2012.12.21 fri

新聞1面トップ 2012年12月21日【解説】政治の使命

新聞1面トップ 2012年12月21日【解説】政治の使命


【リグミの解説】

日銀の物価目標
本日の新聞1面トップ記事は、読売、毎日、日経が「日銀、物価目標」です。日銀の物価目標(インフレ・ターゲット)は、自民党が政権公約に掲げ、安倍総裁が持論として衆院選の選挙期間中に強く訴えていた政策です。各紙の評価は分かれます。


読売: 「政府・日銀はデフレ脱却急げ」(社説)
○ 日銀の迅速な対応と目標設定を評価する
○ 金融政策だけではデフレ脱却と景気回復は望めない
○ 政府と日銀が実効性のある政策協定を結ぶべきだ


毎日: 「安倍さん、ここは熟慮を」(社説)
○ 目指すものが「目途か目標か」、「1%か2%か」はそさほど意味はない
○ 安倍総裁の「物価目標」には、「何のために」と「どのように」の両方で疑問と危うさを感じる
○ 中央銀行の独立性を脅かす政策協定(アコード)は、先進国として恥ずかしい


日経: 「金融緩和強化の知恵を絞れ」(社説)
○ デフレや円高の克服には、強力な金融緩和が欠かせない
○ 政府と日銀が連携を深めるのは良い
○ ただし日銀の独立性を尊重することが前提。硬直的な目標追求や具体的手法にまで注文すのは慎むべき


3紙の論説を5段階評価(政府・日銀の動きを評価する=5、どちらかというと評価する=4、どちらでもない=3、どちらかというと評価しない=2、評価しない=1)とすると、読売=5、日経=4、毎日=1となります。

戦術と戦略の違い
日銀の強力な金融緩和だけでは、本格的な景気回復は望めないという点では、各紙一致しています。新政権の
成長戦略がカギとなりますが、その際に公共事業投資を打ち出している自民党のスタンスについて、読売は一定の評価をしていますが、日経は根本的な問題解決にならないと懸念を表明。「投資の自由化(投資減税)」「法人減税」「規制緩和(新規事業を阻害する規制の見直し)」も必要、という点では一致しています。

企業運営でも、長期的な不振から脱却するために、二枚腰で対応するのが基本です。最初に短期的に効果が上がる施策を実行し、衰えた体力を回復すると共に、「会社は変わった」ことを社内外にアピールします(戦術的効果)。つづいて地力をつける体質改善の施策を打ち、長期的に成長・発展していける礎を作ります(戦略的効果)。

戦術レベルの施策は「やること」と「効果の範囲」が限定され、わかりやすいものです。心理的な期待感も醸成されやすい面もあります。しかし、個別の戦術だけでは、構造問題の根本解決はできません。個々の戦術を体系化した戦略が不可欠です。個々の戦術を正しい順番で実行し、軽重もしっかりつけていく戦略の枠組みがあることで、初めて企業活動は、長期的な成長路線に乗っていきます。国家の経済運営も、基本は同じだと思います。

国家戦略を構築する
経営戦略の基本は、「資源配分」です。「ヒト・モノ・カネ」をどう調達し、どこに配分するかが戦略なので
すが、借金には限度があるので、まずは身の丈にあったバランスシートに戻す必要があります。その上で、縮小均衡ではない、次の成長戦略を実行していきます。このためほとんどの再建企業は、まず「リストラ」を敢行するのです。

国家運営では、この常識は通用しないようです。とにかくまず足元の景気を良くする、そのために金融緩和をし、同時に大型補正予算を組み、国債(借金)をさらに増やし、公共事業投資を進める、と自民党は言っています。安倍総裁の早い動きは、今のところ一定の心理的効果を発揮し、日本経済復活の期待感につながっているようです。しかし、それは「失われた20年間」に繰り返されてきた施策と、どこが違うのでしょうか。

