【リグミの解説】
トンネル崩落
本日の新聞1面トップは、読売、朝日、毎日、東京が「中央高速笹子トンネル天井崩落」の事故報道です。同トンネルが開通したのは、1977年。日本が経済成長を続けていた時代です。35年間持ちこたえていた天井が崩落したのは、象徴的なことです。
人工物は、完成した瞬間から傷み始めます。人が上手に使い、維持管理を怠らなければ長持ちしますが、それでも経年変化による劣化は避けられません。日本の道路は、地方に行っても総じてどこも整備され、良好な状態を維持しています。しかし、手をかけなければ、やがてひび割れ、穴ぼこだらけになっていくでしょう。
経済が成長していた時代は、作り続けることで国は豊かになりました。経済が停滞する時代になると、作ったものを維持することにも苦労するようになります。飛行機は離陸時に最大の出力を使いますが、巡航飛行の時も大きな出力を維持する必要があります。高みに達したらもうこれぐらいでいいだろう、と手を抜いたら、たちまち落下が始まります。
衆院選関係の記事
トンネル事故がなければ、1面トップとなっていた記事が4紙の2番記事として掲載されています。主要政党の公約と、有権者の評価(世論調査)に関する記事です。
読売: 「自民19% 民主、維新13%」
衆院選に向けた連続世論調査の第2回です(11月30日~12月2日)。比例投票先は、11月23~25日の調査に対して、自民党は6ポイント低下、民主党は2ポイント上昇、日本維新の会は1ポイント低下。日本未来の党は、5%。「日本未来の党に期待する」が23%に対して、「期待しない」が62%。
朝日: 「自民20%、民主15%、維新9%」
衆院選に向けた連続世論調査の第3回です(12月1日~2日)。比例投票先は、11月23~25日の調査に対して、自民党は3ポイント低下、民主党は2ポイント上昇、日本維新の会は変化なし。日本未来の党は、3%。「日本未来の党に期待する」が23%に対して、「期待しない」が70%。
毎日: 「全原発10年で廃炉」
日本未来の党の公約「未来への約束」の記事。10年以内に全原発の廃炉を決める工程表を盛り込んだ「卒原発カリキュラム」の骨子を発表。子ども手当を月額2.6万円(年間31万2千円)支給。
東京: 「衆院選4党中心」
12政党が乱立する中、日本未来の党は民主、自民に次いで多い前衆院議員を抱え、日本維新の会と合わせ、4党が衆院選の中心。未来の党は、他の3党に比べ、内政では公助を重視し、外交・安保ではハト派となるリベラル色が鮮明なのが特徴。
「維持」「破壊」「創造」のバランス
トンネルが掘られ、最初のひとりがそこを通り抜け、やがて多くの人々が往来を繰り返すようになると、貴重なインフラは当たり前の存在になります。誰がトンネルを作ることを思いついたのか、建築にどれだけの苦労があったか、人々は忘れてしまいます。そして、トンネルが崩落する日が来るとは思いもしません。
衆院選の争点の「原発・エネルギー」「社会保障」「外交・安保」「憲法」などはすべて、戦後に選択され構築されたものです。誰がどういう意図で作ったのか。それはどんな「便利」を社会にもたらしたのか。あるいはどんな「不都合」が堆積していったのか。
「維持」は、「創造」と同じぐらいエネルギーを必要とします。それを怠れば、今回のトンネル崩落事故のようなことが、日本中で発生するようになります。私たちは、現状を維持したいという気持ちや、目先の変化だけで満足しようとする安直さを捨て、何が真に「維持」するに値するものなのか、真剣に問い掛ける必要があります。そして何をあえて「破壊」しようとするのか。その先にはどのような「創造」があるのか。
戦後70年近く経った今、「維持」「破壊」「創造」のダイナミックなサイクルを50年、100年の時間軸で構想すべきタイミングに来ています。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「トンネル天井崩落4人死亡」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「トンネル天井板、崩落」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「トンネル崩落、死者複数」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「『病院から施設へ』進まず」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「トンネル崩落、死者4人超」