2013.01.14 mon

新聞1面トップ 2013年1月14日【解説】「坂の上の雲」以後

新聞1面トップ 2013年1月14日【解説】「坂の上の雲」以後


【リグミの解説】

新聞1面3大記事の「スタンプ」

読売新聞:
① 【独自取材】 「谷崎、ノーベル賞候補4回」
② 【政府広報】 「玄葉前外相秘書が接触 ~スパイ疑惑の中国元書記官」
③ 【世論調査】 「安倍内閣支持68%」


朝日新聞:
① 【独自取材】 「避難の学校、戻らぬ児童」
② 【政府広報】 「物価目標2%明記」
③ 【引用記事】 「集団的自衛権の行使容認説明へ」


毎日新聞:
① 【引用記事】 「首相、米に『見直し』伝達」
② 【独自取材】 「運動場、金網越しの空 ~東京拘置所」
③ 【政府広報】 「『2015年に45%』先送り ~所得税最高税率引き上げ」


日経新聞:
① 【政府広報】 「贈与非課税、孫も対象」
② 【シリーズ】  「転職ブーム偏る恩恵 ~働けない若者の危機」
③ 【企業広報】 「iPhone5パネル減産」


東京新聞:
① 【独自取材】 「海渡る『坂の上の雲』」
② 【独自取材】 「福島新成人、故郷に誓い」
③ 【独自取材】 「帝京、史上初4連覇」


読売の世論調査
読売新聞の1面3番記事は、世論調査です。安倍政権と自民党に対する支持が上がってきている数値です。
その他の質問で、国論が分かれているテーマについて、興味深い結果が出ています。

「安全性を確認した原発の運転再開について」
「賛成」=44% 「反対」=46%


「TPPの参加について」
「賛成」=51% 「反対」=32%


「インターネットを使った選挙運動を認めることについて」
「賛成」=49% 「反対」=39%


「東京でのオリンピック開催について」
「賛成」=78% 「反対」=18%


原発については、依然として国論がきっぱり二分されている様子が、数値に表れています。一方、オリンピック開催について、イスタンブールとマドリードの地元民は、7割強の賛成と言われ、東京は5割を切る数字でした。ロンドン・オリンピック後に日本の賛成者も増えたと言われていましので、6割前後ぐらいかと想定していましたので、8割近い数字になったのは意外でした。調査に答えた人の世代情報など、分析が必要そうです。

「坂の上の雲」以後
1面トップは、読売と東京がそろって文学に関連する記事です。読売新聞は、ノーベル文学賞を選考する
スウェーデン・アカデミーへの情報公開請求で得た情報です。ノーベル文学賞候補に谷崎潤一郎の名が挙がっていたのは、初受賞となった川端康成に連なる日本文学の系譜を感じさせて、なるほどと思いました。しかし、詩人の西脇順三郎も4回候補に挙がっていたことは、驚きでした。

詩集『Ambarvalia』に収められた「ギリシャ的抒情詩」は、それまでの日本文学に共通してあった湿潤な情緒をまったく感じさせず、地中海の乾いた気候風土の感性を、日本語の短文に凝縮した傑作でした。日本語が西欧と邂逅し、スパークすることで、東でも西でもない、融合進化した新しい文学の明るい芳香が立ち上るようでした。そんな文学が、ノーベル賞の候補になっていたことは、「辺境の日本の特殊性」の評価軸とは違う、もっとグローバルで普遍的な感性の発露にも着目されていたことを意味するようで、新鮮でした。

一方の東京新聞は、司馬遼太郎の『坂の上の雲』を苦労して英訳出版した話です。累計2000万部を超える国民作家の大ベストセラーが、海外に紹介される意義について、司馬遼太郎記念館の館長が語っている言葉が印象的です。「明治は日本人が最も日本人らしく生きた時代。公私のバランスが良く、地に足を着けて物事を考えていた」。

「坂の上の雲」に手が届きかけた日露戦争の勝利(1905年)のあと、日本は急速にバランスを崩し、坂を転げ落ちました。明治維新から1945年の敗戦までの近現代史の解読は、まだまったく終わっていません。日本が未来志向の国家になる上で成し遂げなければならない大きな宿題です。

