2013.01.16 wed

新聞1面トップ 2013年1月16日【解説】「生涯現役」という生き方

新聞1面トップ 2013年1月16日【解説】「生涯現役」という生き方


【リグミの解説】

本日の新聞1面トップ3記事の「スタンプ」

読売新聞
① 【政府広報】 「日米防衛指針と並行協議」
② 【政府広報】 「補正13.1兆円閣議決定」
③ 【発表引用】 「大島渚監督死去」


朝日新聞
① 【司法広報】 「警視庁の発表『違法』」
② 【政府広報】 「首都高47キロ大規模改修」
③ 【発表引用】 「大島渚監督が死去」


毎日新聞
① 【政府広報】 「先島諸島に空自配備」
② 【発表引用】 「大島渚さん死去」
③ 【司法広報】 「アレフ、都に勝訴」


日経新聞
① 【企業広報】 「電力供給、家庭も一役」
② 【シリーズ】 「さまよう『非正規博士』 ~働けない若者の危機」
③ 【政府広報】 「円借款、ドルでも返済」


東京新聞
① 【司法広報】 「『オウム犯行』公表違法」
② 【都政広報】 「小型芝生墓地を整備」
③ 【発表引用】 「大島渚監督死去」


「オウム犯行」公表についての判決
本日の新聞1面トップは、朝日新聞と東京新聞が「警視庁による『オウム犯行』公表は違法」との東京地
裁の判決に関する記事です。

警視庁は、なぜ警察庁長官銃撃事件の時効直後に「オウム真理教の犯罪だった」と公表したのでしょうか。自分たちの組織の長が狙撃され重体になった前代未聞の事件で、容疑者を公訴できなかったことを恥とし、組織の名誉ために「犯人はわかっていた」と自己弁明したいためだったのではないか。そんな憶測を思わずしてしまいます。

「無罪推定の原則に反するだけでなく、刑事司法の原則を根底からゆるがすもので、重大な違法性がある」との裁判長の言葉を、警察組織は重く受け止める必要があると思います。当時、どういう理由と正当性でこの発表を行ったでしょうか。

公僕の説明責任と結果責任
被告となった当時の池田克彦・警視総監は、「公務員個人は民事上の損害賠償を負わない」との理由で、
損害賠償請求が棄却されました。企業でも、株式会社の取締役は、個人の経営責任を株主代表訴訟で問われる時代です。億単位の損害賠償を請求されるのが当たり前になっています。そのことの是非はありますが、公務員の幹部・責任者クラスが、「民事上の損害賠償を追わない」という法律の位置づけには、素朴な疑問があります。

公務員を意味する公僕とは、文字通り「公(おおやけ)の僕(しもべ)」です。説明責任と結果責任の在り方を再考すべきかもしれません。池田氏は、現在の原子力規制庁長官です。こうした重要なポストに引き続き就いていればなおのこと、説明責任を果たしていただくことを期待します。

大島渚監督の訃報
他の記事では、映画監督の大島渚さんの死去(80歳)を伝える記事が、大きく報道されました。大島さん
は、1996年に脳出血で倒れ、『御法度』(1999年公開)以降はリハビリに励んでいたと東京新聞の記事にあります。10年以上作品を作らなくても現役の映画監督と社会的に認知されていたから、各紙の見出しの多くも「大島渚監督」となったのだと思います。

「私は〇〇である」という認識をアイデンティティー(自己同一性)と言います。アイデンティティーは、心理的な安定をもたらします。生きていく上でなくてはならないものともいえます。アイデンティティーは、自分を納得させる内面的なものですが、社会的に認知される職業などによって、人々と共有できるものとなります。

映画の主人公を生きる
大島さんが、映画監督としての自己に、晩年どんな思いをお持ちだったかは知りませんが、「次の作品」を
自分の最高傑作にする、との希望を抱いていたのではないか。そんな想像を巡らせました。同時に、生きるとは、生き切ることであり、「次の作品」を撮ることができなかったとしても、その人の人生そのものこそが、「最後の最高の作品」になっていくのが、人間の素晴らしさではないかとも思いました。

私たちはみな、自分を主人公にした物語を生きています。「私は〇〇である」という映画の主演俳優にしてにして脚本家、そして監督でもあります。大島渚さんの訃報に接して、「生涯現役」という生き方が、日本のこれからの社会の在り方のヒントになるかもしれないと感じました。監督のご冥福をお祈り致します。

