2012.12.11 tue

新聞1面トップ 2012年12月11日【解説】科学的検証と政治

新聞1面トップ 2012年12月11日【解説】科学的検証と政治


【リグミの解説】

敦賀原発の活断層
本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日、日経、東京の5紙がそろって「敦賀原発の活断層」の問題を大きく
扱っています。原子力規制委員会の専門家チームは、2号機の直下を通る断層(破砕帯)が活断層の可能性が高いことで見解が一致。規制委の田中委員長は、再稼働は困難との判断を示しました。

今回の判断が「廃炉」につながるかについては、各紙でニュアンスに違いがあります。

読売: 小見出しで「廃炉の可能性も」 (文中で「最終的に廃炉に追いこまれる可能性もある」)
朝日: 大見出しで「廃炉の公算大」 (文中で「廃炉を迫られる公算が大きくなった」)
毎日: 大見出しで「廃炉不可避」 (文中で「廃炉を迫られる公算が高まった」)
日経: 小見出しで「廃炉の公算」 (文中で「廃炉となる公算が大きくなってきた」)
東京: 小見出しで「廃炉強まる」 (文中で「廃炉を迫られる公算が大きくなった」)


「廃炉の可能性」の報道姿勢
廃炉を示唆する強さの度合いを5段階評価すると、「毎日=5」「朝日=4」「日経=3」「東京=2」「読売=1」
となります。但し、文中の表現は殆ど同一。各紙のスタンスを見出しでアピールしつつ、内容では横並びと言えます。

その根拠は、敦賀原発を所有する日本原子力発電が行うとする再調査でも、今回の結論を覆す材料が出ることは難しいというもの。東京新聞だけは、「廃炉に法的規制」がない問題を指摘。国の安全規定は、原発の建設時に適用されるものであり、完成後に活断層が見つかった場合を想定していません。このため、「廃炉に関しては、今後も規制委は命令できず、あくまで電力会社の判断となる」(東京新聞1面)。

「脱原発」批判と「原発維持」批判
衆院選は、「原発・エネルギー政策」が大きな争点となっています。「脱原発」を主張する政党を批判するマス
コミの論調として、「『脱』や『卒』といった否定の言葉ばかり主張し、『原発をなくした時のユーザの経済的負担と産業の空洞化問題』、『中東の石油依存による安全保障の問題』、『地球温暖化対策の問題』『廃炉の法的手段と電力会社の経営負担の問題』がないがしろにされている。具体的な計画もなく、耳触りのいいことだけ言うのは無責任だ」というのがあります。

同様の批判は、原発政策を曖昧にしている政党に対してもなされるべきだと思いますが、印象として数が少なく、論点もあいまいなように感じます。しかし、原発については避けて通れない3つのテーマがあります。①地震・津波対策、②原発事時の総合対策、③核廃棄物の最終処理―。いずれも大きな課題で、解決は容易ではありません。

「アート」と「サイエンス」の連携
そうした政治環境の中、今回の原子力規制委の調査チームの判断は、ひとつの方向性を示唆するものとなりました。それは科学的
アプローチに徹する、というものです。今回の敦賀原発の活断層判断が、大飯原発に比べて早かった理由として、調査のとりまとめ役の島崎邦彦・委員長代理は、過去の調査が充実し、データが揃っていたことを挙げています。その結果、調査チームの見解が一致したようです。

原発・エネルギー政策の立案遂行に関して、リグミは「アート」(芸術)と「サイエンス」(科学)の連携を推奨します。サイエンスは、「理論の絶えざる見直しと進化⇒徹底した調査・実験による情報収集⇒論理的・客観的な推論」を繰り返します。一方、「アート」は政策判断の部分となります。ここで必要なのは、「理念⇒サイエンスとの連携⇒政策判断」です。

「アート」は、「サイエンス」を具として挟み込み、これを政治という名の総合芸術に高めます。かつての原発安全神話は、「サイエンス」が自らの仕事への誠意を忘れ、「アート」に至っては、その役割を放棄してしまった結果生まれたものでした。衆院選を戦う各政党が、今回の規制委の判断をどう受け止めるか、注目したいと思います。