(文責:梅本龍夫)
 





【記事要約】 「谷崎、ノーベル賞候補4回」

  • 作家の谷崎潤一郎と詩人の西脇順三郎の2人が、1958~1962年ノーベル文学賞の候補に4回なっていた。同賞を選考するスウェーデン・アカデミーへの情報公開請求で判明した。
  • 特に1960年には、谷崎が最終候補の5人に残った。川端康成の1968年の受賞以前に、日本人初の受賞の大きな可能性があったことがわかった。
  • 1958~1962年の日本人ノーベル文学賞候補者は、以下の通り。▽1958年「谷崎、西脇」、▽1960年「谷崎(最終候補)、西脇」、▽1961年「谷崎、西脇、川端」、▽1962年「谷崎、西脇、川端」―。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





【記事要約】 「避難の学校、戻らぬ児童」

  • 東京電力福島第1原発事故で、避難のために役場機能をごと県内外に移設し、避難先で授業を再開した8町村の小学校で、2013年度の入学予定の新入児童が17%に留まることが判明した。各自治体への取材による。
  • 福島県双葉郡と飯館村の小学校の新入児童は、以下の通り。▽2013年度の本来の新入予定児童数=603人、▽実際の新入予定児童数=105人(17.4%)、▽転入予定の新2~6年生=30人―。
  • 2013年度は、2012年度の割合よりはやや上向いた。しかし、子供が戻らない状況が続いており、自治体関係からは、地域社会の将来を心配する声が寄せられている。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





【記事要約】 「首相、米に『見直し』伝達」

  • 安倍首相は13日、NHKの番組で、オバマ米大統領との日米首脳会談で、集団的自衛権に関する憲法解釈の見直しを加速させる方針を伝える、と語った。米側が歓迎する集団的自衛権の行使容認に前向きな姿勢を示すことで、同盟強化の第一歩としたい考えだ。
  • 米軍普天間基地の移設問題については、「責任を持って考えていくと述べたい」と語った。一方、環太平洋パートナーシップ協定(TPP)については、「まだ状況の分析が十分でない」と慎重姿勢だった。
  • 日銀との共同文書に入れるとする2%の物価上昇目標については、長期でなく中期目標とすべきとの考えを示した。持論の憲法改正については、「民主党の中の賛成者の支持も得る大きな構えでいく」と語った。

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





【記事要約】 「贈与非課税、孫も対象」

  • 政府・自民党は、子への財産の贈与について2500万円まで非課税とする制度を、孫まで対象とする方針だ。合わせて、制度利用側も年齢を65歳から60歳に引き下げ、若年層への資産移転を促す。
  • 「相続時精算課税制度」と呼ばれる、親から子への贈与と相続時の相続額を合算して相続税額を計算する制度の対象拡大となる。20歳以上の推定相続人(原則として子)が対象だが、これに20歳以上の孫を加える。
  • 家計にある約1500兆円の金融資産のうち、6割は高齢者が持っている。政府・自民党内には、贈与を促し、眠っている資産を動かさなければ個人消費の活性化につながらない、との見方が多い。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





【記事要約】 「海渡る『坂の上の雲』」

  • 司馬遼太郎の長編歴史小説『坂の上の雲』の英訳本が、英国の出版社から刊行された。国民作家と呼ばれる司馬さんの本は、640冊以上出版されたが、今まで英訳されたのは10冊にすぎない。
  • 江戸時代の藩制など、歴史的知識が必要なこと、独特な文体であること、登場人物が多く呼び名が場面ごとに変わり、外国人名や武器名が当時の言い方が出てくるなど、翻訳者は「気が遠くなるようなこともあった」と語る。
  • 司馬遼太郎記念館の上村館長は、「明治は日本人が最も日本人らしく生きた時代。公私のバランスが良く、地に足を着けて物事を考えていた。経済が世界規模になり外交が問われる今、日本人の本質を描いた作品が海外で出るのはタイムリーで意義深い」と話す。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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