2013.01.04 fri

まじめな雑談 【衆院選後の日本はどこへ?】

まじめな雑談 【衆院選後の日本はどこへ?】


あけましておめでとうございます
 
2013年の最初の『まじめな雑談』の編集は、衆院選後の日本の行方です。
ちょっと長い記事ですが、お時間のあるときに、さっと目を通して戴ければ幸いです。
 

消去法の選択?
今回の衆院選での自民党の大勝は、「消去法の選択」だったと言われます。自民党に入れた人は実際のところ、どんな思いで投票したのでしょうか。
(リグミ・SNSの会員による「まじめな雑談」。一部、面談による聞き取りのコメントが入っています)


  • 「自民党の圧勝は、前回の民主党の圧勝と同様に期待感が要因だと思います。しかし、前回の期待感は、政権交代の期待感という新しい政治を求める期待でしたが、今回の期待感は、民主党の不安定感を恐れ安定感を求めて自民党を選んだ、つまり政治の安定感を求めた期待感であると思います」(50代男性)
  • 「2009年の衆院選では民主党に入れました。でもその後の民主党で日本の政治は良くならかかったと感じました。実際、今回の選挙でもテレビなどを見ていても、どこも民主党はダメだというコメントばかり。今回は小選挙区も比例も自民党に入れました。自民党の方がましだと思ったので」(40代男性)
  • 「自民党が大勝したことは、すこし暗くなります。維新の会が大勝するよりはましなのかもしれませんが。リベラルの勢力があまりに弱弱しい状況が問題です。社民、共産は本当に存在感がなくなってしまいました。新しくできた未来の党も、あっという間に分党してしまいました」(20代男性)


小選挙区制を再検討すべき?
民主党と「第3極」が、票を分散させたとも言われます。小選挙区制では、その影響が大きく出ることも、自民党圧勝の一因となりました。

  • 「自分も2009年は民主党に入れたのですが、民主党はもういいなと思いました。日本維新の会の動きにずっと注目してきました。日本はずっと戦後の態勢にあぐらをかいてきたところがあり、ちょっとボケてきていたような感じがして、そこに維新がはっきりと主張するのを聞いて期待したわけです。太陽の党と合併してちょっとおかしくなりましたが、まあ何とかなるかなと思って比例は維新に1票入れました。小選挙区は維新の候補がいなかったので、みんなの党にしました」(50代男性)
  • 「今回は迷ったな~ 自民党の主張はいやなので、小選挙区は民主党。比例はどうしよう・・・社民党の福島さんの言ってることもいいなぁ。共産党の志位さんも演説聞くとぶれてないな、共産党でもいいかも。結局、投票所で決めたのが未来の党でした」(30代女性)
  • 「自民党大勝のニュースを聞いた日、日本国民はこれほど愚かなのか、とわたしは憂鬱でした。民主党が期待を裏切ったからと言って、その代案が自民党ではないだろう、という反応です。しかし、小選挙区制度の欠陥を知り、圧倒的多数の日本国民が自民党に入れたわけではないので、平静になりました」(70代男性)
 自民党は、小選挙区で43%の得票率で79%の議席獲得率でした。一方、民主党は、自民党の半分の23%の得票率でしたが、議席獲得率は9%で自民党の8分の1に留まりました。日本維新の会は得票率9%、議席獲得率5%でした。
 
新しい中選挙区制の在り方を検討すべきタイミングかもしれません。以前の1選挙区あたり3~5人が当選する規模ではなく、当選枠は2人までとするのが、現実的な変更の一案になります。政党選択を第1とするため、同一政党からの立候補は1人まで、という限定もあった方が良いと思います。
 

自民党大勝=「原発維持」の判断?
自民党は、政権公約で原発・エネルギー政策については、「原発再稼働の可否は全原発で3年以内の結論を目指す」というものでした。原発推進を示唆しつつ、巧みに争点から外す「あいまい戦略」を取りました。


