【リグミの解説】
衆院選の結果
本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日、日経、東京の5紙すべて「衆院選の結果速報」です。「自公320超」の文字が大きく掲げられています。
各紙の社説のタイトルは、以下の通りです。
読売: 「謙虚に実績積み信頼取り戻せ ~民主政権迷走への厳しい懲罰だ」
朝日: 「地に足のついた政治を ~自民大勝、安倍政権へ」
毎日: 「謙虚に政治の安定を ~衆院選、自民圧勝」
日経: 「決して自民が『勝者』とは言えない」
東京: 「国民をよく畏れよ ~自民圧勝、政権交代へ
小選挙区制のもとでは、英国でも「ナショナル・スイング」と呼ばれる民意の振り子現象が起きるそうです(毎日新聞「余禄」)。今回の衆院選の結果に対する各紙の論調を見ても、このナショナル・スイングが、日本の有権者の意図以上に大きくなっていることを示唆しています。
小選挙区制の特性
12月14日の「リグミの解説」で、衆院選終盤の世論調査で、「自公が接戦区も制した場合、合計で320を超え、衆院で3分の2以上を獲得する可能性もある(その場合、参院で否決された議案も衆院で再採決可能)ことが注目ポイント」と書きました。新聞各紙は慎重を期してか、14日段階ではこの点を強調していませんでしたが、現実は雪崩を打つように一方向に票が流れました。
ただこれが、「民意」を正確に反映しているとは、かならずしも言えません。小選挙区では、僅差でも、とにかく1番になることが大事。民主党の事業仕分けで話題となった「2位じゃダメなんでしょうか」は、こと選挙に関しては、「ダメ」ということがはっきりしました。
仮想「中選挙区制」
東京都の25小選挙区の例で見てみましょう。
25選挙区で当選は、自民党=21人、民主党=2人、公明党=1人、みんなの党=1人で、自民党の圧勝です。「1位じゃなきゃダメ」の小選挙区制では、自民党の占有率は、84%です。民主党が8%、公明党とみんなの党が4%となります(実際には、比例代表並立で当選する候補者もいますので、この数字通りにはなりません)。
仮に、上位2名が当選する「中選挙区制」を想定した場合、どうでしょうか。2位は、民主党=13人、日本維新の会=6人、自民党=3人、日本未来の党=2人、無所属=1人となりますので、上位2名が当選した場合の占有率は、自民党48%、民主党30%、日本維新の会12%、日本未来の党4%、公明党2%、みんなの党2%、無所属2%となります。
これは、過去に実施されていた実際の中選挙区制の問題点も、比例代表制並立による効果も無視した、単純化しすぎた分析です。そのことを承知で、更に大胆にも、仮に「東京都仮想中選挙区」の当選率が、全国480議席に反映されたとしたら―。
自民党=230議席、民主党=144議席、
日本維新の会=57議席、日本未来の党=19議席、
公明党=10議席、みんなの党=10議席、無所属=10議席―。
民主主義の成熟化を
各紙に社説等にあるように、今回の衆院選で示された民意は、「民主党はダメ、第3極を選んでも民主党の二の舞になるかもしれない、消去法で政権実績の長い自民党に復帰してもらおう」であったと思います。そうであったとすれば、自民党と民主党の関係、そして第3極の規模は、本稿におけるラフなシミュレーション結果ぐらいが妥当だっとのではないでしょうか。
企業の人事制度でもそうですが、完全に公平で客観的な評価制度はありません。主観が入り、偏りがあります。それでも、制度を改善することで、より妥当で納得できる評価制度へと高めていくことは可能です。国政選挙も、国会議員の定数見直しと併せて、選挙制度の再度の議論をしていく余地は大いにあると思います。
いずれにしても今回の自民党大勝は、日本の有権者が選択した結果です。民主主義の制度に「ベスト」はなく、「ベター」を模索し続けることが大事です。過去の原発政策の国民的議論の調査結果ひとつみても、自民党の大勝が、あらゆる公約への賛同ではないことは確かです。選挙のあとも、「白紙委任」せず、政策ごとに是と非の意思を示していくことが、日本の民主主義の成熟のために不可欠です。
(文責:梅本龍夫)
【記事要約】 「自公320超、安倍政権へ」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
【記事要約】 「自公320超、安倍政権へ」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
【記事要約】 「自公320超、安倍政権」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
【記事要約】 「自公320超、政権奪還」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 「自民290超、政権復帰」