【リグミの解説】
戊辰戦争が始まった日
今日は、戊辰戦争が始まった日。明治元年(1868年)のことでした。維新政府軍(薩摩藩、長州藩らを中核とした軍)と旧幕府軍との戦いで、鳥羽・伏見の戦いから五稜郭における戦いまでの、一連の戦い。なかでも長岡藩(新潟県)や会津藩(福島県)では藩内が戦場となり多くの死傷者を出ました。翌1869年5月に終結(「今日は何の日?1月3日」)。歴史的な政権交代を巡る内戦勃発から145年後の日、歴史の視座から見えてくる日本は、どのような姿でしょうか。
読売新聞の1面トップ記事は、ここ10年、官邸が機能不全を起こし、首相が孤立する姿を描いています。朝日新聞は、福島第1原発事故で、米軍トップが極秘のメッセージを日本政府に送ったとする記事。毎日新聞は、米国が「財政の崖」を土壇場で回避したことを伝えています。日経新聞は、新興国向けの低コスト小型衛星ビジネスに官民で参入する計画を報道。そして東京新聞は、秋葉原に新設される食の商業施設の紹介です。
米国の政治、日本の政治
米国の大統領は、任期4年。強大な権力を掌握し、中期的な目線で国家運営にあたります。特に再選された2期目が、大きな仕事を仕上げるベストタイミングとなります。政権交代と共に、ホワイトハウスに参集する官民のスタッフが入れ替わると言われます。全米の選りすぐりの頭脳の中から、時の大統領と政権政党の主義主張に賛同する精鋭が集い、大統領を全面的にサポートする、というイメージがあります。政権運営に関与した経験と実績は、個人のキャリアとしても確実にプラスになります。
翻って日本の首相は任期不定で、権限も分散されています。唯一、専権ともいえるのは、衆議院の解散権。新しいことを始め、独自の価値をを創造する権利ではなく、組織を破壊し終わらせる権利だけが専権であるというのは、皮肉なことです。スタッフも、首相の個人的なコネクションで声を掛ける程度で、組織的なチームを作ることは稀だと聞きます。そもそも民間人にとって、政治に関わることはまったく評価されず、逆にキャリアに空白を作ってしまうため、敬遠される傾向があります。
頼りとすべき官僚は、省単位の動きに終始するため、国家の中長期のビジョンを「大きな物語」にまとめ、戦略的に実行していくことができません。明治維新から145年経っても、日本は幕藩体制を続けているように見えます。政治家は、派閥という藩を中心に動き、官僚は、省という藩に閉じこもっています。
米中2大国時代の日本
一方、朝日の記事を読むと、米軍トップが、福島第1原発事故の影響で、横須賀基地が使えなくなる可能性に危機感を募らせたたことがわかります。日本はペリー提督が黒船に乗って浦賀にやってきて鎖国日本に開国を迫ってから、ずっと米国の影響下で政治を司ってきたことを実感させられます。米軍基地の面積の7割以上が沖縄で、マスコミの報道も沖縄発が多いですが、実は横須賀基地は、太平洋に展開する米海軍の空母の母港です。
今日、世界的にナショナリズムが台頭し、日本もその傾向が強くなっているようにも見えます。しかし、そもそも日本は、ナショナリズムの礎となるネーション(国家)の稜線がはっきりしません。国内を見ると、政治や行政が、目に見えない入り組んだ境界線を引き、国外に目を転じると、米中2大国時代の海の境界線づくりの最前線に、日本が位置づけられています。
若者の命
明治維新は、諸外国の革命と違って、大規模な殺戮や破壊を伴わないものだったと言われます。それは主に、江戸城が無血開城されたことを指しているのだと思います。実際には、戊辰戦争における会津藩の白虎隊に見られたように、多くの若者の命が失われました。
平和で民主的な制度のもとで政権交代を果たすことの価値がどれほど大きいか、私たちは歴史認識をもって自覚する必要があると思います。外交もまったく同じです。「平和主義」による「対話」を忘れ、狭量なナショナリズム(「国家主義」)を前提とした「力と力の対抗」を前面に出せば、若者の命が再び無益な争いに投じられる可能性があります。
グローバル駅伝
今日は、伝統の箱根駅伝の復路です。日本体育大学が30年ぶりに総合優勝を果たしました。若者が学校のために必死に走る姿は、新年の風物詩であり、平和を象徴する風景です。各大学は、OBを含め全員で盛り立てていきます。競り勝つチームがあれば、競り負けるチームもあります。タスキがつながらず、涙を流すチームがあります。それでもチームのために精一杯走り続ける。それを日本中が応援する。
このチームプレイの在り方こそ、日本のソフトパワーの源泉だと思います。そしてチームの境界線を広げると、国境を超えた地域チームや、グローバル・チームが見えてきます。「心の国境」を広げること、そして「Win-Win」を目指した大きなチーム創りを目指す。グローバル駅伝ができるNIPPON。2013年の初夢です。
(文責:梅本龍夫)
箱根駅伝復路、ゴールを目指し競り合う選手たち 2013.01.03
【記事要約】 「官邸、失われた10年 ~NIPPON甦れ」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
【記事要約】 「『米が懸念』極秘公電 ~プロメテウスの罠」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
【記事要約】 「米『財政の壁』土壇場回避」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
【記事要約】 「衛星打ち上げ半額」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 「アキバに食の新名所」