  • 「世界中が原発問題に注目しているなか、今回の選挙結果、海外ではどう捉えられてるのかな?と考えると…何か恥ずかしいような、悲しい感じがしますね…。私は日本の国民性に誇りを持ってたので…。前回の民主党圧勝が今回の自民党圧勝にそのまま戻った感じで、結局その当時から何も変わってないってことなのかなあとか思います」(30代女性)
  • 「原発・エネルギー政策」の判断がカギとなると言われた選挙ですが、フタを開けてみたら、景気対策だった、というのは、ちょっと脱力する内容ですが、これがひとつの現実です。でも、3.11以後の日本で芽生えた人々の思いや行動は、まだ始まったばかり。20年スパンで見ていく必要があると思っています」(50代男性) 
  • 本当に難しい状況に日本は置かれている。その事を実感したのか今回の自民党の圧勝です。原発問題もやがて沖縄問題化して一部地域の問題となり、数多くの『しかたのない問題』に加えられることになりそうです。特に今回は、取り返しのつかない『しかたのない問題』となりそうです。本当にヤバい」(50代男性)
実際のところ、有権者は、原発・エネルギー政策について、どのような投票行動をしたのでしょうか。比例代表選での政党別得票率が、全国的な政党支持のひとつの指標になるという考え方もあります。数字を見てみます。各党の得票率は、以下の通りです。
 
①自民党 27.6% ②日本維新の会 20.4% ③民主党 16.0% ④公明党 11.8% ⑤みんなの党 8.7% ⑥共産党 6.1% ⑦日本未来の党 5.7% ⑧社民党 2.4% ⑨新党大地 0.6% ⑩幸福実現党 0.4% ⑪新党改革 0.2% ⑫国民新党 0.1%―。
 
 柏木孝夫・東京工業大学特命教授/先進エネルギー国際研究センター長は、この数字から「原発維持派」の投票率を推測しています。
 
「自民党、幸福実現党、国民新党を除く9党が、実現時期などの違いはあるものの、『原発ゼロ』を掲げている。ただし、日本維新の会、公明党、新党改革は意思表示に不明確な部分が残っているので、この3党に投票した人は「原発ゼロ」派と「原発維持」派が半々であると見なせば、「原発維持」の得票率は44.3%ということになる。
 
 さらに、日本維新の会は、石原慎太郎代表による「原発維持」への踏み込んだ発言もあったので、その得票の4分の3が「原発維持」派だと見なせば、「原発維持」の得票率は49.4%と、ほぼ半数になる。」(日経ビジネスオンライン2012年12月28日
 

原発の国論は二分されたまま?
柏木先生は、原発維持の論者のためか、「原発維持派」が大きくなる推論を試みています。実際には、自民党、日本維新の会、公明党の3党に投票した人のうち、どれぐらいが「原発維持」だったかの推論の仕方によって、「原発維持派」は35%~50%の間に収まる想定になると思います。
 
衆院選後の世論調査でも、「原発維持」と「脱原発」の立場は、依然として二分されています。読売新聞と朝日新聞の昨年12月28日付の調査結果は、以下の通りです。
 
読売新聞: 
「安倍内閣は、安全性を確認した原子力発電所の運転を再開する方針です。この方針に賛成ですか、反対ですか」

「賛成」=46% 「反対」=45%

 
朝日新聞:
「自民党は原子力発電への依存度を減らすことで公明党と合意しましたが、原発ゼロにすることは明確にしていません。自民党のこの姿勢を評価しますか、評価しませんか」

「評価する」=44% 「評価しない」=41%

 
ご覧のとおり、安倍首相の「あいまい戦略」に引きずられたのか、2紙の世論調査の質問の仕方もあいまいで、回答が原発に賛成なのか、反対なのか、ちょっとわかりにくくなっています。
 
ただ、大雑把な推測をすれば、今回の衆院選に投票した人々は、
原発維持」=40%、「脱原発」=40%、「どちらともいえない」=20%
といったバランスではなかったかと思います。原発・エネルギー政策が、「国論を二分する」状態は、続いているのではないでしょうか。
 

日本は「右傾化」している?
安倍首相を「タカ派」とする論評は多く、日本の政治が急速に「右傾化」しているとの指摘が、米ワシントン・ポスト紙、米タイム誌でなされています(毎日新聞12月28日3面)。「リグミの解説2012.12.27」で取り上げられた英エコノミスト誌の論説も同じ流れです。
 
リグミ・SNSでは、「右傾化」を懸念する声が複数寄せられました。


  • 「安倍政権の右寄りの施策は、外交面、教育面など軋轢を生み逆に不安定化させる恐れがあるものです。安定を求めて自民党を選んだものの今後多方面で緊張感を生む施策を見せられるとどうなるでしょうか。」(50代男性)
  • 「最大限今回の結果を好意的に取るとするなら、民主党がリベラルな勢力として立ち直る機会を得た、ということと、維新の会がつまずく可能性が出てきた、というくらいでしょうか。
    ただ、改憲だの、原発再稼働・新規増設だの、いろいろなことをされる可能性がありますから、それをどれだけ防げるか、という問題があって、ぜんぜん喜べないわけですが……。財界重視、保守志向、アメリカ追従の政治とは違った、国民目線の政治を行える政党が力をつけていかなければならないでしょう。」(20代男性) 


