【リグミの解説】
本日の新聞1面トップ記事は、読売が「安倍政権の人事」、朝日が「通信傍受法の改正案」、毎日が「教員の心の病」です。それぞれに、「女性比率」「自由と公序」「ストレス・マネジメント」の視点でコメントします。
読売: 女性比率のターゲット
儒教の伝統が強い韓国で、初の女性大統領が誕生しました。朴槿恵(パククンヘ)氏は、1948年から始まった大統領制のもとで18代で11人目の大統領です(引用1)。一方の日本は、過去127年、95代で62人が首相になりましたが、全員が男性です(引用2)。衆議員に占める女性比率は、今回の選挙で16人減って38人です。歴代内閣で閣僚経験のある女性は32人。主要国の閣僚の女性比率では、日本は11.8%で192ヵ国中65位、G8では最下位だそうです(引用4)。
自民党は、政権公約で、「社会のあらゆる分野で2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%以上とする目標を確実に達成する」と明記しています。安倍総裁は、閣僚に女性を5人起用すると発言していました(引用5)。日本の国務大臣の数は、原則14人(必要あればさらに3人任命可能)です。5人の女性が入閣すれば、比率は3割となります。安倍氏のイニシアチブに注目です。
朝日: 「個人の自由」と「公の秩序」
筆者は民営化前のNTT(電電公社)に勤務していました。電話局で研修を受けたとき、当時の機械式の電話交換機にコネクターをつなぐと、通信を簡単に傍受できることに驚きました。業務の一環として、通話状態の品質確認のために、ランダムに聴取するものでしたが、プライベートな会話を盗み聴くようで、居心地のわるい仕事でした。
通信傍受法の改正案が検討されています。「盗聴法」と批判され、使用制限が強く、捜査の現場からは使い勝手が悪い」との不満がある、と記事は伝えています。捜査に必要との建前のもと、どこまでプライベートな会話が傍受されて良いのか。難しい問題です。
筆者が「居心地のわるさ」を感じたのは、それが研修の一環の単発の体験だったからです。業務として定常的にしているうちに、感覚が麻痺することは十分あり得ます。「個人の自由」と「公の秩序」の関係は、安易に流れることがないように、目をこすってよく注意して見る必要があります。
毎日: 学校のストレス・マネジメント
文部科学省は、全国の公立小中高校と特別支援学校、中高一貫校の教員約92万人の調査結果を発表しました。2011年度中にうつなどの「心の病」による休職は、5274人。比率で、約0.6%です。これは多いのでしょうか、少ないのでしょうか。
日本のうつ病患者数は、2008年で104万人。厚労省によると、12カ月有病率が1~2%、生涯有病率が3~7%です(引用6)。文科省の調査データでは、うつ病などの「心の病」としています。うつ病だけでも、厚労省データでは年間1%以上発生しているとすると、文科省が調べた教員の有病率は、実際よりも低いと見るべきかもしれません。
教職員のストレスの実態は、どのようなものなのでしょうか。児童・生徒の「いじめ」が大きな社会問題になっています。「いじめ」は社会の反映であり、学校という閉鎖的な空間で突出して起きると言われます。「いじめ」をなくす基本は、心を健全に保つことです。そして健全な心は、他者に対して開かれています。共感し、受け入れます。そういう教師を見て、生徒たちの心も開かれ、成長していきます。学校におけるストレス・マネジメントを真剣に考えるべき時期に来ています。
開かれた社会を目指して
今日の3つの記事コメントに共通するものは、「開かれた社会」となるかもしれません(補足:朝日の記事は、法制審議会で捜査の「可視化」と並行して、通信傍受法の適用拡大が検討されている、という内容です)。
権力は常に、内側に閉じようとする力学が働きます。その方が権力を維持し、権威を発揚しやすいからです。男性社会では、女性の可能性を閉じ、捜査の現場では、外部の監視(捜査の可視化)を嫌います。学校の教師もまた、社会に対して内に閉じた環境で、教育者としての地位を保とうとします。
しかし、既成の権力が社会に対して閉じた空間を保とうとすると、矛盾や問題もたくさん抱え込むことになります。多様性を活かし、自由の本当の価値を実現する社会は、外部に対して開かれています。そういう社会は、未来の可能性にも開かれています。
(文責:梅本龍夫)
【記事要約】 「安倍内閣、経済を重視」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
【記事要約】 「通信傍受法、対象拡大」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
【記事要約】 「『心の病』休職教員5274人」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
【記事要約】 「高速道補修、3兆円捻出」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 「賠償書類7000人届かず」