【リグミの解説】
敦賀原発の活断層
本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日、日経、東京の5紙がそろって「敦賀原発の活断層」の問題を大きく扱っています。原子力規制委員会の専門家チームは、2号機の直下を通る断層(破砕帯)が活断層の可能性が高いことで見解が一致。規制委の田中委員長は、再稼働は困難との判断を示しました。
今回の判断が「廃炉」につながるかについては、各紙でニュアンスに違いがあります。
読売: 小見出しで「廃炉の可能性も」 (文中で「最終的に廃炉に追いこまれる可能性もある」)
朝日: 大見出しで「廃炉の公算大」 (文中で「廃炉を迫られる公算が大きくなった」)
毎日: 大見出しで「廃炉不可避」 (文中で「廃炉を迫られる公算が高まった」)
日経: 小見出しで「廃炉の公算」 (文中で「廃炉となる公算が大きくなってきた」)
東京: 小見出しで「廃炉強まる」 (文中で「廃炉を迫られる公算が大きくなった」)
「廃炉の可能性」の報道姿勢
廃炉を示唆する強さの度合いを5段階評価すると、「毎日=5」「朝日=4」「日経=3」「東京=2」「読売=1」となります。但し、文中の表現は殆ど同一。各紙のスタンスを見出しでアピールしつつ、内容では横並びと言えます。
その根拠は、敦賀原発を所有する日本原子力発電が行うとする再調査でも、今回の結論を覆す材料が出ることは難しいというもの。東京新聞だけは、「廃炉に法的規制」がない問題を指摘。国の安全規定は、原発の建設時に適用されるものであり、完成後に活断層が見つかった場合を想定していません。このため、「廃炉に関しては、今後も規制委は命令できず、あくまで電力会社の判断となる」(東京新聞1面)。
「脱原発」批判と「原発維持」批判
衆院選は、「原発・エネルギー政策」が大きな争点となっています。「脱原発」を主張する政党を批判するマスコミの論調として、「『脱』や『卒』といった否定の言葉ばかり主張し、『原発をなくした時のユーザの経済的負担と産業の空洞化問題』、『中東の石油依存による安全保障の問題』、『地球温暖化対策の問題』『廃炉の法的手段と電力会社の経営負担の問題』がないがしろにされている。具体的な計画もなく、耳触りのいいことだけ言うのは無責任だ」というのがあります。
同様の批判は、原発政策を曖昧にしている政党に対してもなされるべきだと思いますが、印象として数が少なく、論点もあいまいなように感じます。しかし、原発については避けて通れない3つのテーマがあります。①地震・津波対策、②原発事時の総合対策、③核廃棄物の最終処理―。いずれも大きな課題で、解決は容易ではありません。
「アート」と「サイエンス」の連携
そうした政治環境の中、今回の原子力規制委の調査チームの判断は、ひとつの方向性を示唆するものとなりました。それは科学的アプローチに徹する、というものです。今回の敦賀原発の活断層判断が、大飯原発に比べて早かった理由として、調査のとりまとめ役の島崎邦彦・委員長代理は、過去の調査が充実し、データが揃っていたことを挙げています。その結果、調査チームの見解が一致したようです。
原発・エネルギー政策の立案遂行に関して、リグミは「アート」(芸術)と「サイエンス」(科学)の連携を推奨します。サイエンスは、「理論の絶えざる見直しと進化⇒徹底した調査・実験による情報収集⇒論理的・客観的な推論」を繰り返します。一方、「アート」は政策判断の部分となります。ここで必要なのは、「理念⇒サイエンスとの連携⇒政策判断」です。
「アート」は、「サイエンス」を具として挟み込み、これを政治という名の総合芸術に高めます。かつての原発安全神話は、「サイエンス」が自らの仕事への誠意を忘れ、「アート」に至っては、その役割を放棄してしまった結果生まれたものでした。衆院選を戦う各政党が、今回の規制委の判断をどう受け止めるか、注目したいと思います。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「敦賀再稼働認めず」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「敦賀、廃炉の公算大」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「敦賀原発の廃炉不可避」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「敦賀原発、再稼働困難に」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「敦賀原発、運転認めず」