【リグミの解説】
主要政党の政権公約
本日の新聞1面トップは、読売新聞と朝日新聞が「主要政党の衆院選向け公約」の記事です。興味深いのは、読売が「民主党、自民党、日本維新の会」の3党の比較記事であるのに対して、朝日は「日本未来の党」を加えた4党を主要政党と位置付けている点です。朝日は、小見出しでは「民・自・未来・維新」と書き、日本未来の党を民主、自民に続く第3党扱いをしています。
朝日は、どちらかというと「リベラル色」が強い新聞ですので、「日本維新の会」が自民党に近い「保守色」を打ち出す中で、「リベラル」な政策が際立つ「日本未来の党」にスポットライトを当てていると思われます。対する読売は、どちらかというと「保守色」が強い新聞であり、また「原発推進」の論調を展開していることもあり、「脱原発」を政策の軸とする「日本未来の党」をあえてはずし、従来の「民・自・維新」の3極構造で政局を見ようとしているのかもしれません。
「保守」の特色、「リベラル」の特色
「保守」と「リベラル」の区分で政策論点を見ていくと、「保守」は「自由」「強さ」「自主独立」を打ち出す傾向があり、「リベラル」は「公平」「弱者救済」「連携」を重視する傾向があるように思います。
主要政策を比較すると、「保守色」の強い自民党と日本維新の会は、「外交・安全保障」「憲法」の政策で、「(外に対して)強い日本」の志向性が際立ちます。
一方、「リベラル色」の強い日本未来の会は、「消費税」「社会保障」分野で、「(内に対して)やさしい日本」を大切にしています。そして民主党は、両者の中間の「中道」路線に軸足を定めたようです。
原発をどうするか―保守の本音
そして原発の位置づけを決めるエネルギー政策です。3.11以前は、原発は争点にもなりませんでした。東京電力福島第1原発事故の後でも、「将来、原発比率は上げるべき」との立場を主張する専門家や官僚、政治家が、一定数いました。それが、今夏の「国民的議論」を経て、最も「保守色」の強い立場の人でも、表立って3.11以前の原発比率(20%)以上を目指すべきとは言わなくなりました。
しかし「本音」では、日本の「強さ」と「自主独立」のために原発は不可欠という考え方はまったく変化していないのではないでしょうか。保守の本音を大きな声で主張してきた石原慎太郎氏は、「脱原発はセンチメント。経済政策を考えず、原発は黒か白かという議論はない」(11月20日)と発言。あえて意訳すれば、「『脱原発』などというのは女々しい感情論だ。『原発はこわいからイヤだ』、と子供のように駄々をこねて、経済をないがしろにするわけにはいかないんだ」と言いたいのではないでしょうか。
「脱原発」と「原発維持」をつなぐもの
「脱原発」と「原発維持」のどちらが正しいのか。ここでは答えを出すことはできません。それは、最終的には国民が選択することです。ただ、その選択がどちらに向かうにしろ、大切なことが3つあります。
第1は、感情論を排することです。石原さんの発言をあえて意訳したのは、「脱原発派」と同じぐらい「原発維持派」も感情的な側面を持っていることを指摘したかったからです。感情的になると、建設的な「対話」が難しくなります。
第2が、情緒で原発を判断しないために、自分の「主義」を明確にすることです。「保守」「中道」「リベラル」といった主張や立場の違いが「主義」です。この「主義」は、今回争点になっている原発以外の政策(TPP、消費税、外交・安全保障、憲法など)の判断にも一貫して使用される自分の基本的な価値観になります。
そして第3が、「脱原発派」も「原発維持派」も避けて通れない最大の課題に焦点を当てることです。それが核廃棄物の最終処理問題です。この最も困難なテーマから逃げず、立場を超えた建設的な取り組みをすることは、政治の最も重要な仕事になると思います。
「対話」を始める
民主主義の成熟度を占う視点として、平等な選挙権、表現の自由や結党の自由、報道の正確さと客観性、そして公正な選挙制度などがあると思います。しかし、一番大事な視点は、異なる立場の人々をつなぐ建設的な「対話」の場があることではないでしょうか。
選挙は、「主義」や価値観の違いだけでなく、好みや感情が表立つ機会にもなります。それだけに、無意識的な嗜好性や感情論に振り回されず、各人が自分の内側にある深い「思い」に触れ、何が本当に大切なのかを問い掛ける必要があります。政治における「対話」の大切さ。その基本は、自分自身との「対話」にあります。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「民自、原発・金融で対決」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「競う4党、公約交錯」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「首相、増税理解求める」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「原発・交通も統合視野」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「脱石原、濃淡鮮明 ~選択の条件」