2013.01.07 mon

新聞1面トップ 2013年1月7日【解説】新聞の客観視

新聞1面トップ 2013年1月7日【解説】新聞の客観視


【リグミの解説】

日本の新聞の「ビュー」
本日の新聞1面トップは、「場所」を視点に比較します。


読売新聞は「補正予算」の記事。「日本」が対象です。朝日新聞は「東日本大震災の住宅再建支援」の記事。「岩手県・宮城県・福島県」が対象です。毎日新聞は「シリア大統領の演説」に関する記事。当然対象は「シリア」になります。日経新聞は「スマホ動画をTVに配信するサービス」の記事で、対象「日本」。東京新聞は「福島第1原発事故での自主避難」に関連する記事で、対象は「東京と福島」。

東京新聞を除く4紙は、全国紙です。全国紙の1面トップ記事が、日本全体のことを対象にするのは当然です。日本の新聞なのですから、日本の政治、社会、経済、文化などのテーマを報道することは、購読者の求めに応じたことといえます。問題は、日本という「場所」をどう扱うか、どう見つめるか、という「ビュー(視点、考え方)」です。

政府や中央省庁、あるいは経済団体や大手企業の発表を報道すれば、「公」や「お上」の視点が優先されます。1月4日の「リグミの解説」で触れたように、サミットの報道で日本の新聞と欧米メディアの「違い」が際立つと言われます。

権力側である主要先進国の首脳の公式発表写真を、1面トップに当然のように
掲載する日本のメディア。しかし欧米メディアは、サミットに抗議するデモ市民の「ビュー」を優先し、当局の発表内容は相対的に小さい扱いとなるそうです。どちらが良いか以前に、これほどの「違い」があることに、私たちが無自覚だということが、問題だと思います。

発行部数から見る特殊性
日本の新聞は、発行部数でいうと、世界でも例がないほどの規模です。世界一の発行部数と言われる読売
新聞は、約1000万部。朝日新聞が約800万部です。3位の毎日新聞は大分少なくなりますが、それでも約350万部です。この3紙で約2150万部。仮に世帯単位などで平均2人がひとつの新聞に目を通しているとすると、この3紙のいずれかを4300万人が読んでいることになります。国民の3人に1人、成人だけで見れば、4割以上のカバー率になります。

参考まで、世界ランクは1位が読売、2位に朝日、ようやく3位にインドの「The Times of India」が入りますが、発行部数は約380万部。経営的に苦しいと言われる毎日新聞と同程度の規模です。欧米に目を転じると、英国の「The Sun」とドイツの「Bild」がそれぞれ約300万部で、世界ランク7~8位に付けます(参照:日経NBO記事2012.07.27)。

ただし、この2紙はいわゆる「タブロイド紙」で、センセーショナルな事件報道やゴシップ報道などに力を入れる大衆紙という位置づけです。人口は日本より少ないですが、それでも読売、朝日の市場占有率にはまったく及びません。

新聞記事を客観化する手法
突出した発行部数を誇る日本の新聞が、先の衆院選のように、一斉に大規模世論調査をかけ、選挙戦序盤
で「自民党優勢」を大々的に報道すれば、その影響はどれほどのものでしょうか。残念ながら、そのことの是非を問う自省や客観視の記事や論説は、主要紙からは出てきません。欧州の大衆紙以上の発行部数を持ちながら、「大衆」に対して「上から目線」で記事を書く日本の全国紙の特殊性について、私たちはもっと自覚的になる必要がありそうです。

1月4日の「リグミの解説」では、新聞記事に「スタンプ」を押して、「政府広報」「企業広報」「通信社の配信」「他紙の記事の焼き直し」「海外メディアの翻訳」「独自調査記事」「シリーズ企画」といった「色分け」をして、情報を客観視すると良いと述べました。今日はこれに加えて、新聞の論説や解説記事を、4つのセグメントに分けて、相互に比較することを提案したいと思います。

図の①は「保守(右系)」の「政府・行政の目線」、②は「リベラル(左系)」の「「政府・行政の目線」、③は「保守(右系)」の「大衆・市民の目線」、④は「リベラル(左系)」の「大衆・市民の目線」です。

新聞は、どの立場で書いているのか。記事毎に理解することで、私たちは、より客観的で全体観のある「ビュー」(視点、考え方)を持てます。それは、「ファーストビュー」(世の中の大多数の意見、立場)に空気として流されず、「セカンドビュー」(少数の異なった立場の視点、考え方)に耳を傾けられる、成熟した民主主義の在り方をサポートすることにもなると思います。