一方で、実際の安倍氏の判断や行動は、「現実主義」を取っているとの見方もあります。


「日本が『一国平和主義』から、国際社会での責任を応分に果たしていく体制づくりを進めてきたのが、冷戦後のこの20年余であり、それは現実により適応していくプロセスであった」(毎日新聞12月28日3面、西川専門編集委員)。

 
自民党政権の中枢も、安倍首相は「タカ派」ではなく「現実派」である、との認識が基本のようです。
 
実は「タカ派」と「現実派」という関係ではなく、2つの対立軸で見ていく必要があることがわかります。まず、「タカ派」(保守)か「ハト派」(リベラル)かという価値観や主義の対立軸があり、その上で、「急進的」か「現実的」か、というアプローチや進め方の違いが出てきます。
 
この整理でいくと、安倍首相は、「タカ派」で「現実主義」ということになります。比較として、日本維新の会代表の石原慎太郎氏は、同じ「タカ派」でも、都知事時代に尖閣諸島の東京都の買上げを打ち出したり、衆院選では核武装論まで踏み込むなど、アプローチがより「急進主義」なのだと思います。
 
同様に「ハト派」でも、「現実主義」に基づき「漸進的アプローチ」を取る政治家と、「理想主義」を貫き「急進的アプローチ」を取る政治家がいます。現実派の例としては、従軍慰安婦問題で河野談話を発表した河野洋平・内閣官房長官(1993年当時)が挙げられます。一方、理想派の例としては、沖縄普天間基地問題で「最低でも県外移設」と発言し、CO2削減に関して2020年までに1990年比で25%減を世界に約束した鳩山元首相を挙げたいと思います。


「現実」が自分の政治思想と合致していれば、そこに留まるはず。問題は、「現実」が合致していないケースです。理想主義的で急進的な政治家であれば、急ハンドルを切るかもしれません。現実主義的で漸進的な政治家は、もっと慎重にステップを踏むので、国民が気づかないレベルで少しずつ、右や左に曲がっていきます。安倍首相は、本当は日本をどこに導いていくつもりなのでしょうか。
 
 
心の国境
今日、世界的にナショナリズムが台頭し、日本もその傾向が強くなっているようにも見えます。しかし、そもそも日本は、ナショナリズムの礎となるネーション(国家)の稜線がはっきりしません。国内を見ると、政治や行政が、目に見えない入り組んだ境界線を引き、国外に目を転じると、米中2大国時代の海の境界線づくりの最前線に、日本が位置づけられています。

  • 「わたしが安倍晋三や石原慎太郎に反対する理由は、彼らの世界観が時代遅れだからです。国境を越えることのない愛国心が、どれほど建設的ではないかを、彼らは分かっていないと思います。わたしは、憲法改正を一概に否定する立場ではありませんが、彼らのような時代錯誤的な歴史観(安倍の慰安婦否定発言、石原の南京虐殺否定発言)が前提の改訂は、日本が国際的に孤立化する危険さえあると思います」(70代男性)
 21世紀の日本の「心の国境」を一気に拡大すること。そこに大きなヒントが隠されているように感じます。そのためのヒントは、日本人が本来得意とするチームプレイにあると思います。ナショナリズムは、「ハードパワー」を重視しますが、日本には「ソフトパワー」もいっぱいあります。新春の風物詩である駅伝のようなチームプレイの在り方こそ、日本のソフトパワーの源泉だと思います。
 
そしてチームの境界線を広げると、国境を超えた地域チームや、グローバル・チームが見えてきます。「心の国境」を広げること、そして「Win-Win」を目指した大きなチーム創りを目指す。グローバル駅伝ができるNIPPON。2013年の初夢です。
 
リグミは今年も、「まじめな雑談」を通して時代の今を切り取り、大きな文脈で見えてくるストーリーを、協働して紡ぎ出していきたいと思っています。
 
本年もリグミをよろしくお願い致します
 
(編集責任:梅本龍夫)





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【ごあいさつ】 2012年3月11日リグミがスタートしました 
株式会社リーグ・ミリオン 代表取締役社長



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