2013.01.08 tue

新聞1面トップ 2013年1月8日【解説】新聞記事に「スタンプ」

新聞1面トップ 2013年1月8日【解説】新聞記事に「スタンプ」


【リグミの解説】

記事に「スタンプ」
「リグミの解説」では、新聞記事に「スタンプ」を押して、記事の種類を「色分け」することをについて
提案しています(2013.01.042013.01.07)。3つの軸が考えられます。

1種類目のスタンプ
第1軸が、独自の取材で隠された事実を掘り起こす記事です。何と言っても新聞のユニーク価値は、「特
ダネ」(F-1)の発掘にあります。

そこまではいかないが、事実確認をしっかり行った「独自取材」(F-2)。そして選挙などで民意がどこにあるかを探る「世論調査」(F-3)などが考えられます。(「F」はFactの頭文字。事実の掘り起し)。

2種類目のスタンプ
第2軸が、社会問題などのテーマを決め、掘り下げていく記事です。シリーズで展開するパターンが多い
です。当然、独自の取材が前提ですが、第1のケースよりもより調査(リサーチ)や検証をじっくりやっていきます。第1軸が「What」を報道するのに対して、第2軸は「Why」を重視します。

社会問題を独自の視点で連続記事にする「シリーズ」(S-1)、人物像などにスポットライトを当てる「ストーリー」(S-2)、記者や論説委員が、署名入り(場合によって顔写真入り)で、独自視点や論説を打ち出し、世論に問う「ディベート」(S-3)が考えられます。(「S」はSeries、Story、Statement [声明、論説] の頭文字)。

3種類目のスタンプ
第3軸が、権力や企業などの大きな組織が出すプレスリリース、公式情報、リーク情報を掲載するケース
です。独自取材の形式を取りますが、役割は情報源の広報誌と大同小異です。

典型的なのが「政府広報」(R-1)の記事。政府は、首相、官邸、内閣、与党幹部の他、中央省庁など行政の情報も入ります。「企業広報」(R-2)もあります。日経新聞の1面トップ記事によくあるパターンです。少し趣は異なりますが、「他紙追随」(R-3)もここに分類します。通信社の配信記事、海外メディアの翻訳や内容紹介記事、他紙の特ダネの追随記事などです。(「R」はReleaseの頭文字。プレスリリースの類という意味)。

本日の新聞1面トップ記事
この分類で、本日の新聞1面トップ記事に独断で「スタンプ」を押してみます。


読売新聞: 「防衛費11年ぶり増額」・・・・・・・【政府広報】(R-1)
朝日新聞: 「警官採用、ポリグラフ検討」・・・【政府広報】(R-1)
毎日新聞: 「政策協定に『雇用安定』」・・・・・【政府広報】(R-1)
日経新聞: 「官民基金、成長戦略の柱」 ・・・【政府広報】(R-1)
東京新聞: 「門前払い、他に2件」  ・・・・・・・・【独自取材】(F-2)


歴史のファーストドラフト
東京新聞の記事は、昨日の「特ダネ」的な記事のフォローアップ記事。新聞記事の影響で、東京都がすぐ
に動き出しました。猪瀬都知事もツイッターでメッセージを発信。メディア効果が上がった好例です。

朝日新聞は、1面の2番記事で、「手抜き除染」の「特ダネ」記事のフォローアップです。作業員が緊張している様子を報道。この特ダネはテレビ朝日の報道ステーションでも連動され、社会問題になりました。新聞の一定の役割を果たしたと思います。

「ジャーナリズムの使命は、歴史のファーストドラフトを書くこと」という言葉があるそうです(「NEWSWEEK物語」)。「政府広報」に終始せず、隠された事実を掘り起こす記事、さらになぜ問題が起きるのか、どうしたら社会はもっと良くなっていくのか、時間軸と空間軸のスケールをたっぷりとった記事を期待したいと思います。

(文責:梅本龍夫)
 