(文責:梅本龍夫)
 





【記事要約】 「公共事業5兆円」

  • 政府は、緊急経済対策で、公共事業を実質的に5兆~6兆円規模とする方向だ。防災対策に充てる国費を2兆~3兆円規模する。他に総額2兆円程度の臨時交付金を地方向けに拠出し、地方自治体の公共事業負担額を国が肩代わりする。
  • 緊急経済対策は、9兆~10兆円とする方向。内訳は、以下の通り。▽公共事業=2兆~3兆円、▽地方向け臨時交付金=2兆円程度、▽来年度の公共事業前倒し=数千億円、▽子育て支援、雇用対策など―。他に基礎年金の財源不足穴埋めで2.6兆円とし、総額12兆~13兆円規模となる。
  • 日銀による大胆な金融緩和策と合わせ、「15ヵ月予算」(2013年度予算と一体の予算編成)とすることで、切れ目のない経済対策を実行。デフレ脱却を目指す。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





【記事要約】 「住宅再建支援、受給46%」

  • 東日本大震災で「被災者生活再建支援金」を受給した世帯のうち、住宅再建のめどが立ち「加算支援金」を受給した世帯は、岩手、宮城、福島の3県で46%にとどまった。
  • 「被災者生活再建支援金」は、災害で自宅に住めなくなった世帯や長期避難中の世帯に、被害に応じて37万5千円~100万円の「基礎支援金」を支給。災害発生から37ヵ月以内に家を再建すると、さらに「加算支援金」が内容に応じて50万~200万円支給される。東日本大震災では、申請期限を85ヵ月以内に延長。
  • 被災3県の需給状況は、以下の通り。▽岩手県=基礎支援金22,980世帯、加算支援金5,550世帯、加算支援金受給率24.2%、▽宮城県=基礎支援金125,096世帯、加算支援金62,150世帯、加算支援金受給率49.7%、▽福島県=基礎支援金27,394世帯、加算支援金13,712世帯、加算支援金受給率50.1%―。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





【記事要約】 「反体制と対話拒否」

  • シリアのアサド大統領は6日、「暴力に加担し、外国勢力と関係のある組織とは対話しない」と述べた。政府軍の軍事行動は、「国を守る戦い」であり、国家総動員で反体制派を排除すべきと強調した。
  • 反体制武装勢力への金銭と武器の支援停止が、和平の第1条件とする。行き詰った事態を打開するため、国民和解の会議を開き、新憲法を起草して国民投票をする新和平構想を明らかにした。
  • 反体制派の「シリア国民連合」は、アサド氏の演説を「外交努力を踏みにじるものだ」と非難。同連合は、欧米やアラブ諸国など100ヵ国以上が承認している。

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





【記事要約】 「スマホ向け動画、TVに」

  • NTTドコモとKDDI(au)は、「スマートテレビ」のサービスを開始する。自社のスマートフォンに有料(月額500円程度)で提供しているコンテンツを、加入者の自宅テレビなどで視聴できるようにする。
  • ドコモのスマートテレビサービスの仕組みは、以下の通り。▽光回線などブロードバンドのインターネットで配信、▽自宅の無線LANルーター経由、▽テレビのHDMIにスティックを差し込み利用、▽コンテンツ=映画やTVドラマなど7000作品・アニメ600作品・YouTubeなど動画サイト、▽スマホやタブレットでも視聴可―。
  • CS放送やCATVなど多チャンネル放送と競合する。スマートテレビサービスで先行する米フール―(月額980円)の半額程度の料金となり、映画配信サービスの料金低下につながりそうだ。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





【記事要約】 「福島の中3、転校余儀なく」

  • 福島第1原発事故で東京都内に自主避難している母親と妹と暮らそうと、都立高校受験を希望した福島の中3男子の希望が、都教育委員会に門前払いされた。全日制高校は、「両親そろって転住」が受験資格となるためだ。
  • 選択肢は、①定時制を選択、②福島の高校に入ってから都立高に転学する、③出願までに都内の中学に転校する―となる。友達と一緒の卒業式を区切りに心機一転しよとしていた男子生徒は、がっかりしている。
  • 都教委は東日本大震災後、被災地からの高校生受け入れや、住民票を移さず都内へ避難した中学生の受験に特別な配慮をしている。しかし、中学卒業を機に避難するケースは想定していなかった。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




【本日の新聞1面トップ記事】アーカイブ