【リグミの解説】
韓国の大統領選
本日の新聞1面トップ記事は、読売、朝日、毎日、日経がそろって韓国大統領選の結果速報です。東京新聞も2番記事で報道しており、5紙ともタイトルもまったく同一。韓国の大統領は、3つの点で注目されます。
1つは、当選した与党・セリヌ党の朴槿恵(パククンヘ)氏が初の女性大統領となること。2つ目に、同氏が朴正煕(パクチョンヒ)元大統領の娘であること、そして3つ目が選挙制度です。
女性比率
読売、朝日、日経、東京の4紙は、「韓国初の女性大統領」と表現。毎日は、「東アジア発の女性大統領」。韓国は、東アジア文化圏の特徴である儒教の価値観を日本よりも強く継承しているように見えます。長幼の序を重んじ、男尊女卑の伝統も強いとも言われます。その韓国で、日本の首相よりも強大な権力を掌握する大統領に、女性が就任しました。
韓国も日本同様、女性の社会進出が遅れているようですが、データで見ると日本の先を行っています。韓国の国会議員の女性比率は、2009年で13.7%(299人中41人)で世界85位。対する日本の衆議院は、同じ2009年のデータで11.3%(480人中54人)で97位です(衆参合計では、722人中98人で13.6%。参照:IPU)。韓国の女性国会議員比率は、一貫して増えているようですが、日本は今回の衆院選で、女性議員は38人(16人減)の7.9%に後退です(毎日JP)。
朴正煕(パク・チョンヒ)の娘
朴正煕元大統領は、1963年から1979年まで5期大統領を務め、軍事独裁・権威主義体制を築きました。当時、月刊誌『世界』はペンネームT.K生による「韓国からの通信」という連続ルポを掲載。これを読んでいた日本人は、戒厳令のもとで反政府活動家が弾圧される様子に震撼しました。
言論を弾圧し、韓国人の自由を奪った朴元大統領は同時に、日本の経済発展をモデルに開発独裁を進め、日本の強力な経済・技術支援も受けて、「漢江(ハンガン)の奇跡」と呼ばれる高度成長を導きました(Wikipedia1、2)。親日派でもあった朴元大統領。政治の不自由と経済の発展という、現在の中国以上にいびつな社会体制の礎を作った朴正煕の娘は、極めて民主的な手続きを経て、2013年2月に第18代韓国大統領に就任します。
韓国の選挙制度
韓国の大統領を選出する制度は、米国と違って、国民が直接投票します。従って、獲得投票数を見れば、国民の何割が支持したのか、一目瞭然です。任期は5年となります。日本も、衆議院選があれば、過半数を獲得した政党が政権を取り、その党首が首相の指名を受ける限り、国民による首相選択も可能ではあります。しかし、それは保障されたものではなく、さらに任期も定まらず、勝手に首のすげ替えが繰り返されています。
今回の韓国の大統領選は、候補が6人でしたが、事実上の一騎打ちでした。安哲秀氏が途中で候補を降り、野党候補の文在寅氏を支持したため、終盤に大接戦となり、得票率差わずか3%で朴槿恵氏が当選しました。投票率は、前回を12.8ポイント上回る75.8%でした。
日本の仕事
12政党乱立で票の食い合いになり、漁夫の利のように自民党が大勝した日本の衆院選。投票率は59%と前回を10ポイント下回り、戦後最低。小選挙区制の課題が浮上して、国民の意志以上に一方的な結果が繰り返される衆院選。女性議員も数、比率で減ってしまいました。
韓国が独裁体制の鬱屈のもとにあったとき、日本は曲りなりに自由主義、民主主義を堅持してきました。そしてアジアで最も成熟した民主主義国家の地位を確立しました。否、確立したと思っていました。しかし、その在り方は、綻びだらけです。
韓国モデルが良いということはありません。米国も英国も、他の先進国も欠陥だらけです。それでも、より良い政治制度、より成熟した民主主義の在り方は生み出せます。日本の実力は、まだまだ発揮されていません。政治を嘆き、諦める前に、取り組むべきことがいっぱいあります。日本の仕事が、日本の未来を創造します。
(文責:梅本龍夫)
【記事要約】 「韓国大統領に朴槿恵氏」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
【記事要約】 「韓国大統領に朴槿恵氏」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
【記事要約】 「韓国大統領に朴槿恵氏」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
【記事要約】 「韓国大統領に朴槿恵氏」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 「精神的苦痛の賠償終了提示」