(文責:梅本龍夫)



讀賣新聞

【記事要約】 「敦賀再稼働認めず」

  • 原子力規制委員会の調査団は10日、日本原子力発電・敦賀原発の敷地内の断層(破砕帯)は「活断層の可能性が高い」と結論づけた。破砕帯は、2号機の原子炉建屋直下を横切るもので、国の耐震設計審査指針に反する。
  • 耐震補強をしても再稼働時の安全確保は難しい。田中俊一委員長は、「今のままでは、再稼働の安全審査はできない」と述べ、再稼働は極めて困難になった。
  • 日本原電は「受け入れがたい。調査を続けて主張を実証する」と反論の姿勢だ。しかし、規制委の方針を覆すデータを集めるのは困難であり、最終的に廃炉となる可能性もある。

(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/


朝日新聞

【記事要約】 「敦賀、廃炉の公算大」

  • 日本原子力発電・敦賀原発の断層を調査した原子力規制委員会は10日、外部の専門家4人を加えた評価会議で、2号機の原子炉建屋直下の断層は「活断層の可能性が高い」と判断した。
  • 国の耐震設計審査ルールでは、活断層の真上に原子炉建屋を建てることを認めていない。このため、2号機の再稼働が認められず、廃炉となる可能性が高くなった。
  • 日本原電は、「大規模な調査で活断層の可能性はないことを証明した。このようなとりまとめとなったことは受け入れがたい」と発表。同社は追加調査をするが、結論に影響を与えるデータが提出される可能性は低いと見られる。

(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/


毎日新聞

【記事要約】 「敦賀原発の廃炉不可避」

  • 原子力規制委員会の専門家会合は10日、日本原子力発電・敦賀原発の敷地内の断層(破砕帯)は「活断層の可能性が高い」と結論づけた。
  • 破砕帯は、原子炉建屋直下を横切っており、規制委の田中俊一委員長は、「今のままでは再稼働に向けた安全審査はとてもできない」と述べた。再稼働は極めて困難な状況。
  • 日本原電は「到底受け入れがたい」とコメント。しかし、原電が今後、活断層でない明確な根拠を示せなければ、2号機は廃炉に追い込まれる可能性が高い。安全面を理由に廃炉を迫られるのは初めて。

(毎日jp http://mainichi.jp/

日経新聞

【記事要約】 「敦賀原発、再稼働困難に」

  • 原子力規制委員会の専門家を加えた評価会合は10日、日本原子力発電・敦賀原発の2号機直下の断層(破砕帯)は「活断層の可能性が高い」との判断で一致した。
  • 規制委の田中俊一委員長は、「今のままでは再稼働の安全審査はとてもできない」とコメント。敦賀原発の再稼働は極めて困難となった。
  • 日本原電は独自の調査で規制委の再判断を仰ぐ方針だが、評価が覆る可能性は低く、敦賀原発は廃炉となる公算が大きくなった。

(日経Web刊 http://www.nikkei.com/


東京新聞

【記事要約】 「敦賀原発、運転認めず」

  • 原子力規制委員会の専門家チームの評価会合は10日、日本原子力発電・敦賀原発の2号機直下の断層(破砕帯)は「活断層の可能性が高い」と判断した。
  • 規制委の田中俊一委員長は、「運転再開の安全審査はできない」とし、敦賀原発の再稼働は認められないと表明。敦賀原発は、廃炉となる公算が大きくなった。
  • 規制委は、敦賀を含め全国6原発を対象に断層調査を進める。対象は以下の通り。▽「大飯原発」(関西電力)=関電に試掘溝の拡大を指示、▽「東通原発」(東北電力)=13、14に現地調査、▽「美浜原発」(関西電力)、高速増殖原型炉「もんじゅ」(日本原子力研究開発機構)、「志賀原発」(北陸電力)=年明け以降に調査―。

(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)



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