【リグミの解説】
新聞1面3大記事の「スタンプ」
読売新聞:
① 【独自取材】 「谷崎、ノーベル賞候補4回」
② 【政府広報】 「玄葉前外相秘書が接触 ~スパイ疑惑の中国元書記官」
③ 【世論調査】 「安倍内閣支持68%」
朝日新聞:
① 【独自取材】 「避難の学校、戻らぬ児童」
② 【政府広報】 「物価目標2%明記」
③ 【引用記事】 「集団的自衛権の行使容認説明へ」
毎日新聞:
① 【引用記事】 「首相、米に『見直し』伝達」
② 【独自取材】 「運動場、金網越しの空 ~東京拘置所」
③ 【政府広報】 「『2015年に45%』先送り ~所得税最高税率引き上げ」
日経新聞:
① 【政府広報】 「贈与非課税、孫も対象」
② 【シリーズ】 「転職ブーム偏る恩恵 ~働けない若者の危機」
③ 【企業広報】 「iPhone5パネル減産」
東京新聞:
① 【独自取材】 「海渡る『坂の上の雲』」
② 【独自取材】 「福島新成人、故郷に誓い」
③ 【独自取材】 「帝京、史上初4連覇」
読売の世論調査
読売新聞の1面3番記事は、世論調査です。安倍政権と自民党に対する支持が上がってきている数値です。その他の質問で、国論が分かれているテーマについて、興味深い結果が出ています。
「安全性を確認した原発の運転再開について」
「賛成」=44% 「反対」=46%
「TPPの参加について」
「賛成」=51% 「反対」=32%
「インターネットを使った選挙運動を認めることについて」
「賛成」=49% 「反対」=39%
「東京でのオリンピック開催について」
「賛成」=78% 「反対」=18%
原発については、依然として国論がきっぱり二分されている様子が、数値に表れています。一方、オリンピック開催について、イスタンブールとマドリードの地元民は、7割強の賛成と言われ、東京は5割を切る数字でした。ロンドン・オリンピック後に日本の賛成者も増えたと言われていましので、6割前後ぐらいかと想定していましたので、8割近い数字になったのは意外でした。調査に答えた人の世代情報など、分析が必要そうです。
「坂の上の雲」以後
1面トップは、読売と東京がそろって文学に関連する記事です。読売新聞は、ノーベル文学賞を選考するスウェーデン・アカデミーへの情報公開請求で得た情報です。ノーベル文学賞候補に谷崎潤一郎の名が挙がっていたのは、初受賞となった川端康成に連なる日本文学の系譜を感じさせて、なるほどと思いました。しかし、詩人の西脇順三郎も4回候補に挙がっていたことは、驚きでした。
詩集『Ambarvalia』に収められた「ギリシャ的抒情詩」は、それまでの日本文学に共通してあった湿潤な情緒をまったく感じさせず、地中海の乾いた気候風土の感性を、日本語の短文に凝縮した傑作でした。日本語が西欧と邂逅し、スパークすることで、東でも西でもない、融合進化した新しい文学の明るい芳香が立ち上るようでした。そんな文学が、ノーベル賞の候補になっていたことは、「辺境の日本の特殊性」の評価軸とは違う、もっとグローバルで普遍的な感性の発露にも着目されていたことを意味するようで、新鮮でした。
一方の東京新聞は、司馬遼太郎の『坂の上の雲』を苦労して英訳出版した話です。累計2000万部を超える国民作家の大ベストセラーが、海外に紹介される意義について、司馬遼太郎記念館の館長が語っている言葉が印象的です。「明治は日本人が最も日本人らしく生きた時代。公私のバランスが良く、地に足を着けて物事を考えていた」。
「坂の上の雲」に手が届きかけた日露戦争の勝利(1905年)のあと、日本は急速にバランスを崩し、坂を転げ落ちました。明治維新から1945年の敗戦までの近現代史の解読は、まだまったく終わっていません。日本が未来志向の国家になる上で成し遂げなければならない大きな宿題です。
(文責:梅本龍夫)
【記事要約】 「谷崎、ノーベル賞候補4回」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
【記事要約】 「避難の学校、戻らぬ児童」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
【記事要約】 「首相、米に『見直し』伝達」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
【記事要約】 「贈与非課税、孫も対象」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 「海渡る『坂の上の雲』」