2013.01.04 fri

新聞1面トップ 2013年1月4日【解説】「日本新聞記事大賞」をめざす

新聞1面トップ 2013年1月4日【解説】「日本新聞記事大賞」をめざす


【リグミの解説】

独自取材の記事
本日の新聞1面トップは、朝日と毎日が東京電力福島第原発事故に関連する記事です。朝日は、「手抜き
除染」が横行しているとする記事。毎日は、「原発作業員の被曝計が胸部測定のみだったのは不適切」、とする記事です。

いずれも独自の調査報道です。原発事故後、日本のマスコミは、政府・東電の発表を一方的に流すだけの姿勢に終始し、後に「官制報道」と厳しく批判されました。その中で、東京新聞は、独自の原発の調査報道を粘り強く続けてきました。最近は、朝日と毎日も、独自の切り込みをするようになってきました。

ソーシャルメディアとの連動
また、取材アプローチにも新しい試みが見られます。朝日は、ネット環境との連携にも意欲的に取り組み
始めており、デジタル版でも、汚染物を川に流す「手抜き除染」様子などを動画で配信しています。同紙の「ビリオメディア」というシリーズ企画では、10億人がつながるソーシャルメディアの実態を、記者が取材するプロセスを共有する形で記事にしています。

沖縄基地問題について、沖縄に行きツイッターでつぶやきながら歩き、現地でリツイートした人を取材。あるいは、日韓、日中問題についてつぶやき、ネットの翻訳機能を介して、韓国や中国の人とリツイートし合ったりしています。こうした試みが、新聞をどう変えていくか、注目したいと思います。

官制報道
一方、本日の読売は「コンビナートの耐震強化」を目指す経産省の方針、日経は「日米同盟強化」を進め
る政府の方針の記事です。いずれも「官制報道」の枠組みに入るものです。いずれの報道も、政府・省庁が何を考えているか知る機会となり、情報の価値はあります。

ただ、それが「公式」で「正しいもの」というニュアンスが生まれることが問題です。新聞は政府広報誌ではないので、批判の視点、独自の解説、異なった「ビュー」の紹介、国民の声を都度反映させる工夫(ソーシャルメディアの活用も一案)などが必要であると思います。

欧米メディアとの「違い」
自民党の河野太郎・衆院議員と元日経新聞編集委員の牧野洋氏の共著『共謀者たち』(講談社)の中に、
興味深い指摘が出てきます。首相官邸前の脱原発デモについて、日本の新聞がなぜ当初無視し、その後も熱心には報道してこなかったか。「記者クラブ」に詰めて、政府の方針を報道することが主たる仕事になっているからです。

海外メディアと日本の新聞の「違い」が鮮明になるのが、サミットの報道だそうです。ワシントン・ポスト、ニューヨークタイムズなどは、サミットに抗議するデモの動きを1面トップに大きく掲載します。その同じサミット記事を、日本の新聞は政府要人が映るプレスリリース写真と共に、権力の発表内容を掲載。デモのことは殆ど触れません。

中央省庁HP更新情報
リグミ・ポータルには、「中央省庁HP更新情報チェック」というメニューがあります。官庁は、合計で毎
日平均300位の更新情報を発信しています。リグミではそれらの中から、キュレーション感覚で1記事をピックアップし、簡単に内容を紹介し、リンクを貼っています。情報提供が目的なので、「解説」や異なった「ビュー」は加えていません。

新聞記事はすべて、独自の取材や調査に基づくものと読者はなんとなく想定して読みます。でも実際は、「官制報道」が一定の割合を占めています。新聞は、リグミと違って、もっと組織的に、政府や中央省庁が発信する情報をピックアップしているとも言えます。取材はしていますが、報道内容は基本的に「中央省庁HP更新情報」の焼き直しです。

新聞記事に「スタンプ」を押す
新聞は、さまざまな取材方法や情報源を基にした記事が、すべて「一色」で刷られます。それを「色分け」する試みも必要になってきています。たとえ
ば記事ごとに、「政府広報」「企業広報」「通信社の配信」「他紙の記事の焼き直し」「海外メディアの翻訳」「独自調査記事」「シリーズ企画」と言ったスタンプを押すのも一案です。

