされていったのだと思います。その過程で溜まったマグマが一気に噴出したのが、9.11テロでした。米国にとって、自分たちの本土が攻撃されたことは、想像を超える衝撃だったのではないでしょうか。
イラク戦争は、せんじ詰めれば、9.11に対する米国の恐怖と憎悪が、「歯には歯を」の武力行使の相手を求めて開始されたものだったのではないか。ブッシュ大統領は後に、大量破壊兵器が見つからなかったことを認めましたが、戦争行為は正しかったと主張しました。しかし、この戦争の大義が何で、欧米諸国が一致団結した戦闘行為は何をもたらしたのか。歴史の審判は未だ下っていません。
日本のトラウマ
その中で、歴然とした事実は、日本が自衛隊のイラク派遣という形で、イラク戦争に事実上加担したということです。背景には、1991年の湾岸戦争で多額の資金援助をしながら、多国籍軍を形成した欧米国から感謝されなかったトラウマがありました。そこに当時の小泉政権による明確な対米追随外交が重なり、日本は、自衛隊を派遣するという大きな一歩を踏み出しました。
その結果が巡り巡って、今回のアルジェリアで日揮の駐在員が人質になり殺害されるという悲劇につながったのではないか。そこには直接の因果関係は見出されませんが、イラク戦争で日本が踏み出した大きな一歩が遠因になっている可能性を否定することはできません。
銃犯罪が繰り返される米国
どのような政治的な論理を用いても、戦争や紛争行為に加担すれば、恐怖と憎悪と偏見の連鎖が始まります。人が人を殺す行為が、穏便に収束することは、ありえないからです。
日揮をはじめ、日本企業がサハラ砂漠などの僻地まで繰り出して困難な事業に取り組む理由は、単純には企業の利益追求のためです。しかしそこには、日本の国益に適う先行投資の意味合いがたくさんあります。さらには、相手国の開発と発展を支援する効果も期待できます。少なくとも現地で奮闘する駐在員たちは、平和と繁栄を目指していたのであり、破壊や搾取を意図したことはまったくなかったはずです。にもかかわらず、大きな犠牲を払うことになりました。
米国は、銃規制が弱いために、大量殺戮犯罪が繰り返されています。2期目の就任式を終えたオバマ大統領は、小学校の銃乱射事件を受けて銃規制に動き出していますが、頼みの世論がどこまで後押ししてくれるか不明です。テレビでは、学校の教師たちが拳銃の訓練に自主参加し、武装する様子を報道していました。自分と生徒たちの身は自分で守らないといけない、という論理です。
銃が自由に手に入るから犯罪が起きるという基本を無視し、目の前の現実に対応する「プラグマティズム」(実用主義)が米国のひとつの現実です。対テロ戦争も、同じ論理を国家レベルで行っているとも言えます。
日本の知恵と創意
日本は、今回の日揮の社員たちの尊い犠牲をどう活かしていけば良いのでしょうか。「銃規制は無理だから銃を持って自衛する」米国民のように、「テロの根本原因をなくすことはできないから、対テロ戦争に備えて自衛隊に対する憲法の規制を緩和する」という動きに向かっていくのでしょうか。
企業や個人が、危険な地域での活動で自衛することは、必須です。テロに毅然とした態度を示すことも不可欠です。しかしそれ以上に、なぜテロがなくならないのか。根本に立ち戻って考える必要があります。
目の前の現実に対応するプラグマティズムや現実主義では、問題の先送り、さらには問題の拡大再生産になりかねません。銃を野放しにした米国の二の舞にならないようにするには、どうしたらいいか。対テロの戦いで、日本はお金や武力以上に、知恵や創意工夫を打ち出すべきです。今ならまだ間に合います。
(文責:梅本龍夫)
① 【政府広報】 「日本人7人死亡」
② 【政府広報】 「住宅ローン減税、年40万」
自民、公明両党は、2013年末で期限切れとなる住宅ローン減税を4年間延長し、所得税の控除額を年間最大40万円(現行の2倍)とすることで合意した。
③ 【発表引用】 「8ヵ国37人犠牲」
アルジェリアのセラル首相は21日、同国イナメナスの天然ガス関連施設で起きた人質事件での外国人死亡者数は、8ヵ国37人と発表した。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
① 【政府広報】 「日本人7人死亡確認」
② 【発表引用】 「外国人死者37人」
アルジェリアのセラル首相は21日、同国イナメナスの天然ガス関連施設で起きた人質事件での外国人死亡者数は、8ヵ国37人と発表した。
③ 【政府広報】 「2%物価上昇目標『できるだけ早く』」
安倍政権と日銀は、22日にまとめる共同声明に入れる2%物価上昇目標を「できるだけ早く」と明記する方針だ。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
① 【政府広報】 「日本人7人、死亡確認」
② 【連続企画】 「米に代わり欧州主導へ ~長い戦争」
米国は、イラクとアフガニスタンの対テロ戦争で疲弊。アルジェリアで起きた人質事件で、英仏など欧州諸国が対テロ第2幕を主導する姿が浮かび上がっている。
③ 【発表引用】 「8ヵ国37人死亡」
アルジェリアのセラル首相は21日、同国イナメナスの天然ガス関連施設で起きた人質事件での外国人死亡者数は、8ヵ国37人と発表。7人は身元が特定されていない。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
① 【政府広報】 「7邦人死亡確認」
② 【政府広報】 「復興予算3兆円上積み」
政府は、2013年度予算案で、東日本大震災の復興予算枠を3兆円上積みする。日本郵政株の売却収入などを財源とし、復興に力を入れる姿勢をアピールする。
③ 【政府広報】 「発想電分離へ子会社化」
経済産業省は21日、電力システム改革専門委員会で、電力会社の発送電分離を議論。グループ内で送配電部門を分社化(法的分離)することで大筋合意した。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
① 【政府広報】 「7邦人の死亡確認」
② 【独自取材】 「制圧強行『人命優先』届かず」
日本政府は、アルジェリアの人質事件が発生した当初から、一貫して人命最優先をアルジェリア政府に要請し、同国に対する国際包囲網づくりも試みたが、軍事作戦は武装勢力に壊滅的打撃を与えるまで終わらなかった。
③ 【発表引用】 「8ヵ国37人犠牲」
アルジェリアのセラル首相は21日、同国イナメナスの天然ガス関連施設で起きた人質事件での外国人死亡者数は、8ヵ国37人と発表。5人が依然行方不明。