【リグミの解説】
衆院選の現状
本日の新聞1面トップ記事は、読売、朝日、毎日、日経、東京の5紙すべて「衆院選の公示」に関する記事です。内容は大同小異です。
- 現憲法下で最多の候補者数となった
- 12政党が「原発政策」を中心争点に政策の違いを訴える
- 2大政党の民主党は比較第1党を確保し政権維持をめざし、自民党・公明党は政権復帰を図る
- 第3極の日本未来の党、日本維新の会の躍進によっては選挙後の枠組みに影響を与える
新聞の論点
こうした衆院選の表面をなぞるようなトップ記事に対して、各紙とも1面で補足記事を掲載。朝日、毎日、日経は、論説の責任者クラスの署名記事です。
読売: 「民主政権の3年に審判」
朝日: 「悩める選挙、正しく悩もう」(曽我豪・政治部長 )
毎日: 「原発の『ゴミ』議論不足」(青野由利・専門編集委員)
日経: 「『明日の日本』判断を」(芹川洋一・論説委員長)
東京: 「衆院選3大争点:『原発政策』『消費税増税』『憲法9条』」
この中で、視点として参考になったのが朝日と日経でした。
「政党は乱立し、争点は多種多様。賛否で仕分ければ対決構図はあまりに複雑。だが、わかりにくい衆院選で良かった」「単純明快で単線にすぎた衆院選が日本によきものを残したか」「幾多の争点から自分で優先順位をつけ、総合力で選ぶ。正しくきちんと悩む行為こそが、日本の政党政治を出直させる第一歩」(朝日新聞)
「なにかがすっぽり抜け落ちている気がしてならない。経済力がどんどん落ちて、もはや二流国になりさがろうとしている日本」「『反』『脱』『卒』・・・いろんなものを否定ばかりしていて、その先をどうするつもりなのか」「政党には、明日の日本をたしかなものにするための大きな物語を語ってもらわないと困る」(日経新聞)
政治における「物語」の可能性
朝日と日経の論説を併せたところに、ひとつの在り方が見えてくると思います。
世界は複雑に絡み合っており、課題は山積しています。シングルイシュー(唯一の課題)に単純化する選挙は3年前で「卒業」とすべきでしょう。しかし政策課題が分散した選挙になれば、取捨選択が難しくなります。
そこで、「原発・エネルギー政策」をシングルイシューではなく、セントラルイシュー(中心軸の課題)にすることを「リグミの解説」で記してきました。セントラルイシューという「軸」の周りに、各党は他の重要な政策課題を配置し、その相互関係を明らかにしていくと良いと思います。それが出来上がった時、明日の日本を示す「大きな物語」の骨格が見えてきます。
自分たちで「物語」を創る
残念ながら、今の選挙状況を見る限り、「大きな物語」を描けそうな政党は明らかになっていません。これは不幸なことでしょうか。そうかもしれません。あるいは、それほど悪いことでもないのかもしれません。なぜなら、「物語」は与えられるものではないからです。有権者が、どんな日本を希望するのか。どんな人生を生きたいのか。1人1人が、自分自身の物語(ライフストーリー)を思い描いてみます。
「個人の物語」(ライフストーリー)は、国家の歴史と未来の不可分の一部です。それを「大きな物語」にするのが、世論です。ネットや「まじめな雑談会」などの場で、「個人の物語」を交換し合う機会が増えれば、何かが変わる可能性があります。師走の慌ただしい中、選挙カーを横目に眺めつつ、「日本の未来を決めるのは自分たち自身なのだ」と自覚するのが総選挙です。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「政権枠組み、12党争う」
- 第46回衆院選は4日に公示され、12政党から1504人が立候補を届け出た。小選挙区比例代表制が導入された1992年以来最多の政党数となる。原子力・エネルギー政策、経済再生、消費増税、環太平洋経済連携協定(TPP)などを争点に、各党の党首は全国各地で支持を訴えた。
- 野田首相は街頭演説で、「最後は自民党との戦いだ。改革を前に進めることができるか、しがらみだらけの古い政治に後戻りするのかが問われる戦いだ」と訴えた。また「2030年代に原発稼働ゼロを目指す。『脱原発』か『続原発』かは全く違う」と述べ、原発再稼働を積極的に検討するとする自民党を批判した。
- 自民党の安倍総裁は、「復興を進めるためにも強い経済を取り戻さなければいけない。私たちは次元の違うデフレ脱却策をやる。日銀と2%の物価上昇目標を取り決め、政策協定を結ぶ。あらゆる政策を集中していく」と訴えた。
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「立候補、最多の1504人」
- 民主党と自民党の2大政党体制に、第3極の日本未来の党や日本維新の会などが割って入るのか。第46回衆院選挙は、次期政権の枠組みが焦点となる。
- 3年前の衆院選の候補者総数は1374人。今回は、現行の小選挙区比例代表制での最初の選挙だった1996年の1503人を上回り、現憲法下で最多。
- 12日間の選挙戦では、主要12政党が原発・エネルギー政策、経済政策、憲法観などを争点に競う。投開票は16日。
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「政権枠組み、焦点に」
- 第46回衆院選が4日公示され、12日間の選挙戦に突入した。現行憲法下では23回目。候補者は過去最多の1504人。選挙の焦点は、民主党政権の継続か、自民党・公明党が政権を奪還するか。
- 主な争点となる「原発」と「消費増税」での12政党のポジションは、以下の通り。▽「脱原発・消費増税賛成」=民主、公明、▽「原発維持・消費増税賛成」=自民、国民、▽「脱原発・消費増税反対」=みんな、未来、日本、共産、社民、▽「原発維持・消費増税反対」=改革、▽「原発は中立、消費増税はやや賛成」=維新―。
- 日本未来の党や日本維新の会など第3極も独自の主張を展開しており、主要政策の違いは大きい。選挙結果次第では、選挙後の枠組みに影響を与え、重要施策が大幅に見直される可能性もありそうだ。
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「衆院選、最多1504人立候補」
- 第46会衆院選の立候補者は1504人で、現憲法下で最多となった。総定数480人に対する競争率は、3.13倍。小選挙区だけで見ると、300人枠に対して1294候補となり、競争率は4.31倍の激しさとなる。
- 民主党の野田首相は、政権継続のため比較第1党の確保を訴える。自民党の安倍総裁は、公明党と合わせた過半数獲得を目指し、政権復帰をうかがう。
- 一方、日本未来の党の嘉田代表や日本維新の会の石原代表らが独自政策をアピール。第3極が勢力を伸ばせば、選挙後の政権枠組みに影響を与える。
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「『脱原発』7党」
- 4日に公示された第46回衆院選の大争点は、東京電力福島第1原発事故を踏まえた原発・エネルギー政策。12党首のうち、7人が「脱原発」を掲げ、2人が容認姿勢を鮮明にした。
- 「脱原発」を訴えたのは、民主党、日本未来の党、共産党、みんなの党、社民党、新党大地、新党日本。ただし、力点の置き方には差がある。脱原発の本家を自負する党が競って聴衆に訴えかけたの対して、民主党の野田首相の脱原発の取り上げ方は、他の政策と横並びで、大飯原発の再稼働にも触れなかった。
- 一方、原発容認派は、自民党と日本維新の会。安倍総裁は、「大丈夫だと判断したものは再稼働していく」と明言。石原代表は、「原発をゼロにすれば、電気料金が上がって日本経済が大打撃を受ける」と主張した。
(TOKYO Web http://www.tokyo-np.co.jp/)
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