2013.01.05 sat

新聞1面トップ 2013年1月5日【解説】「学習する国家」

新聞1面トップ 2013年1月5日【解説】「学習する国家」


【リグミの解説】

本日は、新聞1面トップ記事ではなく、読売新聞のシリーズ企画と、朝日新聞の社説を比較します。

読売: 「プロ軽視の大衆社会 ~甦れNIPPON」(1面、シリーズ企画)
○ 「『専門家』の言うことは信用ならない―そんな風潮が広がっている」
○ 「『うのみにしない』ではなく、専門家を嫌悪し、素人の感覚や感情を優先している」
○ 「民主党の事業仕訳は、「政治指導・脱官僚」の政治手法の象徴だった」
○ 「この『政治ショー』は官僚たたきに拍車をかけた」
○ 民意(世論)や、消費者(お客様)の意向を最優先する中で、プロの矜持が揺らいでいる」
○ 「医師は『患者丸投げ』にすることで、医師の免責にしている」
○ 「人々は専門家よりネットの口コミを信頼し、真偽も責任の所在も不明な言説が影響力をもつ」


この記事には、2人の大学教授の「処方箋」が付いています(6面)。

猪木武徳・青山学院大特任教授は、「人間には、矛盾する異なる考えを同時に持つ『二重思考』がある。そのことを自覚し、矛盾する主張を知的に解釈し、優先順位をつける必要がある。そのためには、国家と個人の間にある『中間組織』を見直し、個々の構成員の欲望をコントロールしながら、互いの関心や利害を調整するプロセスを学習する装置にするとよい」と提案。

細谷雄一・慶大教授は、「ネットの普及は、質の高い情報も低い情報も等価値にする『情報の平等化』をもたらした。すると悪貨(何の根拠もない書き込み)が良貨(優れたジャーナリストが時間をかけて集めた情報)を駆逐し、空気や感情に流される大衆社会が蔓延する。現代の民主主義は、優れた資質を持ち、トレーニングを積んだ専門家なしには機能しない。エリートと民主主義は矛盾しない。あと、理性と感情の緊張感を持続させることが大事。世論に迎合せず、正しいことを評価し、間違いや不正を監視するメディアの役割が重要になる」と語っています。

朝日: 「『私たち』を政治の主語に ~民主主義を考える」(15面、社説)
○ 「人々は『不支持』という負の感情で投票している。どうすれば政治と正の感情でつながれるか」
○ 「市民は陳情し、政治家は予算を引き出す関係から、課題解決を一緒にする関係に変える」
○ 「東京都港区の横尾俊成・区議(31)は、市民との対話で出た提案を実現していく。『1人の偏った代表
者より、100人の『考える素人』の知恵を集めることです』」
○ 「NPO法人グリーンズの鈴木菜央・代表理事(36)は、『他人事』な政治を『自分事』にするために
、誰もが参加できる対話の場を設け、政治家を含むゲストと意見を交わす」
○ 「グリーンバードは、国内外で街を掃除する若者たちのNPOだ。『みんなで汗をかき、周りから『い
いね!』と言ってもらえるのは楽しい。政治もみんなで楽しく、かっこよくやりたい』」
○ 「投票するだけの有権者から主権者へ。「私たち」が主語の民主主義は、きっと楽しい」


時代の要請
読売と朝日の主張は、それぞれに首肯できるところがありますが、目線の置き所と、向かっていく方向の
認識に大きな違いがあります。

読売は、一言で言って「上から目線」。志の高い政治家、有能な専門家、プロの仕事に徹するジャーナリストが、しっかりと大衆を導く必要がある、という立場です。リーダー不在の大衆は、「衆愚」となり、間違った方向に走ると懸念します。

一方朝日は、「対等な目線」を志向しています。大衆が政治を他人事にせず、お互いに主体的に関わり、対話を重ね、できることを実践することで、変化が起きると示唆。「衆知」(多くに人の知恵)を活かす民主主義は「楽しい」という正の感情を燃料にすることが可能、と期待します。

「衆知主義」
リグミは、「衆知主義」を掲げていますので、その意味では朝日の主張に近いと思います。ただ、「衆知
」を上手に引き出すためには、専門家との連動が必要です。読売と朝日の論説の両方に傾聴する必要があります。

「衆知主義」の視点から、
2紙にそれぞれ注文があります。読売新聞は、「大衆」(読売は「市民」という言葉を使っていません)をもっと信頼し、その知恵を引き出す対等目線を学ぶこと。朝日新聞は、「専門家」との信頼関係を再構築する視点を打ち出し、「市民」(朝日は「大衆」という言葉を使っていません)がレベルアップできる場づくりを学ぶこと。