【記事要約】 「防衛費11年ぶり増額」

  • 政府・自民党は7日、2013年度の防衛関係費を11年ぶりに前年比で増額とする方針を固めた。2012年度当当初予算4兆6453億円に対して1000億円超増額(+2.2%)となる。
  • 防衛費は、政府の財政悪化を受け、2003年度から減少し続けている。2012年度の防衛費の約45%(2兆701億円)が自衛隊員の給与や食糧費に充てられており、予算がこれ以上減少すると、装備の調達にも支障をきたしかねない。
  • 中国は、毎年国防予算を増額し、尖閣諸島周辺の日本の領海侵犯を繰り返している。北朝鮮も昨年2度に渡り、事実上の弾道ミサイルを強行発射した。自民党は、民主党が閣議決定した防衛計画の大綱と中期防衛力整備計画を凍結し、年内に改定する。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





【記事要約】 「警官採用、ポリグラフ検討」

  • 警察庁は、警察官の採用試験にポリグラフ(うそ発見器)検査の導入を検討している。背景には、「警官の資質を明らかに欠く者による不祥事の続発」(幹部)がある。
  • 以前に盗撮やわいせつ行為などをした人物が試験を通過し警官になり、同じ過ちを繰り返す例が目立つことから、警察庁は不祥事対策委員会で対策を検討してきた。「徹底した素行調査」は人権侵害になりかねないため、ポリグラフの案が出た。「米国など海外では珍しくない」とされる。
  • 警察庁は導入したい考えだが、採用試験の内容を最終決定するのは、都道府県の人事委員会となる。複数の人事委員会は「就職差別」につながる調査を認めておらず、ポリグラフ検査の採用も不透明だ。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





【記事要約】 「政策協定に『雇用安定』」

  • 政府と日銀は、連携強化を図る政策協定の検討の中で、雇用の安定を目指す方針を明記する方向だ。雇用に対する日銀の責任を明確にすべきとする安倍首相の意向を反映したもの。
  • 日銀法には、雇用に関する規定はないため、協定が現行法の趣旨に沿わなくなる可能性がある。このため、雇用は政府・日銀の共通課題とするとともに、政府側にも経済成長率の数値目標を課す案が出てきている。
  • 首相が求めている2%の物価上昇率目標については、導入を目指す。ただし、達成時期の特定は「市場から非現実的ととらえられ、日銀の信用を失いかねない」(自民党幹部)ため、明記しない方針。具体的な政策手段にも踏み込まず、日銀の自由度を確保する。

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





【記事要約】 「官民基金、成長戦略の柱」

  • 政府は7日、緊急経済対策の骨子を固めた。①復興・防災対策、②成長による富の創出、③暮らしの安心・地域活性化―の3分野を重点とする。
  • 官民ファンドを相次ぎ創設し、民間企業の投融資の呼び水とする。産学協同の先端研究にも思い切った予算配分をする。イノベーション推進のため、科学技術分野に5000億~6000億円配分する。
  • 緊急経対策の関連経費として10.3兆円の国費を計上する。地方や民間企業の負担を合わせると、事業規模は20兆円を上回る見通し。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





【記事要約】 「門前払い、他に2件」

  • 福島第1原発事故で東京都内に自主避難している母親と妹と暮らそうと、都立高校受験を希望した福島の中3男子が、両親同居でないことを理由に都教育委員会に門前払いされた問題で、他にも2件の相談を断っていたことが判明した。
  • 都教委は7日、父母のどちらかの身元引受人が都内にいれば、受験を認める方針に変更すると発表した。川越・入学選抜担当課長は、受験を希望する被災地の中学生が、他にもいるかもしれない」と対応の遅れを認めた。
  • 都教委では、個別の相談が担当者レベルで止まり、課全体で共有されていなかった。内部で方針見直しの議論が本格化したのは、東京新聞の取材を受けた昨年12月中旬以降。川越課長は、「お役所仕事と言われても仕方ない」と話した。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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