また、記者をもっと魅力あるストーリーテラーに育て上げる必要もあります。その一環として、記者の写真と署名入りの記事を増やすと良いと思います。その上で、記者の人気投票をやるのも面白いでしょう。「日本レコード大賞」や「直木賞」のように、「日本新聞記事大賞」(仮称)を目指す記者が出てくれば、新聞のイノベーションが進むのではないでしょうか。新春の提案です。

(文責:梅本龍夫)

 





【記事要約】 「コンビナート耐震強化」

  • 政府は、コンビナートの防災強化に乗り出す。将来の大地震に備え、液状化対策や津波対策を講じる。
  • コンビナートは、関連する産業が集積している工業地帯を意味する。石油、鉄鋼、化学、ガス、電力コンビナートが多い。全国に85ヵ所あり、いずれも臨海部に立地する。ほとんどが1950~60年代に埋め立て造成されており、老朽化が目立つ。
  • 第1段階として、首都直下地震が想定される東京湾、南海トラフ地震での被災が予想される大阪湾、伊勢湾のコンビナート約40ヵ所を重点調査する。調査費用は、1ヵ所あたり約2億円想定。政府が一定額補助する方針だ。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/
 





【記事要約】 「手抜き除染、横行」

  • 東京電力福島第1原発の除染作業で、「手抜き除染」が横行している。除去した土や枝葉や洗浄に使った水の一部を、現場周辺の川などに捨てていた。朝日新聞の取材で判明。
  • 環境省が元請けと契約した作業ルールに違反する汚染物の投棄は、ゼネコンや下請け会社からの指示で行った、との証言を作業員約20人から得た。「作業ルール通りやればとても終わらない」という声も上がった。
  • 環境省は、「事実なら重大な問題だ」とし、契約違反と見てゼネコン各社から事情を聴く方針だ。汚染廃棄物の扱いを定めた特別措置法に違反する可能性がある。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/
 





【記事要約】 「手足被ばく測定せず」

  • 東京電力福島第1原発事故後の作業で、足元のがれきなどが高線量であったにもかかわらず、胸部に付けるAPD(警報付線量計)だけで放射線測定をしていた。元東電社員らの証言で判明。
  • 「末端部被ばく」(胴体より手足が多くの放射線量を受けること)や「不均等被ばく」(胴体のうち基本部位の胸部より頭部や腹部が多くの放射線量を受けること)では、胸部とは別の線量計装着が法令で定められている。
  • 東電側は、「当初はベータ線よりガンマ線が高く、胸部のAPDで全身の線量管理をできていた」とする。しかし安斎育郎・立命館大名誉教授(放射線防護学)は、「当初から相当量のベータ線も浴びたはずで、末端部や不均等被ばくは測れない」と指摘。「がん発生時に作業との因果関係が証明できず労働者を救済できない」と警告する。

(毎日jp http://mainichi.jp/
 





【記事要約】 「自衛隊と米軍、協力拡大」

  • 日米両政府は、同盟強化の具体策として、米軍と自衛隊の協力拡大での合意を目指している。自衛隊の海外派遣を随時可能にする。
  • オバマ大統領は、太平洋地域重視を打ち出しており、日本に応分の負担を求めてる。安倍首相も「日米同盟の再構築」を掲げており、自衛隊の役割拡大による国際貢献を主張している。
  • 今月から見直しを開始する日米防衛協力のための指針で、自衛隊の役割を再定義する。政府はその後、根拠となる恒久法の整備に着手する。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/
 





【記事要約】 「隣国の溝、顕著に ~日韓共同世論調査」

  • 東京新聞と韓国・ソウル新聞は、日韓の国民意識を比較する共同世論調査を実施した。竹島問題の解決策について、日韓で大きなずれが見られた。
  • 竹島問題の解決策についての回答は、以下の通り。▽「日本が譲歩すべき」=日本2.5%、韓国77.1%、▽「韓国が譲歩すべき」=日本7.2%、韓国0.8%、▽「双方が妥協し共同統治」=日本37.4%、韓国11.0%、▽「国際司法裁判所で決着」=日本47.0%、韓国11.1%―。
  • 日韓関係について、2005年調査と今回調査の比較は、以下の通り。▽「日韓関係は良くなった」=日本2005年51.2%⇒今回14.6%、韓国2005年44.1%⇒今回8.7%、▽「日韓関係は悪くなった」=日本2005年20.6%⇒今回68.7%、韓国2005年15.7%⇒今回74.3%―。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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