2012.12.31 mon

新聞1面トップ 2012年12月31日【解説】108のチャレンジ

新聞1面トップ 2012年12月31日【解説】108のチャレンジ


【リグミの解説】

「社内失業」
本日の新聞1面トップは、朝日新聞が「社内失業」です。パナソニックグループに「追い出し部屋」と従
業員が呼ぶ部署があるという記事。製造業の「国内回帰」を先導してきたパナソニックですが、巨大赤字を連続して出し、余裕がなくなっています。つい最近まで業績が安定していた大企業でも、雇用を支え切れなり、30~40代にも「社内失業」が生じている実態を、朝日の記事は伝えています。

昨日の「リグミの解説」で、企業が生き残りをかけて1990年代に相次いで「成果主義」を導入した経緯を振り返りました。米国流の経営スタイルを前提とする「成果主義」は、日本の風土のなじませるのが簡単ではありません。中途半端な対応をしている内に、企業の体力は蝕まれ、優良企業の雄であったパナソニックにまで、朝日新聞の記事のような事態が生じています。

日本の雇用制度
日本の大企業は、戦後長く ①年功序列、 ②終身雇用(定年までの長期雇用)、 ③企業別労働組合―の「三
種の神器」で雇用を守ってきました。バブル崩壊後、年功序列を見直して「成果主義」を導入し、終身雇用の枠を絞って非正規雇用を増やしました。50代以降の早期退職(リストラ)も実行しました。

そのリストラは、次第に若い世代にも及び、就職氷河期をくぐり抜けて正社員の座を確保した30代も例外でなくなってきています。雇用主という「与党」に対抗する「野党」の役割を担うべき企業内の労働組合は、激変する企業雇用の現場で、有効なカウンターバランスとなれず、しぼんでいく正規雇用の枠内での年功序列と長期雇用の維持だけを目指しているように見えます。

「日本型リスク」
「失われた20年」は、「日本型リスク」ともいうべきものが顕在化したプロセスでした。一言でいえば、
大胆な戦略的転換ができないのが、日本型リスクです。変わりたくない、今までの安定を維持したいという思いが強いために、現実と合わない制度や慣行を続けます。すると綻びがあちことで生じますが、根本治療をせず、小手先の戦術で対処しようとします。「成果主義」はその典型です。

時代に合う雇用を考えるためには、社会全体の調整が必要だと思います。下記の枠組みが考えられます。

  • 年功序列を前提とした新卒一括採用を廃止し、通年採用とする
  • 職能給制度(能力の応じた給与)を「積極的な態度」で成果を出せるプロフェッショナル職に適した人材にのみ適用する。取締役の任期のように雇用期間を限定し、必要に応じて更新する
  • 大多数の「融和的な態度」で安定的な仕事環境を求める従業員には職務給制度(仕事の内容に応じた給与)を適用し、スペシャリストとして長期雇用する
  • 企業別労働組合を職務別(産業別)労働組合に変更する
  • 守りの雇用から攻めの雇用に転じる。特に女性の雇用を積極的に進め、職場の多様性を実現する

「多様性」「チャレンジ」「チームプレイ」
しかし、人事制度や雇用制度をいくらいじっても、社会全体が「チェンジ」を志向できず、「変わらない
守りの姿勢」を維持しようとする限り、成果は出ず、むしろ逆効果になります。上記の枠組み案が機能する大前提は、「再チャレンジ」ができる世の中になる必要があります。「新卒で採用されなかったら、アウト」、「一度正規雇用から外れたら、2度と戻れない」、「出産したら退職を余儀なくされ、元の仕事に就けない」、「起業して失敗したら借金だけ残り、経験を生かした再就職の道は閉ざされる」―。

日本の覆う「閉塞感」は、誰もが既得権を守ることでしか、安心と安定を得られない状況にあります。「変われない日本」は、「変わりたくない日本」です。その深層にある心理は、「変わったら終わり」という不安と恐怖です。日本は、人と違うことにチャレンジし、新しいものを創造することに臆病になっています。空気を読み合い、静かに目立たないようにしようとしています。私たちは、どうしたらいいのでしょうか。

今、日本に必要なものは、「多様性」「チャレンジ」「チームプレイ」の3つです。「多様性」は変化の時代に創造をもたらす土壌です。「チャレンジ」は変化に対して受け身にならず、「積極的な態度」で臨むことです。多様性があれば、自然にいろいろなチャレンジが起きます。そして「チームプレイ」は、多様性を包摂する社会の在り方です。それが一番発揮されるのが、「再チャレンジ」の場を提供し合うことです。失敗しても、セーフティーネットがある、そして再起できる、また新しいことにチャレンジできると確信が持てて、人ははじめて未来に対して「積極的な態度」が取れます。

煩悩」は可能性の宝庫
今日は、大晦日です。夜半に各地の寺院で、除夜の鐘が鳴ります。梵鐘を108回突くのが習わしで
す。108は、「凡夫の煩悩の数」と言われます(「今日は何の日?」)。なぜ108なのでしょう。

エニアグラムという性格タイプ論の心理学では、性格は9タイプあると考えます。さらに、9つのそれぞれのタイプに2つのバリエーションがあるので、厳密には18タイプに分かれます。また性格タイプとは別に、人間の内側には、進化のプロセスで発展させてきた本能的なエネルギーがあると言われます。これが全部で6種類あるとエニアグラムでは想定しています。結果として、広義の性格分類は、18 x 6 = 108となります。