専門家も大衆(市民)も不完全です。しかし、連動し、「Win-Win」の相乗効果を発揮することは可能です。「仮説」を構築し、実践を通して、「検証」していく科学的方法論がヒントになります。これが正しいと上から押し付けず、一緒に考え、共に「仮説―検証」を繰り返すことで、集合的な知恵が引き出されていきます。

大衆と専門家が、駅伝のようにタ
スキをつなぐチームプレイを発揮できれば、日本全体が「学習する国家」(ラーニング・ネーション)となれます。それは日本の民主主義に、大きな果実をもたらしてくれると思います。

(文責:梅本龍夫)







【記事要約】 「露とヘリウム共同開発」

  • 政府は、日露共同のヘリウム生産事業の支援を始める。東シベリアのサハ共和国にあるチャヤンダ天然ガス田が対象。事業に参画する商社の財政支援が中心となる見込み。
  • ヘリウムは、医療用の磁気共鳴画像装置(MRI)から風船のガスまで幅広い用途がある。中国のMRI台数の急増で需要が急増し、供給が逼迫する希少資源。主要生産国の米国が、ヘリウム生産に不向きなシェールガス採掘に移行していることも懸念材料となる。
  • ヘリウムの安定確保と共に、経済協力を通して日露関係を強化する狙いもある。2017年に東シベリアからの輸入開始を目指す。需要急増が見込まれる中国への輸出も見込まれる。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/







【記事要約】 「朴大統領、訪日へ調整」

  • 自民党の額賀・元財務相は4日、安倍首相の特使として訪韓し、朴槿惠(パククネ)・韓国次期大統領と会談。日韓関係の重要性を記した首相親書を手渡した。
  • 朴氏は、安倍首相による早期の特使派遣に謝意を表明。「多くの面で日韓の協力が必要だ。日本とは歴史を直視しつつ、融和と協力の未来を志向する。新政権発足を機に友好関係が緊密になるように努力していく」と述べ、両国の関係改善に取り組む意向を明らかにした。
  • 額賀氏は、朴氏に早期の来日を要請。朴氏は「大変うれしい。日程を調整したい」と応じた。会談では、竹島などの具体的な問題は触れられなかった。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/







【記事要約】 「日韓関係改善で一致」

  • 自民党の額賀・元財務相は4日、安倍首相の特使として訪韓し、朴槿惠(パククネ)・韓国次期大統領と会談。日韓関係の重要性を強調する首相親書を手渡した。
  • 「さまざまな問題があるが、大局的見地に立って関係改善に努力することが大事だ」とする額賀氏に対し、朴氏は「多くの面で協力が必要だ」と応じた。早期の訪日要請に対しても、「大変うれしい。日程を調整したい」と答えた。
  • しかし朴氏は同時に「歴史を直視すること」を日本側に求めており、日韓の意識のすれ違いが改めて明らかになった。朴氏は、当選直後も歴史認識の発言をしており、自衛隊を「国防軍」にすることや憲法改正を選挙公約にした安倍首相への警戒感が強い。会談では、竹島や従軍慰安婦などの具体的な問題は触れられなかった。

(毎日jp http://mainichi.jp/







【記事要約】 「ホンダ、部品費3割減」

  • ホンダは、世界販売の上位3車種の基本構造(車台)を統一することで部品の共通化を促進する。自動車の設計・生産手法を変えることで、部品調達費を大幅に削減する。
  • 現在、世界販売で上位3車種の「シビック」「CRV」「アコード」は、モデルことに部品調達をしている。部品の4~5割を共通化することで、部品1種類あたりの年間発注量を現在の4倍の最大240万個に引き上げる。独フォルクスワーゲン(VW)は、グループ全体の半分の400万台分を大量発注している。
  • 部品調達費は、製造コストの8割程度を占める。ホンダは新興国での拡販を目指しており、今後3~4年で3車種合計の調達費を3割減らす。低価格化で先行するVW等に対抗していく。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/







【記事要約】 「東京、鳥取の55倍排出」

  • 原発のゴミ(使用済み核燃料)の想定排出量を都道府県別に試算した。2007年~2011年の5年間で、排出量トップの東京は、最小だった鳥取の55倍に上った。上位6都道府県で全体の4割を占める。
  • 使用済み核燃料の想定排出量は、以下の通り(2007~2011年、ウラン換算)。▽上位=①東京359.1トン、②大阪339.5トン、③神奈川217.0トン、▽下位=①鳥取6.5トン、②島根8.1トン、③山口16.0トン―。
  • 排出量が少ない自治体が、原発のゴミの保管で大きな負担を強いられる現状には、不満の声がある。原子力資料情報室の伴英幸・共同代表は、「大都市をはじめ電力消費地の自治体は今後、排出した燃料への対応を真剣に考えるべき」と指摘する。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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