【リグミの解説】
専門家の話がわからない
ジャーナリストの池上彰さんは、東工大のリベラルアーツセンター教授です。この仕事を受けるに至った経緯を池上さんは、次のように語っています。
池上さんは、「教養」(リベラルアーツ)を身に着けることが、ひとつの答になると示唆します。「この世で戦う君に『知の世界地図』をあげよう」というサブタイトルに、意気が込められています。
「知の世界地図」
「地図」は、世界の在り方を、客観的に記します。地図の読み方を学べば、私たちは自分がどこにいて、どこに向かおうとしているのか、正しく理解できます。地図といえは、山や川やが道路、建物といった地理情報を物理的に記したものを思い出しますが、池上さんが示唆する「教養としての地図」は、目に見えない世の中の機能や構造を地理情報のように東西南北に正確に落し込んだものです。この地図、東工大の学生以外にも役立ちそうです。
本日の新聞の1面トップ記事は、読売と毎日と日経が、衆院選に向けた各政党の政権公約や新党結成動き、また各党の支持率を問う世論調査になっています。ついこの前まで、新聞の1面は、中国との尖閣諸島の衝突問題で埋め尽くされていたのに、今は選挙一色です。しかも、ほとんどの情報が、いわゆる政局がらみ。
マスコミが伝えないこと
リグミ・SNSでのユーザ間の「まじめな雑談」で、あるライブに行った方が「マスコミがやってるのは政局のニュースだけで、政策は全然出てこない」とミュージシャンが発言するのを聞いて得心した、と語っていました。「なるほど、政局の話ばっかりだからニュースに興味がわかないのかって、やっとわかった」。
新聞を読んだり、ネットで情報検索をすれば、世の中のことはある程度つかめます。しかし、世の中の全体観をつかみ、自分がどうしらたいいか、ちゃんと判断できるようになるかといえば、心元ないものがあります。それは、新聞もネットも、正しい知識を客観的に提示した「地図」になっていないからです。「教養としての地図」は、どうしたら手に入るのでしょうか。
昔の人は、たくさんの古典を読み、歴史を学び、宗教や哲学を探求することで、教養を身に着けました。今日でも、この路線はありです。でも、世の中がグローバルにつながり、超特急で変化している現代、よほどの知力と時間がない限り、「教養としての地図」は身につきません。
自分で探求する
池上さんは、大学生は高校までの「教えられる立場」を忘れ、「正しいこと」を自分で見つけて行かないといけない、と示唆します。「地図」は誰かが作り、与えてくれるものではありません。それは、自分の意志で見つけていくもの。「自分がどこにいるかわからない」と自覚することが、出発点になると思います。逆説的に言えば、地図がないから、世界はどうなっているのかを自分で探求する。その過程で、段々と世の中の様子が見えてきて、それが自分なりの「地図」の形になっていくのではないでしょうか。
こうしたことは、学生や専門家に限られた話ではありません。本日の東京新聞の1面トップ記事は、「母親ら『国動かしたい』」です。3.11以後、子どもたちを守る活動をするうちに、政治と関わるようになり、仲間とつながっていく母親たちの動きをレポートしています。ある母親は、「今まで世の中のメジャーにならない立ち位置に慣れていたんです」と語っています。原発事故で、「当事者」になり、主体的に動くようになりました。
教養としての「政治の地図」
教養はすぐの役立つノウハウと対極にあるものです。でも、いざ動こうとなったとき、とても役に立ちます。なぜなら、「教養という地図」があることで、たとえば、マスコミが伝える「政局」の奥にある世の中の大きな仕組みや歴史的経緯などが見えてくるからです。
池上さんの問題意識にある「専門家と一般人の分断」「理科系と文科系のギャップ」を埋める活動は、3.11以後の日本人にとって、本当に大切なことになってきています。そして今、もうひとつ必要なことがあります。それは、「政治家と有権者の隔たり」を埋めること。
大震災後、初めての総選挙が来月あります。政治家の言いなりになるのでなく、有権者が「政治の地図」という教養を手に入れ、心から良いと思える政治家と政党を主体的に選択する。政局の「お祭り騒ぎ」に騙されず、本当の「政(まつりごと)」にコミットする。そんな状況作りませんか。
(文責:梅本龍夫)
讀賣新聞
【記事要約】 「維新『TPP交渉参加』」
(YOMIURI ONLINE http://www.yomiuri.co.jp/)
朝日新聞
【記事要約】 「中間貯蔵、調査受け入れ」
(朝日新聞デジタル http://www.asahi.com/)
毎日新聞
【記事要約】 「衆院選、12党の争いに」
(毎日jp http://mainichi.jp/)
日経新聞
【記事要約】 「投票先、自民23%、維新15%」
(日経Web刊 http://www.nikkei.com/)
東京新聞
【記事要約】 「母親ら『国動かしたい』」