(文責:梅本龍夫)
 





【記事要約】 「日米防衛指針と並行協議」

  • 政府は15日、集団的自衛権の行使に関する憲法解釈を変更した場合の日米協力の在り方の米側との協議について、「日米防衛協力のための指針(ガイドライン)」の再改定と並行して行う方針を固めた。
  • 日米両政府は、ガイドライン改定に向けた協議を開始する。協議には少なくとも1年程度かかるとみられる。中国の軍事力増強などを踏まえ、日米同盟の強化を目的に見直し内容をを議論する。
  • 共同活動中の米艦船が攻撃された場合、自衛隊が防護することを可能とするなど、解釈変更に伴う自衛隊の活動拡大を新たなガイドラインに盛り込む方向となる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





【記事要約】 「警視庁の発表『違法』」

  • 東京地裁は15日、1995年の警察庁長官銃撃事件を、警視庁が「オウム真理教による犯行」と2010年に発表したことは、教団から派生した「アレフ」の名誉を傷つけたとし、100万円の賠償と謝罪文の交付を都に命じる判決を下した。
  • 警視庁は、事件の時効が成立した直後に、「オウム真理教の信者グループが松元智津夫教祖(死刑囚)の意思の下に、組織的・計画的に敢行したテロだった」と断定した。これに対し、東京地裁は、「教団とアレフは実質的に同一団体だと一般的に認識されていることは明らかで、発表によりアレフの社会的評価は低下した」と認めた。
  • 石井浩裁判長は、裁判を経ずに犯人を断定したことについて「無罪推定の原則に反するだけでなく、刑事司法の原則を根底からゆるがすもので、重大な違法性がある」と指摘。警視庁の対応を厳しく批判した。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/







【記事要約】 「先島諸島に空自配備」

  • 政府は、航空自衛隊の戦闘機部隊を先島諸島に配備することを検討し始めた。尖閣諸島の警戒監視を強化するため、沖縄本島より西に配備する。
  • 中国は、尖閣諸島の領有を主張しており、同国機が日本の領空に接近する事態が増えている。これに対し、F15戦闘機が緊急発進(スクランブル)で対応しているが、那覇基地から尖閣までは約420キロあり、最高速度で飛行しても20分程度かかる。
  • 警戒態勢を強化するため、尖閣諸島により近い下島空港などへの配備の可能性を調査する費用を来年度予算に計上する。しかし同空港は、軍事利用しないとの覚書を政府と交わしており、沖縄県は「覚書は今も有効で、自衛隊の利用は認められない」との立場。県側の理解を得る作業は難航するとみられる。

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





【記事要約】 「電力供給、家庭も一役」

  • 東芝は、数十万世帯の蓄電池を管理する大規模な情報システムを実用化し、2年後に電力会社に提供することを目指す。今月中に横浜で世界初の実証実験を開始する。ソニーやシャープなど電池メーカーも参加する。
  • 蓄電池を使った電力の需給調整システムの概要は、以下の通り。①電力会社が天気や気温などの予測データを活用、②インターネットを経由した遠隔操作で各家庭へ割安な夜間などに充電を指示、③需要ピーク時に蓄電池から工場などに電力を供給―。
  • 政府は蓄電池の普及を後押ししており、国内の出荷量は2020年に2011年度実績に約20倍に拡大する見通し(矢野経済研究所調べ)。東芝の蓄電池管理システムは、「スマートシティ」の中核技術となるもので、発電設備の投資を抑制し、電気料金の引き下げにつながる。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





【記事要約】 「『オウム犯行』公表違法」

  • 東京地裁は、公訴時効が成立した警視庁長官銃撃事件で、警視庁が「オウム真理教の信者グループによる組織的な犯行」と公表したことについて、「公表には重大な違法性がある」とし、都より原告の「アレフ」に対して100万円の賠償と謝罪文の交付を命じた。
  • 石井浩裁判長は、検察が不起訴にした信者について、警視庁が事件に関与したと断定して発表したことは「無罪推定の原則に反するばかりでなく、刑事司法制度の基本原則を根底からゆるがすもの」と強く批判した。
  • 教団の主流派である「アレフ」は、東京都と当時の池田克彦・警視総監(現・原子力規制庁長官)に計5000万円の損害賠償などを求めていた。池田氏個人への請求は、「公務員個人は民事上の損害賠償を負わない」との理由で、請求を退けられた。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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