【リグミの解説】
世論調査
本日の新聞1面トップ記事は、読売と日経が「安倍総裁の経済政策」の動きを追っています。朝日は、政権交代に対する世論調査です。今日の「リグミの解説」は、この世論調査データの解釈です。
消去法の選択だった
朝日の世論調査から、今回の衆院選の有権者判断の概要が推測できます。自民大勝の大きな理由として、81%が「民主政権に失望」を選択しています。「自民党の政策を支持」はわずか7%です。「民主党はダメ」という懲罰的な判断が最初にあり、消去法で自民党を選択したと解釈できます。
政権交代を評価する
政権交代を「よかった」とする人は、全体で57%(「よくなかった」=16%)です。この数字、自民党支持層では87%に達しましたが、無党派層では41%止まりでした。
ただし、自公で3分の2を超える325議席を獲得したことについては、「よかった」=35%、「よくなかった」=43%です。この質問は無党派層では「よかった」=20%、「よくなかった」=44%となっています。政権交代を評価するが、ちょっと自公の議席が伸びすぎたかもしれない、というのが有権者の感覚かもしれません。
小選挙区制には戸惑いがある
「選挙のたびに政党の議席数が大きく変化すること」について、「よいことだ」=27%、「よくないことだ」=57%となっており、小選挙区制の特性に戸惑いもみられます。
自民党は、小選挙区での得票率が43.01%でしたが、総数300議席に対して237議席=79.0%を獲得しました。一方、民主党は小選挙区得票率は自民党の約半分の22.81%でしたが、当選は27議席=9.0%に過ぎず自民党の約9分の1でした。
政党の得票率と獲得議席数が完全に一致することは困難ですし、かならずしも良いことともいえません。例えば、自治体の首長を選ぶケースでは、どれほどの接戦でも当選するのは1人と決まっています。0.6人と0.4人に仕事を分担する、ということはありません。有権者の選択が割れても、当選した人に為政を委ねるのが選挙というものです。
とはいえ、自民党の小選挙区の絶対得票率(全有権者に占める得票率)が24.67%という数字を知ると、有権者の4人に1人しか支持表明しなかった政党が8割近い議席を占めるのは、バランスを欠いていると思います。
経済政策に期待する
朝日の世論調査は、「衆院選で最も関心を持った政策」を質問しています。4つの選択肢から選ぶ質問です。全体の結果は以下の通りでした。
全体:
①「景気や雇用」=35%、②消費税・社会保障=30%、③原発・エネルギー=17%、④憲法改正・外交・安全保障=12%
自民投票層:
①「景気や雇用」=46%、②消費税・社会保障=27%、③原発・エネルギー=12%、④憲法改正・外交・安全保障=11%
民主投票層:
①「景気や雇用」=29%、②消費税・社会保障=28%、③原発・エネルギー=18%、④憲法改正・外交・安全保障=22%
全体として「経済」が一番大きな関心事であり、特に自民党投票の原動力となったことがうかがえます。一方で、民主投票層では「憲法改正・外交・安全保障」が自民投票層の2倍近くあり、「右傾化」を懸念する傾向が読み取れます。
原発・エネルギー政策は模様見
また、全体として「原発・エネルギー政策」が2割弱に留まり、大きな争点にならなかったことがわかります。「自民党は原発について10年以内に判断する」という方針について、全体で「評価する」=37%、「評価しない」=46%という回答もあります。
こうしたデータを見ると、原発問題を見る国民の目が変化していることを推測させます。今年の春から夏にかけて、「脱原発」と「原発維持」に国論が二分されました。秋から今回の衆院選にかけて、有権者のセグメントは4つぐらいにわかれているように思います。
①「短期に原発ゼロ(再稼働を認めず、エネルギー政策を転換し、早期に全原発を廃炉)」
②「長期に原発ゼロ(安全かつ必要な再稼働は認め、エネルギー転換で原発依存率を少しずつ下げていく)」
③「模様見(原発はない方がいいが、経済が疲弊するのも困る)」
④「原発維持(2030年代で15%程度)」
国論を二分したときは、①と④の対立軸であったと思います。しかしその後、サイレント・マジョリティーは、②と③の立場に収斂したのではないでしょうか。その結果、「原発」が衆院選の第3争点に後退しました。結果として、原発に対する態度を先延ばしした自民党が、上手に②、③、④の層をすくいあげました。
「主権在民」は続く
まもなく自公連立の新政権が誕生します。衆議院の3分の2を超える議席を確保する強い基盤を持つ政権となります。しかし、この世論調査の分析から見る限り、有権者は、自公政権に全権委任しているとは到底言えません。投票後も、国民の「責任と義務」がなくなるわけではありません。民主主義の「主権者」として政治を監視し、個々の政策遂行の是非に関わる必要があります。
(文責:梅本龍夫)
【記事要約】 「物価上昇2%目標要請」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
【記事要約】 「政権交代『よかった』57%」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
【記事要約】 「福島県、拒絶材料探し」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
【記事要約】 「自公、大型補正で一致」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 「六ヶ所村で断層調査」