「煩悩の数」と「性格タイプの数」の一致は、単なる数合わせに過ぎません。雑学として面白いな、という程度のもの。でも、ものは考えようです。「煩悩」とは、「あれがしたい、これはしたくない」という欲望です。それは人間を突き動かしている心的なエネルギーです。仏教では、煩悩は鎮めるべきものですが、なくすべきとは言っていません。なくすべきは、心的なエネルギーのネガティブな出し方なのです。

もし日本に「108」の多様な人材がいて、「108」のチャレンジを試み、それを「1つのチーム」として連携してやり遂げていったらどうなるでしょうか。日本の希望の光は、私たちの社会が本来持っている「多様性」を引き出すところにあります。リグミでは、日本と世界が発展し、進化していく道筋を探求し続けたいと思います。来年もリグミをよろしくお願い致します。

(文責:梅本龍夫)
 





【記事要約】 「米無人機、自衛隊に導入」

  • 政府・自民党は、無人偵察機「グローバルホーク」を自衛隊に導入する方向で調整に入った。中国や北朝鮮に対する情報収集能力を向上させることが目的。
  • グローバルホークは、米ノースロップ・ブラマン社が開発した最新鋭の高高度無人偵察機。攻撃能力を持たず、情報収集・警戒監視に特化されている。
  • 安倍政権は、2011年度から5年間の中期防衛力整備計画(中期防)の見直しを決定している。グローバルホークは、新たな中期防の中に配備計画を入れ、2015年までに1機から3機程度導入したい考えだ。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/





【記事要約】 「配属先は『追い出し部屋』 ~限界にっぽん」

  • 赤字にあえぐパナソニックグループには、「事業・人材強化センター(BHC)」という組織がある。従業員たちが「追い出し部屋」と呼ぶ部署だ。BHCは子会社2社にあり、在籍者は449人。両社の全従業員の1割弱にあたる。
  • 「今の部署に君の仕事はない」と告げられた正社員の女性は、希望退職かBHCへの異動を選択しなければならなかった。BHCの主な仕事は他部署への「応援」。梱包などの単純作業をこなす。「私の人生、変わってしまった」。
  • 雇用が安定していた大企業でも、30~40代にまで人減らしが及んでいる。外にも良い働き口はなく、仕事がある部署への転籍もかなわず、辞めるに辞められない「社内失業」が増えていく。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/





【記事要約】 「拉致『解決済み』撤回示唆」

  • 11月に行われた日朝政府間の局長級協議で、北朝鮮が従来の「拉致問題は解決済み」という立場を変更する可能性を示唆していたことが判明した。北朝鮮側は、変更の条件として、日本側が「最終的に解決した」と認める基準の提示を求めた。
  • 局長級協議が行われた時期は、衆院選で安倍総裁が率いる自民党の勝利が予想されていた。北朝鮮は、新政権発足前に協議の枠組みを作り、安倍政権との交渉を有利に進めようとする意図があったとみられる。
  • 北朝鮮の長距離弾道ミサイルの発射などで、政府間協議は止まっているが、北朝鮮は早期の協議再開を目指しているとみられる。安倍首相は就任後、「拉致問題は必ず安倍内閣で解決する」と強調している。

(毎日jp http://mainichi.jp/





【記事要約】 「公的資金で製造業支援」

  • 政府は、日本経済再生本部が制定を目指す「産業競争力強化法」(仮称)で、電機メーカーなどの競争力強化のため、公的資金を活用する方針だ。
  • リース会社と官民共同出資の特別目的会社(SPC)を作り、資産売却の受け皿とする。電機や産業機械メーカーは、SPCに工場や設備などの資産を売却し、リース契約に切り替える。企業は、資産売却で得た余剰資金を新たな設備投資に充当し、競争力を強化する。
  • 政府が公的資金を使って製造業を支援する理由は、雇用確保にある。電機メーカーなどは、雇用の裾野が広く、新規投資が滞り国内製造拠点を維持できなくなると、大幅な雇用減を招きかねない。ただ公的資金の活用については、モラルハザード(倫理の欠如)との批判も起きる可能性がある。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/





【記事要約】 「揺らぐ9条、2つの道」

  • 安倍首相は、第1次政権当時、「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」で有識者がまとめた集団的自衛権の限定的な行使容認を、引き継いで再検討する意向を示している。憲法解釈の変更が、9条改憲への1つ目の道だ。
  • 有識者懇のが行使を認めた手段的自衛権の分類は、以下の通り。①公海上で攻撃を受けた米艦船の防御、②米国に向かうかもしれないミサイルの迎撃、③国連平和維持軍(PKO)などでの他国部隊に対する「駆け付け警護」、④戦闘地域での輸送、医療など後方支援の拡大―。
  • 安倍首相が描く改憲の道筋の2つ目は、以下の通り。①改憲発議要件を衆参両院の3分の2以上から過半数に緩和する憲法96条改正を国会が発議、②国民投票の過半数の賛成で96条改正を承認、③衆参両院の過半数の賛成で国防軍保持や自衛権を明記した憲法9条改正などを発議、④国民投票の過半数の賛成正を承認―。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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