【リグミの解説】
1月8日の「リグミの解説」で、新聞記事に「スタンプ」を押し「色分け」をするアイデアを提案しました。本日の各紙の1面記事3つずつについて、スタンプを試してみました。
1面のトップ3記事に「スタンプ」
読売新聞:
① 「『日銀に緩和期待』明記」 【政府広報】(政府の緊急経済対策)
② 「無期限緩和を検討」 【政府広報】(日銀が物価目標2%を検討)
③ 「住宅給付金、年収600万以下」 【政府広報】(消費増税にからむ自公方針)
朝日新聞:
① 「日本原電、発電せず最高益」 【独自取材】(問題提起=電気料金にツケ)
② 「尖閣警備、海保400人専従」 【政府広報】(海上保安庁の尖閣対策)
③ 「教育改革、顔ぶれ安倍色」 【政府広報】(政府の教育再生実行会議の陣容)
毎日新聞:
① 「石綿基準超え17ヵ所」 【独自取材】(問題提起=震災復興問題の氷山の一角)
② 「復興予算、19億円増額」 【政府広報】(政府の復興推進会議)
③ 「所得3000万円超で調整」 【政府広報】(所得増税の自公方針)
日経新聞:
①「日銀、雇用拡大も責任」 【独自取材】(安倍首相インタビュー)
②「物価目標2%明記」 【政府広報】(政府と日銀の共同文書方針)
③「相続税の基礎控除縮小」 【政府広報】(政府・自民の相続税改定方針)
東京新聞:
①「除染下請け、天引き横行」 【独自取材】(問題提起=除染作業支払の不適切さ)
②「物価目標に達成期限」 【独自取材】(安倍首相インタビュー)
③「飯館村民7割」 【世論調査】(問題提起=除染目標達成でも帰村せず)
内訳としては、【政府広報】=9(60%)、【独自取材】=5(33%)、【世論調査】=1(7%)です。東京新聞を除く全国紙で見ると、【政府広報】=9(75%)、【独自取材】=3(25%)です。特に読売新聞は、4番目記事の「がれき処理1~3割」(環境省のまとめ)を含めて、1面記事すべてが【政府広報】です。
無批判に記事を読む傾向
新聞を日常風景として見ていると、その記事の背景がどういうものか、何を意図しているかに対して無自覚になってきます。政府や行政などが打ち出す方針が、新聞によってアドバルーンのように打ち上げられ、読者はそれを読んで追認する、という構図になります。
昨年末の衆院選の序盤から、各紙一斉に世論調査を行い、いずれも「自民優勢」を伝えたのは記憶に新しいです。世論調査そのものは、手法的な限界があり、データの扱いには注意を要しますが、調査して報道すること自体は、読者に判断材料を与えるものとして一定の価値があると思います。問題は、「政府広報」の類の記事をいつも無批判に見ているうちに、世論調査の動向も「従うべきもの」と無意識に受け止めてしまう可能性があることです。
1面トップに広報記事を載せない
新聞記事を「「決定事項」のように受け止めるのでなく、それをひとつの情報や意見として参考にし、自分独自の「ビュー」(視点、考え方)を具体化することが大切だと思います。新聞には、そうした基本的なユーザ価値を提供する姿勢を望みます。具体的には、新聞1面トップ記事は、原則として「政府広報」や「企業広報」を持ってこないようにすることが、新聞改革の最初の小さな一歩になると思います。
朝日新聞、毎日新聞、東京新聞は、1面トップに「独自取材」をもって来ていますが、こういう紙面は読みごたえがあります(日経のトップ記事は「独自取材」ですが、安倍首相のインタビューで「政府広報」に近い内容)。なぜなら、記事に中に独自の問題提起があり、批判精神が刺激されるからです。その問題指摘や批判が妥当かどうかは注意して見る必要がありますが、それこそ読者の責任でやるべきことです。無批判に無自覚に「政府広報」を受け止めるよりは、健全であると思います。
政府の会議を実況中継する
新聞記事のセグメンテーションについても、1月7日の「リグミの解説」で提案をしました。「保守(右系)―リベラル(左系)」「政府・行政の目線―大衆・市民の目線」という2軸で、4つのセグメントに分類するというアイデアです。このやり方で、朝日新聞の3番目の記事(「教育改革、顔ぶれ安倍色」)を見ると「リベラル(左系)」 x 「政府・行政」というセグメントの記事になります。
記事そのものは、「政府広報」のレベルですが、朝日はリベラル色が強いため、保守色が強いメンバー選定に「安倍色」という表記で、読者に注意を喚起しています。
教育は、国の将来を決める長期的取り組みの要となります。その方針が、どういう思想や価値観の人々によって議論されようとしているのか。メンバーとなる委員の「主義」が偏っていないか、多様な視点や価値観を反映した議論が可能か、国民は注目する必要があると思います。
「教育再生実行会議」の議論の結果だけでなく、各委員がどういう発言をしているかも報道し、議論に間接的に参加できるような記事を、シリーズで発信するぐらいの意欲があってもいいテーマです。批判的解説を加えた「実況中継」ができれば、新聞のユーザ価値は大いに上がるのではないでしょうか。
(文責:梅本龍夫)
【記事要約】 「『日銀に緩和期待』明記」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
【記事要約】 「日本原電、発電せず最高益」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
【記事要約】 「石綿基準超え17ヵ所」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
【記事要約】 「日銀、雇用拡大も責任」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 「除染下請け、天引き横行」