【リグミの解説】
国際数学・理科教育動向調査
「子供の時、勉強好きでしたか?」 こう聞かれて「はい」と答える大人はどれ位いるでしょうか。本日の新聞1面トップ記事は、朝日と毎日が「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)の2011年結果」についての記事です。
1995年から4年ごとに実施されているTIMSSのテストで、小学4年の算数・理科ともに、過去最高得点となりました。今回、63ヵ国・地域が参加し、日本は「小4算数=5位(前回4位)」「小4理科=4位(前回4位)」「中2数学=5位(前回5位)」「中2理科=4位(前回3位)」でした。2009年からの「脱ゆとり教育」の成果が表れ、と両紙は示唆しています。
子供たちの学習意欲
しかし両紙とも指摘するのが、日本の子供たちの学習意欲の低さです。算数・数学では下記の結果です。
小4「算数が好き」 2007年=66%(国際平均80%) 2011年=66%(国際平均81%)
中2「数学が好き」 2007年=37%(国際平均65%) 2011年=39%(国際平均 - )
佐藤学・学習院大教授(教育学)は、「TIMSSはカリキュラムの習熟度を測る調査だから、日本や韓国など受験至上主義の国は好成績になる。意欲とは比例しない」と解説しています。佐藤教授は、勉強意欲は発展途上国やGDPが伸びている国ほど高いと指摘(朝日新聞3面)。
佐藤教授の指摘が正しいとすると、冒頭の質問に「はい」と答える人の比率は、年齢層が上がるほど高いことになります。確かに高度成長期やその後の安定成長期までは、国家の経済的成長と個人の「学習意欲」は高い相関関係にあった気がします。これは、経済成長と個人の「幸福度」が、ある段階までは高い相関を示すことと似た現象と推測できます。
学習意欲の2側面
学習意欲には、2つの側面があると思います。1つは「実益の追求」です。勉強すれば、より良い職業につけ、高収入や高い社会的地位を得られる、というわかりやすい動機です。佐藤教授の指摘することは、このことだと思います。学習意欲のもう1つの側面となるのが、「真理の探究」です。直接の役には立たないかもしれないが、人生に「意味」を与える勉強、と言い換えることができます。
四則演算は生活に必要な算数の素養ですが、中学以上の数学になると、人生に不要と感じる人が多いと思います。数学が必要な職業に就かない限り、確かに不要かもしれません。しかし実は数学的な思考は、人生の諸事がなぜこんな具合になっているのかを深く理解する手助けをしてくれます。この世界を成り立たせている法則の一端に触れる勉強は、生活するだけで大変な日々に、一条の光をもたらしてくれます。
生きる意味と勉強
生きる「意味」を見失いかけたら、とにかく何かを勉強することをお薦めします。「実益の追求」にはならなくても、否、ならないからこそ、「真理の探究」はとにかく面白いもの。このことに気付いている人が多いほど、社会は本当の意味で豊かになります。
物質的な成長は、どこかで「幸福度」の効用がピークアウトします。しかし精神的成長は限界がありません。もっと知りたい、もっと豊かになりたい、と欲し続けます。その純粋な意欲が、物質的な成長への健全な意欲として還元されます。先日ノーベル賞を授与された山中教授の意欲は、「真理の探究」を通して、難病患者を救いたいという「実益の追求」に還流する好例と感じます。
真理の探究
ノーベル賞と縁のない普通の人々である私たちも、心の内側に秘めた学習意欲は、山中教授とまったく同じです。ただそれが芽を出すきっかけを忘れているだけ。子供は大人の鏡です。親や教師が「真理の探究」にわくわくする姿を見れば、子供たちもそのポジティブなエネルギーを自然に体得します。
「勉強しなさい」と子供につい言ってしまう親。でも、自分自身にそんな言葉はかけないもの。冒頭の質問の続きです。「大人の今、勉強は好きですか?」 答えが「いいえ」だったとしたら、次の質問です。「なぜですか?」 ここで簡単に答を出さず、「なぜだろう?」と自問自答を繰り返す。幼児のような素朴な疑問から、「真理の探究」は始まります。
(文責:梅本龍夫)
【記事要約】 「北ミサイル取り外す」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
【記事要約】 「小4算数・理科、過去最高点」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
【記事要約】 「小4理数、過去最高点」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
【記事要約】 「サントリー、中核飲料会社を上場」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
【記事要約】 「敦賀活断層『クロ』、再稼働に焦点」