【リグミの解説】
3つの大規模世論調査
本日の新聞1面トップ記事は、読売、朝日、毎日、日経が「衆院選の世論調査」です。朝日は単独調査。読売新聞と日経新聞は共同で調査(情勢分析は各社の取材情報を加味した独自のもの)。毎日は共同通信社の調査に基づくもの(東京新聞も、1面2番記事で、共同通信の世論調査を元に自社取材を加味した記事を掲載)。
今回は、通常の1千人程度の世論調査ではなく、3種とも100倍の10万人という大規模なもの。有効回答率も、読売・日経で64%、朝日が66%、共同通信では80%という高率。小選挙区が300ありますので、1選挙区あたり300人強のサンプルになります。いずれも電話によるRDD(ランダムサンプル)法による調査。
調査から見える傾向
こうした大規模で、エリアを正確に割り振った調査であるためか、3種の調査結果はかなり近似しています。調査から浮かぶ4紙の情勢記事をまとめると、以下の通りです。
- 自民党は単独過半数(241)を獲得する勢いで、現有勢力の118から大躍進する勢い
- 公明党も30前後(現有勢力21)と堅調であり、自公で政権復帰の可能性が高い
- 民主党は苦戦しており、70前後の議席数と現有勢力(230)の半減以下になる厳しい展開
- 日本維新の会は、民主党と第3党を争うが、小選挙区では全国的な浸透ができておらず、50前後の情勢
- 日本未来の党は、全般に苦戦しており、現有勢力(61)から大幅減の15前後
- みんなの党も、15議席前後(現有勢力8)
投票という意志表明
朝日新聞によると、「かならず投票に行く」と答えた人は73%。3年前の衆院選での回答は77%で、実際の投票率は69%でした。このため朝日は、今回の実際の投票率は、60%台半ばと推測しています。
一方、回答内容で候補者名や政党名をを挙げた人は、小選挙区で51%、比例区で61%でした。従来の調査では小選挙区で6割前後、比例区で7割前後だったそうです(いずれも朝日の記事)。無党派層の動向が、今後の選挙情勢に従来以上の影響を与えそうです。
今回の3つの調査では、年代別のデータおよび男女別のデータは開示されていません。電話調査法であるため、固定電話を持つ在宅の有権者は、比較的高年齢であると推定されます。
投票は、有権者の意思表明の最も直接的で基本的な方法です。今回の衆院選は、有権者の3分の2以上が投票することを期待したいと思います。特に、投票率が60代以上に比べて著しく低い20~30代の有権者が、積極的に投票所に出向き、「日本のこれから」の選択を、有権者として一緒に思い悩む経験を共有できることを願っています。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「自民、過半数超す勢い」
- 読売新聞は、4、5の両日、全国の有権者10万1167人を対象に世論調査(電話によるRDD法)を行い、全国総支局の取材を加味して序盤の情勢を探った。調査は日経新聞と協力して実施し、基礎データのみ共有。有効回答率64%。
- 自民党は、小選挙区選、比例選ともに優勢で、単独過半数(241人)を大きく上回る勢いだ。公明党も堅調、両党合わせて300議席を超す可能性がある。一方、民主党は、小選挙区で優勢なのは10人程度、比例選でも30議席前後しか固めておらず、厳しい戦いとなっている。
- 第3極では、日本維新の会が比例選で健闘し、第3党の座をうかがっている。日本未来の党は苦戦。ただし、小選挙区で3割、比例選で2割が投票する候補者や政党を挙げていないため、情勢は終盤にかけて変化する可能性がある。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「自民、単独過半数の勢い」
- 朝日新聞は、4、5の両日、全国の有権者約11万5604人を対象に世論調査(電話によるRDD法)を行い、全国の取材網の情報も加味して序盤の情勢を探った。有効回答率66%。
- 自民党は、小選挙区で好調で、比例区を合わせて単独過半数を確保する勢いだ。議席推計は257~285(公示前118)。民衆は惨敗の状態で、100議席を割り込む公算が大きい。議席推計は68~95(公示前230)。
- 第3極の日本維新の会は、比例区で民主党と並び、小選挙区と合わせて50議席前後をうかがう。議席推計は42~57(公示前11)。日本未来の党は、比例区で8議席前後、小選挙区で苦戦。議席推計は9~20(公示前61)。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「自民、単独過半数の勢い」
- 共同通信社は、4、5の両日、全国の有権者約12万3683人を対象に世論調査(電話によるRDD法)を行い、現時点での情勢を探った。有効回答率80%。
- 自民党は、小選挙区、比例代表ともに優位に立ち、単独過半数(241議席)を確保する勢いだ。議席推計は280~306。公明党(議席推計25~31)と合わせて300議席をうかがい、政権復帰の可能性が大きくなっている。一方、民主党は、70議席前後に激減する可能性がある。議席推計は57~82。
- 第3極勢力は、伸び悩んでいる。日本維新の会の議席推計は38~54。日本未来の党の議席推計は10~20。みんなの党の議席推計は12~19。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「自民、過半数の勢い」
- 日経新聞は、4、5の両日、全国の有権者10万1167人を対象に世論調査(電話によるRDD法)を行い、衆院選の序盤の情勢を探った。調査は読売新聞と協力して実施し、基礎データのみ共有。有効回答率64%。
- 全国480議席のうち、自民党が過半数を確保する勢いだ。小選挙区で170超、比例代表で60議席程度を固めつつある。地盤とする地方のみでなく、首都圏など都市部でも復調が鮮明。公明党と合わせて専権復帰の可能性が高まっている。民主党は、小選挙区で有力圏に入っているのは30議席強と劣勢だ。比例で獲得を見込める30議席以上を含めても、全体で公示前勢力(230議席)の半分以下となる見通しが強まっている。
- 第3極は、日本維新の会が比例で民主に迫る30議席以上を獲得する見通しだ。ただ、全国的な支持の広がりを欠いている。日本未来の党は小選挙区で厳しい戦い。みんなの党も伸び悩む。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「石綿訴訟、国に賠償命令」
- 東京地裁は5日、石綿訴訟で「国の規制に不十分な点があった」として、賠償を命ずる判決を下した。アスベスト(石綿)を吸い込み、肺がんや中皮腫などになった首都圏の元建設労働者308人について、本人と遺族が、国と建材メーカー42社に計118億円の損害賠償を求めていたのに対し、158人に約10億6000万円を国に支払うよう命じた。
- 判決の骨子は以下の通り。▽国は石綿の吹付作業では1974年、切断などでは81年に規制の義務を負っていたが怠り、違法だ、▽この時期以降に屋内で建築作業に従事した労働者に限り、国の賠償責任がある、▽屋外作業では危険性を容易に認識できたとは言えず、零細事業主や個人事業主についても国は責任を負わない、▽石綿を含有した建材の製造販売企業に共同不法行為は成立しない―。
- 建設現場での石綿被害をめぐる集団訴訟は、6地裁で起こされており、東京地裁の患者数は最多となる。判決は2件目だが、国の責任を認めた判決は初めて。同種の訴訟や、国の今後の救済策に影響を与えそうだ。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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