【リグミの解説】
記事に「スタンプ」
「リグミの解説」では、新聞記事に「スタンプ」を押して、記事の種類を「色分け」することをについて提案しています(2013.01.04、2013.01.07)。3つの軸が考えられます。
1種類目のスタンプ
第1軸が、独自の取材で隠された事実を掘り起こす記事です。何と言っても新聞のユニーク価値は、「特ダネ」(F-1)の発掘にあります。
そこまではいかないが、事実確認をしっかり行った「独自取材」(F-2)。そして選挙などで民意がどこにあるかを探る「世論調査」(F-3)などが考えられます。(「F」はFactの頭文字。事実の掘り起し)。
2種類目のスタンプ
第2軸が、社会問題などのテーマを決め、掘り下げていく記事です。シリーズで展開するパターンが多いです。当然、独自の取材が前提ですが、第1のケースよりもより調査(リサーチ)や検証をじっくりやっていきます。第1軸が「What」を報道するのに対して、第2軸は「Why」を重視します。
社会問題を独自の視点で連続記事にする「シリーズ」(S-1)、人物像などにスポットライトを当てる「ストーリー」(S-2)、記者や論説委員が、署名入り(場合によって顔写真入り)で、独自視点や論説を打ち出し、世論に問う「ディベート」(S-3)が考えられます。(「S」はSeries、Story、Statement [声明、論説] の頭文字)。
3種類目のスタンプ
第3軸が、権力や企業などの大きな組織が出すプレスリリース、公式情報、リーク情報を掲載するケースです。独自取材の形式を取りますが、役割は情報源の広報誌と大同小異です。
典型的なのが「政府広報」(R-1)の記事。政府は、首相、官邸、内閣、与党幹部の他、中央省庁など行政の情報も入ります。「企業広報」(R-2)もあります。日経新聞の1面トップ記事によくあるパターンです。少し趣は異なりますが、「他紙追随」(R-3)もここに分類します。通信社の配信記事、海外メディアの翻訳や内容紹介記事、他紙の特ダネの追随記事などです。(「R」はReleaseの頭文字。プレスリリースの類という意味)。
本日の新聞1面トップ記事
この分類で、本日の新聞1面トップ記事に独断で「スタンプ」を押してみます。
読売新聞: 「防衛費11年ぶり増額」・・・・・・・【政府広報】(R-1)
朝日新聞: 「警官採用、ポリグラフ検討」・・・【政府広報】(R-1)
毎日新聞: 「政策協定に『雇用安定』」・・・・・【政府広報】(R-1)
日経新聞: 「官民基金、成長戦略の柱」 ・・・【政府広報】(R-1)
東京新聞: 「門前払い、他に2件」 ・・・・・・・・【独自取材】(F-2)
歴史のファーストドラフト
東京新聞の記事は、昨日の「特ダネ」的な記事のフォローアップ記事。新聞記事の影響で、東京都がすぐに動き出しました。猪瀬都知事もツイッターでメッセージを発信。メディア効果が上がった好例です。
朝日新聞は、1面の2番記事で、「手抜き除染」の「特ダネ」記事のフォローアップです。作業員が緊張している様子を報道。この特ダネはテレビ朝日の報道ステーションでも連動され、社会問題になりました。新聞の一定の役割を果たしたと思います。
「ジャーナリズムの使命は、歴史のファーストドラフトを書くこと」という言葉があるそうです(「NEWSWEEK物語」)。「政府広報」に終始せず、隠された事実を掘り起こす記事、さらになぜ問題が起きるのか、どうしたら社会はもっと良くなっていくのか、時間軸と空間軸のスケールをたっぷりとった記事を期待したいと思います。
(文責:梅本龍夫)
【記事要約】 「防衛費11年ぶり増額」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
【記事要約】 「警官採用、ポリグラフ検討」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
【記事要約】 「政策協定に『雇用安定』」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
【記事要約】 「官民基金、成長戦略の柱」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 「門前払い、他に2件」