個々の戦術に特化せず、全体の戦略を構築することこそ、「決められる政治」の本当の意味だと思います。短期的な効果は、マスコミの注目を浴び、有権者受けも良いものです。しかし、痛みを伴わない改革はありません。痛みの先に希望の未来があれば、人は耐えることができます。政治の責任は、国民が共有するビジョンづくりと戦略の構築にこそ発揮されるべきものです。「政治屋は次の選挙を、政治家は次の世代を考える」(引用:毎日JP)。

(文責:梅本龍夫)
 





【記事要約】 「日銀、物価目標2%検討」

  • 日本銀行の白川方明総裁は20日の金融政策決定会合後、、「自民党の安倍総裁の要請を踏まえて検討することにした」と述べ、自民党の安倍総裁が求める2%のインフレ目標の導入を検討する考えを表明した。日銀総裁が、政治家の意向を踏まえた金融政策の検討を明言するのは異例。
  • 白川総裁は、「1月に最終的な結論を出したい」と語った。さらに、安倍総裁が求めている政府と日銀の政策協定も検討課題とすることを明らかにした。
  • 日銀は今回の会合で、10月30日以来の追加金融緩和を決定した。国債などの買い入れ基金枠を10兆円増やし、総額101兆円程度とする。金融緩和は今年に入って5度目。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/





【記事要約】 「東通、再稼働困難に」

  • 原子力規制委員会は20日、東北電力東通原発の敷地内に活断層が存在する可能性が高いとの判断を明らかにした。外部の専門家4人を交えた評価会議の見解に基づく。
  • 東通原発は、日本原子力発電敦賀原発と違って原子炉建屋の直下の活断層ではないため、廃炉に直結可能性は低い。しかし、東通原発は耐震安全性の見直しを迫られるため、当面の再稼働は難しく、停止が長期化する可能性もある。
  • 東北電は、1996年設置許可申請時に、活断層に似た地層のずれを認識していたが、粘土が地下水で急膨張する「膨潤」で活断層ではないとした。今回の規制委の会合後も、判断は変わらないと発表した。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/





【記事要約】 「日銀、物価目標導入へ」

  • 日本銀行は20日、「物価目標(インフレターゲット)」を採用する方向で検討に入った。インフレターゲットは、一定の消費者物価上昇率の達成を金融政策運営の指針とするもの。
  • 日銀は、自民党の安倍総裁が日銀に求めている2%の物価目標設定について、来年1月の金融政策決定会合で結論を出す意向だ。
  • 物価が2%を実際に上回ったのは、一時期だけ。金融政策だけで達成するのは困難とみられ、政策運営を巡って政府とのあつれきも予想される。政府との独立性が重視されてきた日銀の金融政策が新段階に入る。

(毎日jp http://mainichi.jp/





【記事要約】 「日銀、物価目標を導入」

  • 日本銀行は、自民党の安倍総裁が求める「物価上昇率目標」を来年1月に導入する。安倍氏が示す2%の目標を視野に入れている。
  • 日銀の白川総裁は、デフレ脱却は「成長力強化の努力と金融面からの後押しが相まって実現する」とし、規制緩和などを推進する政府の役割が重要であることも強調した。
  • 白川氏は「安倍総裁からの要請を踏まえた」としており、独立性を重んじる日銀が金融政策の決定に政治の影響を認めるのは異例。安倍新政権による成長戦略との相乗効果で、早期のデフレ脱却を目指す。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/





【記事要約】 「『敷地内に活断層』一致」

  • 原子力規制委員会は20日の評価会議で、東北電力東通原発の敷地内に多数の活断層が存在する可能性が高いとの判断を明らかにした。規制委が新たな活断層の見解を出すのは、日本原子力発電敦賀原発に次ぐもの。
  • 東北電は、地層の乱れを地下水による岩盤の膨張としてきたが、規制委の島崎邦彦委員長代理は、「活断層ではないという主張は到底受け入れならない」と強調した。
  • 活断層は原子炉直下ではないため、国の基準にただちに違反しない。しかし、最も近い活断層は約100メートルしか離れておらず、大幅な耐震性の見直しを迫られることは不可避だ。東通原発は、当面再稼働できない可能性が高い。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)




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